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スタートアップ法務・知財の勘所

スタートアップ法務・知財の勘所(13) ~契約・知財の知的創造サイクル~

弁護士法人 内田・鮫島法律事務所
高橋 正憲 弁護士/弁理士

1 はじめに

 前回は、POCで創出された成果について、契約と特許明細書を一体として設計することの重要性を述べました。

 今回は、さらに一方進めて、契約成果と特許出願の関係を考えます。

 実務では、まず契約を締結し、その後に研究・開発を行い、発明が生まれたら特許出願を検討する、という一方向の流れで考えがちです。

 しかし、本来、契約と特許は一方向に検討すべきものではありません。将来どのような発明が生じ、どのような請求項で権利化するかを想定して契約を作る。そして、実際に発明が生じたら、その契約を横に置いて請求項を検討する。さらに、その検討から見えてきた課題を次の契約にフィードバックする。

 本稿では、このように「契約→特許→契約」と往復しながら両者を設計していくプロセスを、「契約・知財の知的創造サイクル」と呼びたいと思います。

契約・知財の知的創造サイクル

2 創出される知財から契約を考える

 大手建設機械メーカーX社と、AIエンジンを開発するスタートアップY社が、「AIエンジンを搭載した自動運転建設機械」のPOCを行う場合を考えます。

 契約を作る際には、まず、このPOCからどのような発明が生じ得るかを想定します。Y社としては、少なくとも自社のコア技術であるAIエンジンに関する発明は単独帰属としたいところです。

 そこで、POCの対象範囲をどこまでとするのか、AI技術と建設機械技術の技術分野ごとの権利帰属をどのように切り分けるのか、既存のAIエンジンをBackground IPとしてどのように保護するのかを、将来の特許出願まで想定して契約に落とし込みます。

3 契約を横に置いて請求項を書く

 POCから発明が生まれたら、今度は契約書を横に置いて請求項を検討します。

 第一に、その発明がそもそも契約上の「POC成果」に該当するかを確認します。POCの対象外となる技術的思想を適切に切り出せるのであれば、その範囲で請求項を作成することも検討します。

 第二に、知財帰属条項を確認します。例えば、「AI技術はY社、建設機械技術はX社」と技術分野ごとに帰属が定められているのであれば、その区分を踏まえ、Y社に帰属する技術を適切に切り出して請求項を設計します。また、「単独で創作した知財は創作者に帰属する」とされている場合には、相手方が創作した技術を不用意に請求項へ取り込まないことも重要です。

 第三に、Background IPを確認します。POC以前からY社が保有するAI技術だけで請求項を構成できるのであれば、POC成果とは切り離したY社単独の権利として出願できる可能性があります。

4 特許から、再び契約へ

 そして、ここで検討は終わりません。実際に請求項を作成してみると、「POCの対象範囲をもう少し明確に定義すべきだった」「AI技術の帰属をより明確に切り分けるべきだった」といった契約上の課題が見えてきます。

 その経験を、次の契約にフィードバックします。POC対象条項は将来の請求項を念頭に仮想的に作り、知財帰属条項も将来どのように発明を切り出すかを想定して設計するのです。

 契約を見ながら特許を考え、特許を考えながら契約を書く。この往復を繰り返す「契約・知財の知的創造サイクル」こそが、技術法務の重要な実践方法といえるでしょう。

以 上

 

※「THE INDEPENDENTS」2026年10月号 P.13より
※ 掲載時点での情報です


弁護士法人 内田・鮫島法律事務所 弁護士/弁理士 高橋 正憲 氏

弁護士法人 内田・鮫島法律事務所 弁護士/弁理士 高橋 正憲 氏
2004年北海道大学大学院工学研究科量子物理工学専攻修了後、(株)日立製作所入社、知的財産権本部配属。2007年弁理士試験合格。2012年北海道大学法科大学院修了。2013年司法試験合格。2015年1月より現職。

【弁護士法人 内田・鮫島法律事務所】http://www.uslf.jp/
所 在 地:東京都港区虎ノ門2-10-1 虎ノ門ツインビルディング東館16階
T E L:03-5561-8550(代表)
構成人員:弁護士34名・スタッフ16名
取扱法律分野:知財・技術を中心とする法律事務(契約・訴訟)/破産申立、企業再生などの企業法務/瑕疵担保責任、製造物責任、会社法、労務など、製造業に生起する一般法律業務

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知財・技術を中心とする契約・訴訟等の法律事務(技術法務)

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