【東京インデペンデンツ】育てる難しさ、育つ手応え - アントレプレナー教育の最前線
<イベントレポート>
2026年8月10日 東京インデペンデンツ
@ Tokyo Innovation Base (TiB) https://tib.metro.tokyo.lg.jp/
+ Zoom ウェビナー配信
高校生への起業体験支援、知財教育、全寮制高専での起業家育成、そして社会人の起業準備支援。それぞれ異なる立場からアントレプレナー教育に携わる4人が、現場で実践する「アントレプレナー教育」について語りました。
(モデレーター)

本気ファクトリー㈱
代表取締役
畠山 和也 氏
(パネリスト)

株式会社AI Samurai
取締役
弁理士法人白坂
共同創業者弁理士
播磨 里江子 氏

公益財団法人
SAWADA FOUNDATION
事務局長
渡邉 拓斗 氏

神山まるごと高等専門学校
起業キャリア応援
中村 一彰 氏
「まずやってみる」機会をつくる―畠山和也氏
モデレーターを務めた本気ファクトリー株式会社の畠山氏は、ソフトバンクやリクルートで新規事業に携わり、ラクスルでスタートアップ経営を経験した後に独立。現在は、高校生支援事業を行っています。
畠山氏が現場で感じているのは、「挑戦したい」という気持ちを、実際の行動へ移すことの難しさです。小さな事業では本人がわくわくしない。一方で、いきなり大きな事業に挑めば難易度が高すぎる。その間で、多くの若者が立ち止まってしまいます。だからこそ必要なのは、最初から成功を求めることではなく、自分で考え、実際にやってみる機会です。
Super Student Project(SSP)も、高校生をすぐに起業家にすることを目的としているわけではありません。自分たちで社会や身近な課題を見つけ、解決策を考え、実践し、失敗から学ぶ。その最初の一歩を資金面も含めて支える取り組みです。

「誰かのために」が発明の原点―播磨里江子氏
株式会社AI Samurai取締役で弁理士の播磨氏は、知財教育という立場からアントレプレナー育成に取り組んでいます。
AIを活用して発明の内容を評価し、特許取得へのハードルを下げる仕組みを教育現場にも展開。実際に、中学生が特許を取得する事例も生まれています。
播磨氏が大切にしているのは、最初から「新しいアイデアを考えなさい」と求めないことです。
まず家族や地域の人たちに、「何に困っていますか」と聞きに行く。すると、それまで「自分にはできない」と言っていた子どもが、誰かの困りごとを知った瞬間に夢中になって考え始めることがあります。
「誰かのために、自分の工夫で何かを変えたい」。
その気持ちに火がつくことこそ、発明や起業の出発点なのかもしれません。
一方、未成年者の特許出願では、契約や保護者の承諾なども欠かせません。挑戦を促すだけでなく、それを安全に支える仕組みまで含めて教育であることも、播磨氏の話から見えてきました。

1年半、起業だけに向き合う―渡邉拓斗氏
公益財団法人SAWADA FOUNDATION「澤田経営道場」事務局長の渡邉氏は、より実践的な起業家育成の現場にいます。
澤田経営道場は、HIS創業者の澤田秀雄氏が設立した起業家育成機関です。若者が約1年半、起業に集中して取り組みます。参加費は無料で、生活を支える返済不要の資金も提供されます。
特徴的なのは、知識を教えて終わるのではなく、実際に事業を立ち上げるところまで伴走することです。当然、思いどおりにはいきません。事業を始めれば、顧客、資金、人材など次々と現実の壁にぶつかります。その経験そのものが起業家を育てていきます。
そして、道場を卒業した起業家が事業で利益を上げ、その一部を財団に寄付する例も生まれています。支援された若者が成長し、今度は次の世代を支援する側になる。渡邉氏は、そこに育成事業ならではの手応えを感じています。

「起業したい」をどう持続させるか―中村一彰氏
神山まるごと高等専門学校で起業家育成に携わる中村氏は、学校教育の中でアントレプレナーシップと向き合っています。
神山まるごと高専は2023年、徳島県神山町に開校した全寮制の高専です。学生はテクノロジーとデザインを学びながら、起業も将来の選択肢の一つとして考えていきます。
中村氏が難しさを感じているのは、「起業したい」という熱をどう持続させるかという点です。多くの学生は高い意欲を持って入学しますが、学べば学ぶほど、乗り越えるべき壁の大きさも見えてきます。うまくいかない時期が続くと、「一旦就職しようか」と気持ちが揺らぐ学生も少なくありません。
そうした現場に立つうちに、中村氏の意識も変わっていきました。「起業家を何人生んだか」という数だけを追うのではなく、「起業したい」と思う学生を、いかに離脱させずに支え続けるか。その視点を大切にしているといいます。


SSP事業へのご寄付ご協力のお願い

ベンチャー企業の支援・育成を行うインデペンデンツクラブの事業として、高校でアントレプレナーシップ活動に取り組む高校生に助成する「Super Students Project (SSP)」を行っております。
SSPはご理解いただいた有志の方々の貴重なご寄付によって運営しております。
SSPに賛同いただける方はぜひご寄付ご協力をお願いいたします。
◆ 寄付ページ:https://indep.club/donation#flow
※ SSP事業だけの寄付ページではございませんので、
寄付フォームに「SSP」のために寄付する旨をご記載ください。
※ 寄付額 3,000円以上よりお受けいたしております。
お問合せ先 : インデペンデンツクラブ事務局 SSP担当 ssp@independents.jp
※「THE INDEPENDENTS」2026年9月号 P.4-5 より
※ イベント開催時点での情報です