患者の声を、科学的根拠に変える
患者は存在するのに、医療情報が流れない
医薬品の副作用による死亡は年間約7,000人。しかしその70〜90%は死因の科学的評価すらできていません。難病・希少疾患では、治療法不明の患者が100万人以上おり、9割が発症から診断までに半年から3年を要します。支援も補償も受けられないまま苦しむ患者が、今も全国にいます。
背景にあるのは医療情報の不足です。カルテや検体といった医療情報は、これまで特定の医療機関を介して集められてきました。しかし副作用や難病・希少疾患は、症例が少数かつ全国に点在します。一部の病院だけを見ていても、いつ何人集まるか見通しが立たない。研究には一定の数が必要であるため、そもそも研究が成立しない構造になっているのです。

患者起点のプラットフォーム「VoiceAtlas」
当社は、2025年10月に設立された大阪大学発のスタートアップです。当社が構築するのは、患者起点で全国から医療・ゲノム情報を集積するプラットフォーム「VoiceAtlas」。すでに患者会と連携し、全国の患者へ直接かつ迅速にアクセスできる体制を築いています。
ゲノムは疾患リスクや薬の有効性・副作用といった個人差を決定づける「ヒトの設計図」であり、副作用や難病の原因を探る上で決定的な価値を持ちます。患者から唾液サンプルとカルテを預かり、解析したゲノムデータを臨床情報と紐づけて研究機関へ提供。まず大学との共同研究で創薬シーズを生み出し、次にその成果を製薬企業へライセンス提供します。研究機関と製薬企業の橋渡しを担うことで、創薬研究のエコシステムを生み出す構想です。
特徴的なのは、ゲノムを「個人資産」として扱う設計です。提供者には社会貢献度の可視化と、データが生み出した利益の還元を行います。社会のためにも自分のためにもゲノムを提供したいと思える仕組みをつくることで、持続的な情報集積を実現します。

世界初のPoCが始動
実証検証として当社が選んだのは、mRNAワクチン接種後にME/CFS(筋痛性脳脊髄炎)を発症した患者100名のゲノム解析です。ME/CFSは寝たきりで日常生活が困難になる難病でありながら、診断のハードルが高く治療法も存在しません。日本の推定患者数は12〜36万人。社会課題としても創薬研究ターゲットとしても注目される領域です。難病研究をリードする長崎大学の古賀智裕先生とともに、世界初となる研究プロジェクトを開始します。
新薬開発のターゲットは難病・希少疾患へと拡大しており、2024年には新薬承認の52%を占めるまでになりました。AI創薬が進む一方で、AIはデータがなければ機能しません。当社が着目する領域は事前に条件を絞り込むため、少数検体でも科学的・商業的価値が高いことが強みです。
患者と市民がつくる、新しい研究のかたち
社名の由来であるPPIE(Patient and Public Involvement and Engagement)は、医学研究に患者・市民が参画するという考え方です。欧米では研究費獲得の必須要件となる一方、日本では制度が未整備のまま。当社は共創・誠実・変革の3つのTを掲げ、患者を対等なパートナーとする研究・医療の新時代を目指します。
コメンテーターより

㈱AGSコンサルティング
執行役員/関西エリア統括部長
渡邉 高広 氏
TxPPIE株式会社は「患者の声を科学的根拠に変える」ことを掲げ、患者由来の臨床情報やゲノム情報を集積・解析し、研究機関や製薬企業の研究開発・創薬を支援する医療DXプラットフォーム企業と認識しています。
一定規模に至るまでの収益源は、独自データベースの提供や共同研究、創薬シーズのライセンス提供等が中心になると考えられ、製薬企業との連携は事業成長において重要な要素と思われます。
また将来的には、患者データ解析、患者リクルーティング、患者アンケート、患者コミュニティ運営、共同研究支援などを通じて継続的な収益機会を創出できる可能性があると考えています。
※「The INDEPENDENTS」2026年8月号 - P.9 掲載
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