耕作放棄地から「別府産エミュー」を育てる 食肉・オイル・ジビエ処理をつなぐ地域循環型ビジネス
雑草を食べ、静かに育つ大型鳥
エミューはオーストラリア原産で、ダチョウに次いで大きい飛べない鳥です。雑草を食べ、鳴き声が小さく、ふんの臭いも比較的少ないことから、周辺環境に配慮しながら放牧しやすい特徴があります。
代表取締役の永谷氏が事業を始めたきっかけは、幼少期を過ごした別府市東山地区の変化でした。かつて棚田が広がっていた地域では、農業の担い手不足によって荒廃が進み、害獣の生息域や災害リスクの拡大が課題となっています。永谷氏は自ら土地の伐採・整備を進め、その維持管理と収益化を両立する方法としてエミューに着目しました。

1頭から食肉、オイル、体験収入を生み出す
エミュージャパンは、耕作放棄地を活用してエミューを飼育し、食肉、オイル、卵、羽、皮などを可能な限り商品化し、1頭から複数の収益を生み出すことを目指しています。
肉は低脂質・高タンパクの希少食材として、飲食店や通販、ペットフード向けに販売します。すでに別府市内の飲食店で提供実績があります。皮下脂肪から採取するエミューオイルは、化粧品原料やスキンケア商品の開発につなげる計画です。海外では広く利用されている一方、国内での研究蓄積はまだ少なく、今後は大学や研究機関と連携して安全性や機能性を検証していく方針です。
さらに、牧場見学、餌やり体験、羽や卵を使ったワークショップなど、観光地・別府との親和性を生かした体験事業も構想しています。食肉輸入商社で約9年間、調達・輸入・卸売に携わった永谷氏の経験は、商品開発と販路開拓の強みとなります。

300頭体制と処理施設の整備へ
現在の飼育数は10頭で、今後5年以内に300頭規模へ拡大する計画です。
成長に向けた最大の課題は、加工工程です。現在は外部に依存する処理・加工を将来的に内製化し、品質管理、商品開発、利益率を高めたい考えです。野生鳥獣も受け入れられるジビエ処理施設を整備できれば、エミューの計画出荷によって施設稼働を安定させながら、地域の害獣対策にも貢献できます。国際色豊かな別府の立地を生かし、将来的にはハラル対応も検討します。
当社は事業拡大に向けて8,000万円の資金調達を計画しています。使途は、牧場・飼育設備とエミューの導入に1,000万円、加工設備に6,000万円、運転資金に1,000万円です。
まずは飼育と繁殖を安定させ、食肉とオイルの販売実績を積み上げ、耕作放棄地の再生という社会性を継続的に利益を生む地域産業へ転換していき、「別府産エミュー」というブランドづくりへの挑戦をしていきます。
コメンテーターより

弁護士法人内田・鮫島法律事務所
弁護士 多良 翔理
エミュージャパン社は、エミューの飼育・商品開発を通じて、耕作放棄地や害獣被害といった地域課題を、食・観光・ウェルネスの新たな価値へ転換しようとする点に大きな意義があります。エミュー肉や関連商品の展開に加え、ハラル対応を視野に入れた地域ブランド化の構想は、別府発の新産業として高い可能性を感じます。今後は、周辺住民への安全確保、品質管理、ブランド保護、認証・表示に関する法的整備を進めながら、持続可能な地域創生モデルとして成長されることを期待しております。
※「The INDEPENDENTS」2026年8月号 - P.7 掲載
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