<起業家インタビュー>

■ 東大法学部在学中に起業した、YouTube事業がプチヒット

 大学時代に所属していた東大ゴルフ部の監督である井上透プロから「YouTubeを始めたい」と相談を受けたのがきっかけでした。コロナ禍でスポーツ選手の露出機会が減少する中、「新しいことに挑戦したい」という思いから、動画の研究を始め、自ら撮影・編集・運用を手がけました。、プロジェクトが軌道に乗ったことが自信につながり、「株式会社ZAK」として創業しました。

 SNS運用に特化したノウハウ集積とチーム組成で、YouTubeだけで総再生数3億回以上を実現しました。これを機に、もっと大きなチャレンジを起業家として行いたいという思いから、今はAIの事業を行なっています。

■ 周囲が就職を選ぶ中で起業家を志す

 東大法学部にいると、官僚や大企業を目指すのが一般的です。私も弁護士を志していた時期がありましたが、時間のかかるプロセスに違和感を覚え、「もっとスピード感を持って社会に影響を与えたい」と思うようになりました。

■ 〜3代目の葛藤〜実家の建設会社を継がないという選択

 祖父の代から続く建設会社で、父が二代目を継いでいます。建設業は社会的にも重要で誇りある仕事ですが、「自分は継がず、別の形で社会課題に向き合いたい」と考えるようになりました。とくに、技術や知識が属人的で継承されない構造的課題は深刻であり、それを解決する手段として「AI」という選択肢が浮かびました。

■ 2025年に社名を「TAKARA AI株式会社」へ変更

 創業当初は、SNSやYouTubeを活用したマーケティング支援を展開し、100社以上の支援を実施しました。そこで見えてきたのは、企業に根付く“知の断絶”でした。属人化されたノウハウが共有されず、人が辞めると技術が失われる――この構造は、まさに私が建設業で見てきた問題と重なります。これをAIで解決できると確信し、事業ドメインを「知識資産の可視化・継承」へと移行を決断しました。 “日本に眠る宝=暗黙知”をAIで可視化・構造化し、次世代へつなぐことをミッションです。

■ 2024年東証スタンダード上場のSDSホールディングスと業務提携

 SDS社のエネルギー事業と当社のAI技術を活用し、再生可能エネルギーの最大活用やエネルギーインフラの高度化を図ることで、企業の持続可能な成長を支援していきます。SDS社のM&Aに伴う「引き継ぎ業務」で重要となる暗黙知の抽出・AI活用や、地方銀行ネットワークを活かした、融資と連携してAI・ロボットの導入を促進する仕組みづくりを行います。

■ 主力はAI戦略立案コンサルティング事業

 私たちの「AI経営診断ツール」は、企業名と財務指標を入力するだけで組織課題や改善策を提示します。「継承AI」は、ベテラン社員の言語・行動・映像データをAIで解析し、次世代への教育や引き継ぎを支援する “技術継承インフラ”を構築しています。
自律分散型AI経済社会の実証実験

■ AI事業の開発メンバーについて      

 創業パートナーは九州大学大学院首席で工学博士学位を獲得していて、AI研究歴20年以上のベテランエンジニアです。現在も大手製造業に籍を置きつつ、TAKARA AIの技術戦略をリードしています。組織面では、要件定義からプロンプト設計、PoC、実装、運用まで一貫対応できる専門チームを内製化しており、生成AI、深層学習、感性工学を取り入れたソリューションをスピード感を持って届けています。

■      AIエージェントロボットの開発に取り組んでいます

 人の肩に乗せて、環境を感知し膨大なデータベースから自律的に行動し、人と共生する現場密着型のAIデバイスの開発を進行中です。プロダクト(躯体)はロボットメーカから提供を受け、当社はAIエージェント機能をSaas型で提供していく計画です。強みである「社会に根差したAIの実装力」を活かし「膨大な暗黙知データベース」を構築していきます。必要資金5億円の調達を計画中です。

TAKARA AI イメージ図1   TAKARA AI イメージ図2

■      手塚プロダクションとのコラボレーション

 「鉄腕アトム」のIPを持つ手塚プロダクションとのコラボレーションを始めました。AIを“目に見える存在”として捉えてもらうため、アトムの精神を受け継ぐオリジナルキャラクターによるブランディング戦略を進めます。また、誰でも簡単に自分専用のAIを作れるToC向けプロダクトも開発中で、既に特許も申請済みです。日本発の「親しめるAIパートナー」として、一般ユーザーとの接点も広げていく構想です。

■ 今後の展望

 私たちは2028年の上場を見据えつつ、日本の技術継承課題をAIで根本から解決する「社会インフラ企業」としての地位を確立したいと考えています。日本には、目に見えない“知恵”という宝が現場にまだまだ眠っています。それをAIで掘り起こし、形式知化し、輸出可能な知的資産に変える。そして世界に再び誇れる日本を取り戻すというビジョンを追求していきます。

interviewed by kips 2025.7.10




【TAKARA AI 株式会社】
設 立:2020年5月12日
所在地:東京都港区南青山3-3-26 Sta-bld.2F
資本金:90,000千円
事業内容:AI戦略コンサルティング、AIソリューションおよびアプリケーション開発、マーケティング支援事業

TAKARA AI 株式会社 代表取締役CEO 金澤 将一 氏

 

【代表者略歴】

TAKARA AI 株式会社
代表取締役CEO 
金澤 将一 氏 Kanazawa Shoichi

 
生年月日1997年12月30日
出身高校兵庫県私立六甲高校
 
兵庫県宝塚市出身。
東大法学部司法コース卒業。
東大在学時代はゴルフ部に専念。
東大在学中にTAKARA AIの前進となる株式会社ZAKを創業。代表取締役社長に就任。
趣味はグルメ、スカッシュ、ゴルフ、読書。
好きな言葉は「正しきものは強くあれ」

※「THE INDEPENDENTS」2025年8月号 - P.2-3より