プロマーケットの3年後を見る 上場社数から「資本が循環する市場」へ
2025年のTOKYO PRO Market(TPM)の新規上場は46社となり、2026年も8月28日上場予定分までに、地方プロ市場の単独上場を含め34社(重複除く)となる見込みです。福岡、札幌にもプロ市場が広がり、J-Adviserには証券会社だけでなくM&A・コンサルティング系会社が加わり(表1)、今年関与した監査法人も25社と、上場へ導く体制は着実に厚くなってきました。
一方、3年後を考えるうえで、上場社数以上に注目したいのが「株主」と「流動性」です。TPMには株主数や流通株式数の形式基準がなく、買い手も原則として特定投資家等に限られます。東証の集計では、TPM上場企業の約9割が株主50人未満です。また2024年には、年間売買なしが47%、1回だけが41%と、約9割の企業で売買がほとんど行われていません。
背景には、上場時に新しい株主をつくる機会が少なかったことがあります。2025年はNPT社と山本通産が新株発行で資金調達を行いましたが、こうした事例はまだ限られています。東証の集計でも、上場時に株式で資金調達した企業は4%、売出しは1%にすぎません。
さらに株主数が多いだけでは、市場としての流動性は生まれないことを示した事例がNPT社です。同社はTPM上場承認時には500名を超える株主を抱えていました。さらに2025年1月の上場時には、法人15社・個人2名に新株を発行し、約3.1億円を調達しました。それでも上場後の株式流動性は限定的で、特定投資家に投資家層が限られることや、機動的な資金調達に時間を要することなどを理由に、2026年7月に自主的に上場を廃止しました。
そこで重要になるのが、流動性プロバイダー(LP)を含む証券会社の役割です。2026年の新規上場企業では6社の証券会社がLPを担っています(表2)。ただしLPを指定すれば自動的に売買が増えるわけではありません。買いたい投資家がTPM銘柄を取り扱う証券会社に口座を持ち、実際に買い注文を出せること、既存株主が売却注文を出せること、そして両者が市場で結びつくことが必要です。
今後は、資産家や企業オーナーに加え、事業会社・CVC、クロスオーバーファンドなどが買い手となり、新株発行や既存株主の売出しが増える可能性があります。その時、J-Adviserの競争軸も「何社上場させたか」だけでなく、「誰が株主をつくり、売買機会を提供できるか」へ広がっていくのではないでしょうか。
3年後にプロ市場への新規上場が年間60~70社程度まで増えることも一つのシナリオです。その時に見たい数字は、上場社数だけではありません。株主数、増資・売出し額、売買日数・売買代金、一般市場への移行、そしてM&Aの件数です。上場社数の増加に加えて、こうした数字が動き始めた時、プロマーケットは「上場する市場」から、企業と成長資金、新しい株主をつなぐ資本市場へ一歩進んでいくのではないでしょうか。
【参考資料】
表1:プロ市場新規上場の担当Adviser(重複上場を除く)
※2026年は8月28日上場予定のインターパークまでを含む

出所:東京証券取引所、福岡証券取引所、札幌証券取引所の新規上場会社情報等を基に整理。
表2:2026年プロ市場新規上場企業の流動性プロバイダー
※2026年は8月28日上場予定のインターパークまでを含む

※流動性プロバイダーは1社に限定されず、1社以上の選任が必要です。
※対象は、インターパークまでのTPM新規上場33社+Sapporo PRO Frontier Market単独上場1社の計34社です。地方プロ市場との重複上場は二重計上していません。
※デジタル・ナレッジはアイザワ証券とSBI証券の2社を指定しているため、指定件数の合計は35件です。
出所:東京証券取引所、札幌証券取引所および各社上場開示資料を基に整理。

【國本 行彦】
1960年8月21日生。
東京都立志村高校卒業。
1984年早稲田大学法学部卒業後、日本合同ファイナンス(現・JAFCO)入社。
2006年1月5日 (株)インディペンデンツ(現(株)Kips)設立、代表取締役就任。
2015年11月9日 特定非営利活動法人インデペンデンツクラブ 代表理事就任(現副代表理事)
2020年6月 (株)ラクス社外取締役就任
※「THE INDEPENDENTS」2026年8月号 - P.13 より