■ 農家出身の起業家が見た、農業の違和感
鹿児島県を拠点とする株式会社オービジョンは、一次産業の課題解決に取り組むスタートアップです。創業者の大薗順士氏は、鹿児島の農家に生まれ育ち、農学部で農業を専門的に学びました。その後、通信販売会社にて広告や商品開発に携わる中で、「良いものを作っても売れなければ価値にならない」という現実に直面します。生産現場と販売の両方を理解する立場から、「なぜ農業はこれだけの生産力がありながら、収益につながりにくいのか」という問題意識を持ったことが、創業の原点となりました。
■ 農業産出額全国2位の鹿児島が抱える課題
鹿児島県は農業産出額が全国第2位を誇る、日本有数の農業県です。畜産や野菜など多様で質の高い産品を有し、大きなポテンシャルを持っています。しかしその一方で、生産者の所得水準は高いとはいえず、「これだけ作っているのに儲からない」という構造的な課題を抱えています。その背景には、複数の要因があります。市場・仲卸・小売といった多段階の流通構造により、生産者の取り分が圧縮されること。さらに、中小規模農家が多く、営業やブランディング、販路開拓まで手が回らないことも大きな要因です。こうした状況により、生産者は価格決定権を持ちにくく、商品の価値が十分に伝わらないまま流通してしまう構造が生まれています。
■ 課題の本質は「作り方」ではなく「売り方」
鹿児島にはすでに質の高い農産物が存在していますが、それをどう届け、どう伝え、どのように価値として認識してもらうかという「売り方」の部分に課題があります。つまり、「伝え方」や「流通構造」を見直すことが、農業の収益性向上に直結する鍵となります。オービジョンは、産地直送のD2Cモデルを採用し、中間流通を減らすことで生産者の手取り向上を実現しています。さらに特徴的なのは、取材・撮影・商品ページ制作・広告運用までを一括で担う点です。生産者が苦手としがちなマーケティングや情報発信を代行することで、商品の魅力を適切に伝え、付加価値を高めています。このモデルにより、サービス開始から3年で売上は約6倍に成長し、収益性と成長性の両立を実現しています。
■ 地域発モデルは全国・世界へ
当社は「J-Startup KYUSHU」への認定や各種ビジネスコンテストでの受賞、地域ベンチャーキャピタルからの出資など、外部からも高い評価を受けています。現在は鹿児島を起点としながら、他地域への展開や海外輸出にも取り組んでおり、ローカルモデルの横展開による成長が期待されています。生産者の所得向上や地域活性化といった社会的価値を生み出しながら、事業としても持続的に成長している点は、ゼブラ企業の好事例といえます。
コメンテーターより![]() |
鹿児島出身、農家出身で「鹿児島の生産者の“明るい未来”を創り出す」という貴社の姿勢は、地方創生を目指す地方にとって一つのロールモデルになると思います。 株式会社AGSコンサルティング 顧問 小原 靖明 氏 |
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