■「銭湯文化の再生」から始まる新たな挑戦

 当社は、日本の銭湯文化を、現代のライフスタイルに合わせて再生・創造する事業を展開しています。2025年2月に、廃業寸前だった「しずの湯(旧亀の湯)」をSENTOモデル1号店として神奈川県相模原市に開業し、同年8月には、東京・浅草の「曙湯」を事業承継し、銭湯の形態を維持したまま黒字化を目指すフラッグシップ店舗として運営を開始しました。
銭湯をアップデートした温浴施設「SENTO」

■ 50年間で銭湯が9割減少した背景と市場の空白

 日本の銭湯は1968年に17,999軒あったものが、2024年には1,653軒まで減少しました。経営者の高齢化や後継者不足、施設の老朽化、そして規制産業特有の参入障壁が大きな要因です。黒字経営であっても廃業を選ばざるを得ない「黒字倒産」が多発し、都市部や住宅地では「毎日通える高品質な温浴施設」が不足しています。

■ 価格・立地・運営を刷新する「SENTOモデル」

 「SENTOモデル」は「低価格・住居近接・シンプル」という日常利用型コンセプトを軸に、業態を「その他の公衆浴場」に変更することで価格や施設設計の自由度を確保しています。サウナを中心に据えることで滞在時間と商圏を拡大し、受付の無人化や鍵管理の撤廃、マニュアル化の徹底により省人化を実現しました。その結果、従来は月5万円程度だった利益を最大90万円まで引き上げることが可能になりました。

■ 郊外と観光地の両立で証明した高収益性

 「しずの湯」では、初期投資5,000万円で年間約1,000万円の利益を生み出す施設へと再生できました。アクセスが不利な郊外立地ながら利回りは約20%に達しています。一方、観光地型の「曙湯」は、改装前でも毎月50万円程度の黒字化が見込め、改装後にはSENTOブランドの象徴的存在になると考えています。さらに、スタッフ1名での店舗運営を可能にするオペレーション設計によって、省人化と収益性の両立を実現しています。

しずの湯と曙湯

■ 直営10店舗とFC400店舗で全国展開へ

 今後は、まず直営店舗を10店舗まで拡大し、モデルの精緻化とブランド力の向上を図ります。その後、2026年以降にフランチャイズ展開を本格化させ、10年以内に全国400店舗の開業を目指します。加えて、都心の中〜高所得者層が多いエリアや銭湯の少ない地域において、マンションやビジネスホテルの低層階を活用する「ビルテナントモデル」も展開します。このモデルは高単価設定と早期投資回収が可能で、デベロッパーやホテルオーナーとの提携によって新たな市場開拓が期待できます。国内の温浴市場は約2兆円規模ですが、私どもはSENTOモデルによって約5,000億円規模の新市場を創造し、既存の銭湯利用者に加え、家庭用風呂利用層やスーパー銭湯・高級スパ利用層も取り込みながら、「毎日お風呂に通う世界」の実現を目指していきます。


 
コメンテーターより
弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 多良 翔理 氏
 

 株式会社yue様は、廃業の危機にある銭湯を事業承継・リノベーションで現代のニーズにフィットした形へアップデートし、「毎日通える温浴施設へ再生する」SENTOモデルを推進されています。住宅近接の立地設計と分かりやすい価格、一連の省人化オペレーションで需要の取り込みと収益を両立し、データ蓄積により再現性を高めている点を高く評価します。ユーザー毎の嗜好や利用動機に寄り添うことで、日常の習慣として根付き、地域コミュニティの交流や活力を生み出す拠点となることが期待されます。

弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 多良 翔理 氏

 
※「The INDEPENDENTS」2025年9月号 - P.15 掲載
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