レアアースを、薬に変える ─ 上市への道すじと収益化戦略
レアアースを、薬に変える
「レアアース」と聞くと、電気自動車やスマートフォンの材料を思い浮かべる方が多いかもしれません。株式会社applause Pharmaは、この希少資源をまったく別の舞台へと導こうとしています。それが、腎臓病の治療薬です。同社が開発する「MA-004」は、レアアース化合物を基盤とした次世代の医薬品原薬。無機材料を薬にする「無機創薬」という珍しい領域で、独自の道を切り拓いています。

透析に頼らない未来へ
同社が挑むのは、切実な社会課題です。慢性腎臓病(CKD)の患者は国内だけで約1,480万人。成人の8人に1人が抱え、透析にかかる社会保障費は年間約1.6兆円にのぼります。MA-004は、この負担を軽くする可能性を秘めています。さらに、腎臓病は犬や猫にも多い病気。会場からも「動物医療への貢献も期待でき、社会性が高い」と評価する声が寄せられました。ヒトにもペットにも寄り添う点が、大きな共感を呼んでいます。
1日1錠という強み
既存の治療薬は、効果を出すために1日10〜14錠もの服用が必要でした。MA-004は、非臨床試験で既存薬の5分の1程度の用量でも効果を示し、「1日3錠」で患者の負担を大きく減らせる可能性があります。まず高リン血症で承認を取り、その後CKDへ適応を広げる戦略で、国内約600億円の市場からさらに大きな世界へ。無機化合物を各疾患へ応用するプラットフォーム化も見据え、成長の裾野は広がっています。
日本発の資源戦略として
レアアースといえば、加工技術で中国が数年先行しているのが実情です。そうしたなか同社は、話題の南鳥島レアアース泥を医薬品原料に活かすべく、政府との対話も進めています。希少資源を国産の薬に変える挑戦は、経済安全保障の観点からも注目に値します。

上市への道すじ
収益化の本丸は、ヒトの医薬品です。同社はまず高リン血症の治療薬として上市を目指し、2028年に臨床試験を開始。その後、患者数の多いCKDへ適応を拡大していく計画です。将来的には国内で数百億円規模、グローバルでは大型市場が見込まれ、承認後は段階的に収益が積み上がる見通しです。加えて、動物用医薬品大手との独占ライセンス契約により、犬や猫の治療薬を2030年に上市する道も。ヒトと動物、二つの出口から、レアアースという一粒の可能性を着実に収益へと育てていきます。
コメンテーターより

弁護士法人内田・鮫島法律事務
弁護士 阿形 直起 氏
applause Pharma社は、レアアース化合物MA-004を活用し、複数の大学・企業との共同研究を通じて、高リン血症からCKDへ展開する独自の創薬構想を進めています。高リン血症、特にリン吸着系は過去の承認実績も高く、事業化が期待される領域です。そのような領域において共同研究の成果を戦略的に知財化することで、無機創薬領域における競争優位を確立していくことが期待できます。
※「The INDEPENDENTS」2026年9月号 - P.8 掲載
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