<イベントレポート>
2025年7月8日 東京インデペンデンツ
@ Tokyo Innovation Base(TiB)
+ Zoom ウェビナー配信
■ イベント詳細 https://www.independents.jp/event/766
<特別セッション>2025年7月8日、「東京インデペンデンツ」にて開催された特別セッション「地方スタートアップのこれから」では、パネリストにPE&HR株式会社 代表取締役 山本亮二郎氏と名古屋証券取引所 山田純史氏を迎え、地方スタートアップを取り巻く資本市場の構造変化と、地域金融・支援ファンドの役割などが議論されました。 |
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(パネリスト) PE&HR株式会社 代表取締役 山本 亮二郎 氏 |
株式会社名古屋証券取引所 山田 純史 氏 |
(モデレーター) インデペンデンツクラブ 副代表理事 國本 行彦 氏 |
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■ 上場基準強化が促す地方市場選好の潮流
2025年に発表された東京証券取引所グロース市場の上場維持基準が時価総額100億円以上に設定されたことは、成長初期のスタートアップにとって極めて高いハードルとなりました。この構造的変化により、地方市場への注目が高まっています。
■ 名証ネクスト市場:スモールIPOからの成長戦略
名古屋証券取引所(名証)のネクスト市場は、単なる“地方市場”という位置づけを超え、成長初期企業にとっての戦略的な第一上場先として注目が集まっています。ネクスト市場は全国対応であり、形式基準も緩やかで、初期成長フェーズの企業にとって現実的かつ戦略的な選択肢となります。
名証へ単独上場した企業の株価は、公開価格に対し平均1.9倍に上昇しており、企業価値の確実な向上が見込める市場です。
さらに、名証は東証グロース市場へのステップアップの場としても活用されています。例えば、2022年4月に時価総額約25億円でネクスト市場に上場したASNOVAは、名証内で時価総額90億円を突破後、東証グロース市場への重複上場を果たしました。小規模なスタートであっても、まずはIPOにより資金調達と認知度向上を図り、個人投資家向けのIR活動を通じて認知を深め、その後市場の段階的な移行を目指す。こうした成長モデルが着実に実践されています。
■ PE&HRの地方創生ファンドと支援ネットワーク
PE&HR株式会社は、「無名の若者の創業期に投資し、成長を支援する」という理念のもと、地方創生にも直結するファンド設計を行っています。
2016年には埼玉県東松山市と連携し、都道府県や政令指定都市以外の単独の基礎自治体として初となるVCファンド「東松山起業家サポートファンド」を設立。企業誘致に頼るのではなく、自ら産業を創出するという自治体の決意が反映された事例です。
2022年には埼玉りそな銀行と組み、埼玉県全域対象の「埼玉りそな創業応援ファンド」を設立。さらに、2025年3月には山口県にて西京銀行と地元企業9社と共に「西京イノベーションファンド」も始動しました。
これらのファンドは地域外の企業でも、地域に貢献する事業であれば対象とする柔軟性を有しており、地域資本による企業集積の仕組みづくりを志向しています。
■ 資本の地産地消と地方エコシステムの構築
山本氏は、スタートアップの資金調達においてクラウドファンディングの有効性を指摘し、個人が主役となる支援構造の重要性を強調しました。また、地域金融機関との連携によって、資金面に加え信頼やネットワークといった無形資産も同時に提供される点が、地方型ファンドの強みであるということです。
IPO環境が大きく変わる中、地方取引所や志ある投資家との連携による『新たな資本形成の道筋』が注目されています。名証ネクスト市場の全国対応型モデルと、PE&HRのように長期伴走する地域支援型ファンドが融合することで、東京一極集中から多極分散型のスタートアップ支援エコシステムへの転換が進みつつあります。
※「THE INDEPENDENTS」2025年8月号 P.6-7 より
※ イベント開催時点での情報です