<起業家インタビュー>

■ KUROFUNEのビジョンと事業の位置づけ

 私たちのビジョンは「外国人労働者が働きやすい・住みやすいと感じられる社会を実現する」ことです。日本では人手不足が語られますが、私は採用数の不足だけではなく労働市場の設計の問題だと考えています。外国人を雇用しても生活面までケアができずに、結果として定着しない。そこで私たちは採用支援ではなく、生活と就労を一体で支えるプラットフォーム「KUROFUNE PASSPORT」を提供しています。生活オリエンテーション、日本語教育、相談対応、病院同行支援をアプリで提供し、企業と外国人双方の運用負担を減らしています。現在、クライアント企業は約100社規模、支援している外国人は数百名規模まで増えてきました。特に外食、製造、造船など現場産業での利用が広がっています。

「KUROFUNE PASSPORT」を使って登録支援業務を効率化

■   特定技能制度に注力している理由

 特定技能は2019年に始まり、製造、介護、外食、物流などで働ける制度です。転職が可能で、企業には生活支援義務が課されています。つまり企業は採用しただけでは人材を維持できず、入社後もケアをしていく必要があります。当社はこの「支援義務」をデジタル化して代替しています。特定技能人材の集め方も従来の紹介会社とは異なります。海外の送り出し機関だけに依存せず、国内の日本語学校、技能実習修了者の転職支援、自社開発した就労支援アプリ「KUROFUNE WORK」など複数チャネルで人材を確保しています。現在、外国人労働者257万人のうち38万人が特定技能者で、政府は5年で80万人レベルの受け入れを目指しています。

■ 積極的な地方展開

  外国人雇用の必要性は地方ほど大きいです。特に外食業では慢性的な人手不足があり、当社の導入企業も飲食業が多いのが実態です。店舗運営を維持するため、外国人材は不可欠になっています。一方で地域産業との連携も進んでいます。今治では造船関連企業との取引が広がり、特定技能労働者の生活支援を行っています。造船業は勤務形態や労働環境が特殊で、生活サポートの有無が定着率に直結します。秋田では外国人トラックドライバー[稜倉1] のための運転免許取得支援を行い、滞在拠点と自動車学校を組み合わせた受け入れモデルを構築しています。このように地域や業種ごとに必要な支援は異なり、オンラインだけでは成立しません。地元にいるアクティブシニアの皆さんを活用しながら、外国人を支援する仕組みを構築して、それぞれの地方に合わせて事業モデルを構築しています。 
KUROFUNE 第9期に重点的に攻めていくエリア

 

■ 企業向けのサブスク型の収益モデル

 ビザ申請一人当たり10万円の他、業界平均よりも安い外国人一人あたり月19,800円課金で法定支援・定着支援サービスを提供します。例えば100名の外国人を支援すると年間売上は数千万円規模になります。企業側には特定技能人材を採用した以上はその生活支援をする義務があります。当社はアプリを通じて生活のサポートを行い、人材が定着できるように支援しています。

■ 紹介手数料ゼロにビジネスモデル

 従来は採用時に数十万円規模の費用が発生し、離職すれば企業が再度人材紹介手数料を支払って新しい人材を採用しなければなりません。当社は在籍期間中の利用料で収益を得ます。特定技能労働者は日本で永住することもできるため、収益の発生点を「採用」から「定着」に移しています。企業の初期負担が下がり導入が進み、結果的にLTVは従来の人材紹介モデルより高くなります。

■ 競合との差別化

 競合は人材紹介会社や中間支援機関です。ただ彼らは採用時に紹介手数料が発生します。当社は働いている期間全体で収益が発生します。つまり「人を連れてくるビジネス」ではなく「働き続ける仕組み」を提供している点が違いです。外国人雇用は求人だけでなく、生活、教育、金融、コミュニティまで広げることができます。私たちは外国人の生活基盤となるプラットフォームを目指しています。

■ 関東出身ですが名古屋で起業

 外資系メーカーで働いていた時に、インドを訪れたことが転機でした。海外渡航が増え、年間12回ほど海外に行くようになり、国境を越えて働く人の動きが当たり前の世界を知りました。その視点から日本を見ると、外国人が働く社会の準備が整っていないと感じました。外国人の離職理由を調べると、仕事ではなく生活でした。銀行口座、住居契約、行政手続きなど、働く以前の壁がある。企業の中で解決できる問題ではないと考え、退職して2018年に赴任先の名古屋で創業しました。中部圏は製造業が多く、顧客と近い距離で検証を回せたことが現在の事業モデルにつながっています。

■ IPOを通じて、アジア市場展開を狙う

 現在、約2.5億円規模の資金調達を進めています。資金はプロダクト強化、地域拠点拡大、導入企業増加に使います。従業員は35名に増え、今年から組織をより強固にするために、役員陣を増強していこうと考えています。IPOは資金調達というより信頼性の獲得の意味が大きいと考えています。外国人雇用は行政や金融機関との関係が深く、透明性が前提になるためです。また、この課題は日本だけではありません。労働移動はアジア全体で起きており、今後は各国の制度に合わせてアジア全体へとサービスを広げていきたいと思います。

interviewed by kips 2026.2.11




【KUROFUNE株式会社】
設 立:2018年2月15日
所在地:愛知県名古屋市中区栄1-10-29 伏見FGビルディング8F
資本金:41,000千円
事業内容:特定技能労働者の入社後の法定支援・定着支援アプリ「KUROFUNE PASSPORT」の展開と人材紹介事業
従業員:34名

KUROFUNE株式会社 代表取締役 倉片 稜 氏

 

【代表者略歴】

KUROFUNE株式会社
代表取締役
倉片 稜 氏 Kurakata Ryo

 
生年月日:1991年1月23日
出身高校:埼玉県立大宮高等学校
東北大学経済学部卒業後に外資メーカーに4年半勤務。
外国人が住みやすい・働きやすい社会を実現したいと考えKUROFUNE株式会社を創業。


※「THE INDEPENDENTS」2026年3月号 - P.2-3より