監査法人アヴァンティア 企業価値向上支援室 パートナー CVS室長 梶原 大輔 氏  

監査法人アヴァンティア (アヴァンティア - 日本を支えるベンチャー監査法人)
企業価値向上支援室 パートナー CVS室長
梶原 大輔 氏 Kajiwara Daisuke


中央大学商学部卒
パートナー企業価値向上支援室長
大阪事務所拠点長地方創生統括責任者
日本公認会計士協会中小監査事務所基盤強化専門委員会
人材採用育成WG委員
一般財団法人会計教育研修機構東京実務補習所運営委員
 

インデペンデンツクラブ 代表理事 松本 直人 氏

 

 

インデペンデンツクラブ
代表理事
松本 直人 氏 Matsumoto Naoto

1980年3月23日生
大阪府立三国丘高校出身。神戸大学経済学部卒業
2002年フューチャーベンチャーキャピタル㈱入社
2016年1月同社代表取締役社長に就任
2022年7月㈱ABAKAM 設立、代表取締役就任(現任)
2023年3月㈱Kips 取締役就任
2024年9月インデペンデンツクラブ代表理事就任


企業価値向上を伴走する「ベンチャー監査法人」

■ スタートアップからI PO後まで、企業価値向上を支援する

松本:まずはインデペンデンツクラブへの入会経緯からお聞かせください。

梶原:当法人は2008年5月に設立いたしました。以来「成長意欲ある企業の良き伴走者になる」を掲げ、上場企業監査を中心に歩んできました。しかし近年、IPO予備軍が監査人を確保できない“監査法人難民”問題が深刻化し、四大法人だけではカバーしきれない現状が顕在化しました。そこで私たちは4年前にIPO推進室を新設し、全国規模で案件を支援するためインデペンデンツクラブに参画したのです。

松本:今年2月には「企業価値向上支援室(Corporate Value-up Support:CVS)」へ改称しました。狙いは何でしょう。

梶原:スタートアップ支援においては、監査法人が会計の枠を超え、ガバナンス・人材・テクノロジーまで伴走する必要があります。そしてIPOはゴールではありません。上場後も持続的に企業価値を高め、M&Aや海外展開を視野に入れる企業が増えています。そこで「スタートアップのIPO支援と、その後のバリューアップも包括支援するユニット」としてCVSを位置付けました。

CVS事業内容アヴァンティアのスタートアップ支援

■ 地方拠点展開とIPO支援

松本:地方での採用を強化しています。

梶原:会計士は都市部志向と思われがちですが、実際は「地元で専門性を生かしたい」ニーズが根強い。そこで私は「地方の企業と会計士に新しい選択肢を」を掲げ、大阪・福岡・札幌に次々と拠点を開設し、近いうちに名古屋事務所の開設も計画しています。副業可・リモート可という働き方の柔軟性も後押しし、ここ3年で地方出身者の比率は上昇しています。

松本:取引所の潮流も踏まえた上で地方IPOのニーズが高まりそうですね。

梶原:東京証券取引所グロース市場の適時開示・純資産要件が厳しくなり、地方取引所やプロマーケットが現実的な選択肢になりつつあります。私たちは札幌証券取引所アンビシャス、名古屋セントレックス、福岡Q-Boardなど各市場の審査官とのコミュニケーションを強化し、ローカルルールに精通したチームを編成しました。地方上場後に東証へ鞍替えする「ツーステップIPO」も支援可能です。

 

■ 組織をむやみに巨大化させず“適正規模”に抑える

松本:副業解禁も採用戦略において大きな武器ですが、利益相反のリスクも伴います。

梶原:原則として監査先との取引や役員就任を禁止し、半年に一度、独立性チェックリストを全員提出します。また組織をむやみに巨大化させず“適正規模”に抑えることでガバナンスを効かせています。自由と規律を両輪に回すのが私たちのカルチャーです。

松本:クライアントと同じ船に乗る”というメタファーを大切にしています。

梶原:設立してから順調に組織として成長してきましたが、大きくなりすぎると規模メリットより文化の希薄化リスクが大きくなるため、直近では分社化を実現し同じマインドを持った監査法人が新たに誕生しています。「どの地方にもアヴァンティアの卒業生がいて、地域経済を引っ張る存在になる」こと。監査法人は人財育成機関でもあると考えています。

interviewed by kips 2025.6.25


※「THE INDEPENDENTS」2025年8月号 P.15より
※ 冊子掲載時点での情報です