■ 配管に貼るだけで発電するフレキシブルモジュール

 当社は、環境中に排出されている莫大な低温排熱(主に300℃以下)を、熱電発電により電気エネルギーとして効率よく回収する独自技術の社会実装を進めています。余剰蒸気や排気ダクトなどから放出される排熱と周囲の空気あるいは冷却水との温度差を利用して発電し、高い熱回収効率を実現できる点、ならびに既存設備に後付けでき、様々な排熱回収ニーズに対応できる点が、本事業の特長です。

 中核技術は、フレキシブル熱電発電モジュール「フレキーナ®」です。「フレキーナ®」は、フレキシブル構造で熱源パイプに密着装着できるため、熱電発電チューブ構造とすることにより、従来のセラミックス基板型モジュールでは得られなかった高い熱回収効率を実現しました。また、「フレキーナ®」は、独自開発の高温接合技術により、高温度差の印加による高い発電効率が可能になりました。さらに、半導体の組立製造装置を用いた独自の製造プロセスにより、高歩留まりでの量産に対応できる設計としています。

 需要が莫大であることから、今後、生産数量の増加に伴い、製造工程改善や材料コストの削減が進み、 大幅なコストダウン/コスト性能比の向上が見込めます。

■ 電池交換が不要になるIoT用自立電源

 排熱による連続発電を利用することで、外部電源を必要としない自立電源として利用できます。配管と周囲とのわずかな温度差でセンサーを駆動でき、配線工事や電池交換が不要になります。センサー数が増加する環境では電池交換作業が運用上の大きな制約となりますが、排熱発電により常時給電が可能になるため、この課題を解消し、IoT化のボトルネックであった「電池交換」問題を解決できます。従来の電池交換にかかる生涯コストに比べ、本自立電源に置き換えることで、交換の人件費を中心とした運用コストを解消でき、生涯コストを1/10以下に低減できます。
開発事例1:排熱利用 自立電源

■ 工場設備から電力を回収する省エネ用熱電発電システム

 当社はIoT用自立電源に加え、工場排熱を回収する発電システムも開発しています。蒸気や熱媒油の排熱を利用する二重管構造熱電発電チューブや、排ガス熱を利用する集熱コア内蔵熱電発電システムなどにより、kW級の発電が可能になりました。従来の発電機に比べ、稼働部がないため、大幅なメンテナンスコストの削減が可能です。また、発電チューブの本数を変えることで、広範囲の熱源規模に対応できます。
開発事例2:水蒸気排熱利用 二重管構造熱電発電チューブ

■ 量産化と世界市場への展開

 量産立ち上げに向けた経営体制強化のために資金調達を進めるとともに、各顧客案件に対し、段階的に工場導入へ向けた取り組みを進めています。IoT用自立電源は、昨年度より量産販売を開始しました。すでに、協力会社への製造工程の移管が完了しており、高歩留まりで安定な生産ができています。また、省エネ用自立電源も、サンプル販売の準備ができ、来年度より収益化していきます。

 海外展開については、アジアおよび欧州を中心に、製造業の大手企業との協議を開始しており、高い関心をいただいています。熱電発電市場は年率約30%で成長し、2032年には約67億ドル規模以上に成長すると予測されています。

 当社は、従来未利用だった排熱から電力を回収することで、電力コストを低減できるとともに、CO2削減による排出権取引や脱炭素経営にも貢献していきます。

 


 
コメンテーターより
弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 多良 翔理 氏
 

 排熱を電力に変える熱電発電は、脱炭素と省保守を同時に実現し得る注目領域です。既存配管へ後付けしやすいフレキシブル構造を核に、用途も広く展開できています。また、知財面でも、侵害検出性の高い構造要素は特許で押さえ、接合プロセスなどの内部処理は秘匿する二段構えができています。熱回収の要となる機構を製品として磨き込みながら、知財でも守りを固めており、長期の競争力を背景に今後の成長が期待されます。

弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 多良 翔理 氏

 
 
※「The INDEPENDENTS」2026年3月号 - P.11 掲載
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