株式会社Alteonus 代表取締役 平間 雅博 氏
 × 弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 鮫島 正洋 氏

鹿児島大学発・口腔ケアフードテックベンチャー

平間:私たちAlteonus(アルテオナス)は、鹿児島大学発ベンチャーとして、口腔ケア分野における長年の未解決課題に向き合うフードテック企業です。歯ブラシによる口腔ケアは500年以上続く方法ですが、毛先の物理的限界もあり、ミュータンス菌やプラークを完全に制御することは困難です。特に、乳幼児、障がいのある方、高齢者など、自力での歯磨きが難しい人々が構造的に取り残されてきたという現実があります。

鮫島:確かに、「正しい歯磨き」を前提とした仕組みそのものが、全員に適用できていない。

平間:はい。そこで私たちは、「歯磨きを頑張らせる社会」ではなく、日常生活の中で自然に口腔環境が整う仕組みを作る必要があると考えました。その発想から生まれたのが、食べるだけで口腔ケアが完結する低糖質スイーツ「ハミガキスイーツ®」です。

 

フードテックとしての技術思想

鮫島:口腔ケア製品というと、どうしても「殺菌」「除菌」という言葉が先に立ちます。貴社の技術は、そこを大きく転換していますね。

平間:私たちが重視しているのは、口腔内常在菌のバランスを保ちながら、プラーク(バイオフィルム)の形成だけを抑制するという考え方です。ミュータンス菌を含む常在菌は、外部から侵入する有害菌に対する防御機能も担っています。無差別な殺菌は、かえって口腔環境を悪化させる可能性があります。

鮫島:「撲滅」ではなく「制御」という発想ですね。

平間:その通りです。私たちは、細菌が代謝できない希少糖などを用いた独自技術により、バイオフィルムの形成そのものを抑えるアプローチを取りました。この技術は特許化されており、極めて低い濃度でも歯垢抑制効果が確認されています。これは食品技術でありながら、口腔マイクロバイオームを前提に設計された、フードテックならではのアプローチだと考えています。

 

ハミガキスイーツ®の社会実装性

鮫島:ここで改めて伺いますが、なぜ「スイーツ」だったのでしょうか。

平間:理由は明確で、誰もが抵抗なく続けられる行為が「食べること」だからです。ハミガキスイーツ®は、細菌も人間もほとんど吸収できない特殊な糖をベースにしています。甘いのにプラークや酸を作らず、血糖値スパイクも起こしにくい設計です。

鮫島:機能性と嗜好性が、きちんと両立していますね。

平間:フードテックで最も重要なのは、「正しいか」よりも「続くか」です。口腔ケアは行動変容がすべてですが、楽しみながら続けられなければ意味がありません。ハミガキスイーツ®は、歯磨きという行為そのものを再設計するための“食のインターフェース”だと考えています。

鮫島:実証結果もかなり印象的です。

平間:医師・看護師を含む250名以上のモニター調査では、約8割の方が「歯がツルツルした」「口臭が減った」といった変化を実感しました。また、別の調査では、通常20〜50%とされる薬の飲み忘れ率に対し、ハミガキスイーツ®の食べ忘れは2.8%にとどまりました。

鮫島:まさに「行動が変わる」プロダクトですね。

平間:はい。歯磨きを嫌がる子どもや、ガム・錠剤が苦手な方でも無理なく取り入れられる点が、社会実装において非常に大きいと感じています。

 

既存の歯磨き産業との共創と知財戦略

鮫島:一方で、既存の歯科・口腔ケア産業との関係性も重要になります。

平間:私自身、歯科医として歯ブラシの価値は理解しています。ですから、「歯ブラシ不要」と既存の事業会社と対立するつもりはありません。まずは既存習慣を補完する形で普及させ、将来的には大手メーカーと連携し、「美味しくて飲み込める歯磨き粉」のような進化形も視野に入れています。

鮫島:その際に重要なのが知財ですね。

平間:はい。基本技術はPCT出願していますが、それだけでは不十分です。製造ノウハウは秘匿化しつつ、用途特許を重ねることで、応用展開を支える知財の層を厚くする。知財は防御ではなく、フードテックとしての展開力を支える基盤だと位置づけています。

医療・福祉を起点に、社会インフラへ

鮫島:事業展開はどこから始めていますか。

平間:まずは高齢者施設、医療機関、保育・福祉施設など、B2B領域へのOEM供給を起点にしています。将来的には、薬剤を包摂する素材としての応用や、災害時・宇宙空間など水が使えない環境でのメディカルフードとしての展開も視野に入れています。ハミガキスイーツ®はその第一歩であり、口腔ケアの常識を更新するフードテックの入口だと考えています。

鮫島:非常に明確なビジョンですね。本日はありがとうございました。

 

―「THE INDEPENDENTS」2026年2月号 P.12より

※冊子掲載時点での情報です
 
 

 
株式会社Alteonus 代表取締役 平間 雅博 氏   <話し手>
株式会社Alteonus 代表取締役 平間 雅博 氏
(→ イベント登壇情報
 
生年月日:1966年3月5日
出身高校:長崎県立対馬高等学校

2000年 岡山大学大学院博士課程修了
2012年 Case Western Reserve University、PediatricDentistry Residency Program修了
 
株式会社Alteonus
設 立:2025年10月10日
所在地:鹿児島県鹿児島市易居町1-2 鹿児島市役所みなみ大通り別館6階 1号室
資本金:1,000千円
事業内容:歯磨きスイーツの開発・販売


弁護士法人内田・鮫島法律事務所 代表弁護士 鮫島 正洋 氏    <聞き手>
弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 鮫島 正洋 氏
1963年1月8日生。神奈川県立横浜翠嵐高校卒業。
1985年3月東京工業大学金属工学科卒業。
1985年4月藤倉電線(株)(現・フジクラ)入社〜電線材料の開発等に従事。
1991年11月弁理士試験合格。1992年3月日本アイ・ビー・エム(株)〜知的財産マネジメントに従事。
1996年11月司法試験合格。1999年4月弁護士登録(51期)。
2004年7月内田・鮫島法律事務所開設〜現在に至る。