<イベントレポート>

2025年10月31日 神戸インデペンデンツ×神戸大学Catapult Pitch vol.14
@ クリエイティブラボ神戸(CLIK)
+ Zoom ウェビナー配信

■ イベント詳細 https://www.independents.jp/event/776

 

<特別セッション>

 本セッションは、インデペンデンツクラブ代表理事の松本 直人 氏をモデレーターとして、神戸市 企画調整局 医療産業都市部 誘致・産業化担当係長奥町 卓大 氏神戸大学キャピタル(KUC)パートナー佐藤 尚礼 氏の3名で進行されました。
 奥町氏は、神戸医療産業都市の企業誘致や産業化支援を担い、クラスター形成を推進する役割を担っています。
 佐藤氏は、VCとスタートアップ双方での豊富な経験を活かし、大学発の研究シーズを事業化へ導く投資・経営支援を担当しています。
 

(パネリスト)
神戸市 企画調整局 医療産業都市部 誘致・産業化担当 係長
奥町 卓大 氏
  株式会社神戸大学キャピタル
パートナー
佐藤 尚礼 氏
    (モデレーター)
インデペンデンツクラブ
代表理事
松本 直人 氏
神戸市 企画調整局 医療産業都市部 誘致・産業化担当 係長 奥町 卓大 氏   株式会社神戸大学キャピタル パートナー 佐藤 尚礼 氏     インデペンデンツクラブ 代表理事 松本 直人 氏
           

■ 神戸大学キャピタルが描くカンパニークリエーション

 セッション前半では、佐藤氏よりKUCの取り組みと今後の方向性が共有されました。KUCは2021年に設立された大学発VCで、1号ファンドとして22億円を運用し、20社に投資しています。約7割が創薬・医療領域のスタートアップであり、神戸大学や神戸医療産業都市との連携を背景に、資金だけでなく経営面からの支援も特徴です。
KUC 1号ファンドの実績

 現在準備中の2号ファンド(60〜70億円規模)では、「カンパニークリエーション」を重視。研究成果の早期事業化を目指し、会社設立段階から経営支援や組織づくり、人材採用までを一体的に伴走する体制を整えています。

 

■ 約30年の蓄積を誇る神戸医療産業都市

 続いて奥町氏より、神戸医療産業都市の現状が紹介されました。同産業都市は1998年の開始以来、約350社が集積する国内有数のバイオ・ライフサイエンスクラスターへと発展しています。
神戸医療産業都市進出企業・団体

 エリア内には、病院群を中心としたメディカルクラスター、理化学研究所などのバイオクラスター、そしてスーパーコンピューター「富岳」を擁するシミュレーションクラスターが配置され、研究開発を支えるレンタルラボやCPCなどの設備が充実しています。スタートアップの資金調達も活発で、都市内企業約70社のうち37社が累計400億円を調達するなど、神戸発シーズへの注目は着実に高まっています。
神戸医療産業都市 全体俯瞰神戸医療産業都市 レンタルラボ施設

■ 国際化を見据えた今後の展望

 奥町氏は、神戸を「世界へのゲートウェイ」と位置づけ、アジアを中心とした国際連携の強化を展望として示しました。韓国スタートアップの来訪増加や、2030年の神戸空港国際定期便就航予定など、国際展開の機運が高まっています。

 佐藤氏は、2号ファンドにより本社機能を神戸に置く企業を増やし、研究環境と経営支援の両輪でスケールを促す方針を語りました。首都圏VCとのネットワーク形成を進め、神戸の研究シーズを広く発信する取り組みも行っています。

 

■ 成長に向けた課題と今後の鍵

 課題として、交通・飲食などの日常的な利便性の向上、夜間の交流拠点不足、経営人材(CXOクラス)の確保などが挙げられました。こうした環境整備と人材基盤の強化が、今後のイノベーションに不可欠であると指摘されました。また、大企業研究所とのM&A連携を進めることで、スタートアップの出口戦略の多様化も期待されています。

 大学・行政・企業が連携し、研究成果の事業化と産業集積が同時に進む神戸のエコシステムは、今後もヘルスケア分野のイノベーション拠点として進化を続けると考えられます。

 

※「THE INDEPENDENTS」2025年12月号 P.5 より
※ イベント開催時点での情報です