＜IPO表彰＞ 2025年3月28日 東証グロース市場に上場 （証券コード：341A） 写真左）株式会社トヨコー 　　　　代表取締役CEO 豊澤 一晃 氏 　　右）インデペンデンツクラブ 　　　　代表理事 松本 直人

＜特別セッション＞ （パネリスト） ・株式会社トヨコー 　代表取締役CEO 豊澤 一晃 氏(※写真左) ・光産業創成大学院大学 　副学長　藤田 和久 氏(※写真右) （モデレーター） ・弁護士法人内田・鮫島法律事務所 　代表弁護士 鮫島 正洋 氏

■ 跡継ぎベンチャーからIPOへの軌跡

豊澤：私は東京でデザイン業務に携わっていましたが、父が創業したトヨコーに2003年入社しました。しかし建設業界の旧態依然とした状況に違和感を覚え、新しい技術開発に取り組むようになり、現在は「SOSEI」と「CoolLaser」という2つの環境配慮型技術を軸に事業展開しています。

■「SOSEI」の特徴と成長戦略

豊澤：「SOSEI」は工場の老朽化したスレート屋根を、特殊な樹脂3層でスプレーコーティングし蘇らせる技術です。建設業界の平均粗利が25%程度である中、当事業は18年間にわたり40%という高い粗利率を維持してきました。最近では、太陽光発電との組み合わせも進めています。従来、スレート屋根には太陽光パネルを設置できませんでしたが、当社の技術により、太陽光パネルの設置を可能にしました。

■「CoolLaser」技術の革新性と市場可能性

豊澤：「CoolLaser」は、老朽化したインフラのサビや塗膜をレーザーで除去する技術です。例えば、日本の橋梁は設計寿命が50年とされていますが、現在すでに3割以上が50年を経過し、2040年後には約8割が50年を迎えます。従来のサビ除去技術は大量の砂や鉄粉を使用するため、小さな橋でも4トンもの産業廃棄物を生み出していました。「CoolLaser」は、レーザー光でサビと塗膜を除去するため産業廃棄物をほぼ出さず、環境に優しい工法を実現しています。また、レーザーは反力のない作業が可能で、作業者にも優しい方法です。

■ 光産業創成大学院大学との共同開発

豊澤：私は光産業創成大学院大学（理事長：浜松ホトニクス代表取締役晝間明氏）に2008年に社会人入学し、「CoolLaser」の開発を進めました。当社のレーザー技術の最大の特徴は、高出力のレーザーを高速で回転させることにより、鋼材本体にダメージを与えず表面のサビや塗膜だけを除去できる点です。従来のレーザークリーニング技術はパルス発振の微弱なレーザーを使用していましたが、当社はCW連続波の高出力レーザーを採用しています。

藤田：私は光創成大学院大学の教授として、豊澤さんの研究を支援する中で、現場ニーズと学術知見をつなぐ役割を果たしました。回転照射という核心技術は共同研究の過程で生まれたものです。また、社外取締役に就任し、JIS規格策定にも関わり、社会実装を進めるための支援も行いました。産学連携の真価がこの技術に結実したと言えるでしょう。

■ 特許戦略と社会実装への道のり

豊澤：新技術普及のため一般社団法人レーザー施工研究会を立ち上げ、現在110社以上が加盟しています。JIS規格制定や国交省との共同研究を経て、最近では国交省推奨技術にも選定されました。特許は国内17件、海外5件を取得しています。

鮫島：レーザー工事という新ジャンルを創出するには、特許取得だけでなく標準化と社会実装が不可欠でした。土木業界からの抵抗もありましたが、JIS化と国交省認定で大きく前進しました。特許戦略、標準化、市場創造という三位一体の取り組みが美しいIPOストーリーを描いたのだと思います。

■　IPOの目的と今後の展望

豊澤： 2023年に「CoolLaser」の第2世代モデル「G19」を発売し、2024年9月から納品を開始しています。販売価格は約1億円で、すでに受注を積み上げています。建設業界は旧態依然としており、小さな会社は小さいままと見られがちです。そこで、信頼性を高め、成長戦略を描くためにIPOという手段を選びました。今後の展望としては、インフラメンテナンスの将来像としてドローン点検、AI画像解析、ロボティクスなど他の技術との組み合わせを進め、建設業界の3Kを3C（Cool・Clean・Creative）に変革したいと考えています。海外市場では米国や東南アジアでの需要も視野に入れており、グローバル展開も進めていく予定です。

鮫島：技術の独自性と市場の広さを考えると、まだまだ成長の余地は大きいと感じます。建設業という業種は一般的に低いPERが付きがちですが、インフラ老朽化対策という時代の要請に応える技術であり、環境負荷低減という社会的価値も高い事業です。日本の産学連携の代表的成功事例として、今後もさらなる発展を期待しています。

写真(左から)：鮫島氏、 豊澤氏、藤田氏　　　　　

※「THE INDEPENDENTS」2025年6月号 P.6 より
※ イベント開催時点での情報です