■ 鹿児島大学発ベンチャーの取り組み

 日本の水産市場は約15兆円規模とされ、その中でも地域で水揚げされる鮮魚は重要な位置を占めています。国内には約900の漁協が存在し、各地域の水産流通の起点となっています。鹿児島県は全国でも上位の水揚げ量を有し、ブリ、カンパチ、マダイ、サバ、アジ、タチウオなど多様な魚種が取り扱われています。魚種の多さは付加価値の源泉である一方、現場オペレーションの複雑化を招いています。漁協では依然として紙伝票やFAXを前提とした運用が残り、人手不足と業務負荷の増大が構造的な課題となっています。

 こうした課題に対し、鹿児島大学水産学部准教授の江幡恵吾氏が設立した株式会社ZIFISHは、現場業務の効率化から着手しています。エンジニアやデータサイエンティスト、事業開発人材が参画し、現場実装を前提とした体制を構築しています。
ZIFISHが定義する解決策 水産物流通OS(情報基盤インフラ)

■ 漁獲計量の自動化による業務効率化と現場改善

 当社が開発した「スマート計量システム」は、魚の計量と同時に重量と魚種の画像を自動取得し、デジタル化する仕組みです。鹿児島県漁協高山支所で実用化され、水揚げ伝票作成時間の短縮、作業人数の削減など、現場の省力化に寄与しています。加えて、業務負担の軽減により職員の休暇取得が可能になるなど、労働環境の改善にもつながっています。また、静岡県内の漁協においても試験導入が完了しており、地域をまたいだ展開に向けた検証が進められています。
ZIFISHの事業展開 スマート軽量 水産物情報PF グローバル展開

■ 水産データの利活用による消費領域への展開

 取得された情報は、水揚げ量、魚種、サイズ、価格といった形で蓄積されます。これにより、出漁判断や仕入判断の精度向上が可能となります。複数市場の動向を横断的に把握することで需給バランスの最適化が進み、価格形成の安定や収益性の改善につながります。加えて、サイズ情報の蓄積は資源管理にも応用可能であり、中長期的な持続性の基盤となります。また産地や魚種に関する情報を可視化することで、流通の改善に加え、消費側への情報提供も視野に入れています。

■ 全国の漁協から海外への拡張へ

 まずは全国約900の漁協における業務・流通機能を提供し同様の課題を抱える地方の漁協を中心に導入を進め、その後横展開を図る方針です。海外においては、東南アジアの研究機関と連携し、水揚げデータが十分に整備されていない地域における資源管理への応用も検討されています。

 当社は「鹿児島ICTel大賞最優秀賞」「鹿児島県ビジネスプランコンテスト なんぎんキャピタル賞」「九州大学発ベンチャービジネスプランコンテスト 九州経済産業局長賞・台日商務交流協進会理事長賞」「NIKKEIブルーオーシャン大賞生物多様性部門賞」「「NIKKEI THE PITCH GROWTH SMBCベンチャーキャピタル賞」など受賞しています。2026年3月にはベンチャーキャピタルから資金調達を行い、鹿児島で構築したモデルの全国展開を進めています。

 


 
コメンテーターより
弁護士法人内田・鮫島法律事務所 代表弁護士 鮫島 正洋 氏
 

 水産のDX企業で、水産業の現場を変革するポテンシャルを持つ。課題はどのようにして普及を図るか、という点である。ぜひ日本のみならず世界普及を実現して、日本の水産業が名実ともに世界一であることを証明して欲しい。

弁護士法人内田・鮫島法律事務所 代表弁護士 鮫島 正洋 氏

 
※「The INDEPENDENTS」2026年6月号 - P.11 掲載
月刊誌バックナンバーはこちらからご確認ください。