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鮫島正洋の知財インタビュー

捨てられるもみ殻・酒粕を高純度素材に 「地域でつくり、世界へ売る」ライセンスビジネスを支える知財戦略

ジカンテクノ株式会社
木下 貴博 代表取締役

ジカンテクノ株式会社 代表取締役 木下 貴博 氏
 × 弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 鮫島 正洋 氏

 

廃棄物を「世界品質の素材」に変える技術

鮫島:貴社は農業廃棄物や食品残渣から工業用のシリカやカーボンを製造されています。まず、事業の特徴を教えてください。

木下:私たちは、もみ殻やサトウキビの搾りかす(バガス)からシリカを、酒粕やコーヒー粕、ビール粕、麦殻などからカーボンを製造しています。従来、もみ殻シリカは一度燃焼させ、強アルカリで溶解する工程が必要でした。この方法では回収率は約20%にとどまり、コストも鉱物由来シリカの数倍になります。

私たちは、独自の前処理技術によって強アルカリをほとんど使わず、高純度シリカを直接製造できる製法を確立しました。現在は99.8%近い純度まで実現しており、タイヤや半導体用途も視野に入っています。

鮫島:単なるリサイクルではなく、「廃棄物を世界品質の工業素材へアップサイクルする技術」という点が大きな特徴ですね。

 

地域を素材生産拠点に変えるビジネスモデル

鮫島:一般的には原料を工場へ集めますが、御社は逆の発想ですね。

木下:はい。私たちは廃棄物を運びません。もみ殻や酒粕が発生する場所へ装置を設置し、その場で素材化します。輸送コストやCO₂排出を削減できるだけでなく、地域に新しい産業を生み出せます。鳥取県をはじめ農業地域では、これまで処分費用だったものが新たな収益源になる可能性があります。

鮫島:地域の廃棄物処理問題を解決しながら、高付加価値素材まで生産できる。まさに地方創生型のビジネスモデルですね。

 

素材メーカーではなく「ライセンス会社」を目指す

鮫島:ジカンテクノは素材メーカーなのでしょうか。

木下:実はそこが違います。私たちが目指しているのは、自社工場を全国に建設する会社ではありません。

地域の農業法人や食品メーカー、酒蔵などへ装置を提供し、製造ノウハウをライセンスするモデルです。製造された素材は商社などを通じてタイヤメーカーや化学メーカーへ供給されます。つまり、①装置販売 ②特許・ノウハウライセンス ③技術指導 ④素材販売、を組み合わせた収益モデルになります。

鮫島:設備投資を最小限に抑えながら事業を全国・海外へ展開できる、スケーラブルなモデルですね。

 

特許は入口、本当の競争力はブラックボックス

鮫島:この技術は知財としてどのように守られているのでしょうか。

木下:製造方法や装置について特許を取得していますが、それだけではありません。本当に重要なのは、高純度を実現する条件や製造ノウハウです。装置を導入しただけで同じ品質が出せるわけではありません。そこはブラックボックスとして管理し、ライセンス先にも必要な範囲だけ提供しています。

鮫島:プロセス技術は公開し過ぎると模倣される危険があります。特許で守る部分と営業秘密で守る部分を明確に分けることが重要ですね。

 

社内弁理士が知財戦略を担う

鮫島:御社では開発責任者が弁理士でもあるそうですね。

木下:はい、研究開発と知財を別部署にせず、一体で進めています。新しい技術が生まれた段階から特許性や海外展開まで考えられるため、スピーディーに知財戦略を組み立てられます。現在は特許11件を取得し、31件を出願中です。米国やドイツでも権利化を進めています。

鮫島:研究者と弁理士が同じ視点で開発できる会社は多くありません。知財を経営資源として活用している好例ですね。

 

タイヤから半導体へ、そして世界市場へ

鮫島:今後の展開を教えてください。

木下:現在は大手商社を通じてタイヤメーカー向け供給体制を構築しています。さらに半導体封止材向けシリカの高純度化を産業技術総合研究所と共同で進めています。半導体用シリカは現在ほぼ輸入品に依存していますが、国産化できればサプライチェーンの強化にもつながります。海外の大手メーカーからも引き合いがあり、日本で実績を積みながら海外ライセンス展開も進めていきたいと考えています。

 

知財が地方発ディープテックを世界へ導く

鮫島:ジカンテクノの強みは、単なるリサイクル技術ではありません。

廃棄物を世界品質の素材へ変え、それを地域分散型のライセンスビジネスとして展開できる点にあります。

その根底には、特許だけでなくノウハウや契約まで含めた知財戦略があります。

今後、地方発ディープテック企業が世界へ挑戦していく上で、大変参考になるモデルだと感じました。

本日はありがとうございました。

 

―「THE INDEPENDENTS」2026年8月号 P.10より

※冊子掲載時点での情報です


ジカンテクノ株式会社 代表取締役 木下 貴博 氏

<話し手>

ジカンテクノ株式会社 代表取締役 木下 貴博 氏
(→ イベント登壇情報

1969年7月17日生。
近畿大学卒業、日産自動車に入社。
その後実家の運送業に従事。営業研修業を経て、ジカンテクノ創業に参加。
2021年より代表取締役に就任。

弁護士法人内田・鮫島法律事務所 代表弁護士 鮫島 正洋 氏

 

 <聞き手>
弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 鮫島 正洋 氏
1963年1月8日生。神奈川県立横浜翠嵐高校卒業。
1985年3月東京工業大学金属工学科卒業。
1985年4月藤倉電線(株)(現・フジクラ)入社〜電線材料の開発等に従事。
1991年11月弁理士試験合格。1992年3月日本アイ・ビー・エム(株)〜知的財産マネジメントに従事。
1996年11月司法試験合格。1999年4月弁護士登録(51期)。
2004年7月内田・鮫島法律事務所開設〜現在に至る。

 

企業情報

関西地方

ジカンテクノ株式会社

バイオマスを原材料にした高機能カーボンの製造

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