<イベントレポート>
2026年4月17日 鹿児島インデペンデンツ
@ 鹿児島県庁18階 かごゆいテラス
+ Zoom ウェビナー配信
■ 日置市から育つスタートアップ戦略
鹿児島県庁18階の「かごゆいテラス」で開催された鹿児島インデペンデンツにおいて、「日置市から育つスタートアップ戦略」をテーマに特別セッションが行われました。登壇者は、日置市長の永山由高氏、小平株式会社代表取締役の小平勘太氏、株式会社ECOMMIT代表取締役の川野輝之氏です。
鹿児島市に隣接する日置市では、近年、企業の本社移転が相次いでいます。人口規模の大きくない自治体でありながら企業が集まり始めている背景として、都市機能の代替ではなく、「暮らしと仕事が一体化した環境」の設計という考え方が共有されました。
■ 本社機能を呼び込むという発想
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鹿児島日置市長 永山 由高 氏 |
永山:人口約4万5000人の地方都市である日置市は、従来の工場誘致では若者の定着につながらないという課題意識から、「本社機能の誘致」に舵を切りました。その結果、この5年間で12社の本社移転が実現しています。
工場を誘致するだけでは雇用は生まれても人は定着しません。本社機能を持つ企業を呼び込むことで、意思決定や企画といった仕事を地域に生み出す必要があります。企業が来ることで地域に新しい人の流れができ、さらにそこから別の企業や人材が連鎖的に集まる状態をつくりたいと考えています。
■ 温泉街再生と「猫狐馬ノ杜」プロジェクト
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小平株式会社 |
小平:「猫狐馬ノ杜(ねこまのもり)」プロジェクトは、不動産開発ではなく、温泉街の再生です。かつて商店として使われていた跡地を活用し、複数の企業が入る拠点として整備しています。
2027年1月開業目標に、施設には企業のオフィス機能に加え、コワーキングスペースを設け、外部人材が滞在しながら働ける環境を整えます。
銭湯や鍼灸院といった既存の地域資源とも連携し、働く場所と生活、健康が分断されない設計にしています。新しい施設をつくることが目的ではなく、人が集まり続ける状態をつくることが重要だと考えています。
「猫狐馬ノ杜」施設
■ ECOMMITの事業と本社移転の背景
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株式会社ECOMMIT |
川野:私どもは衣類の回収から再流通までを一貫して行うインフラを構築しています。回収・選別・販売の過程で得られるデータを活用しながら、循環の最適化を図っています。
「猫狐馬ノ杜」に本社機能を移転する理由は、環境と人の両面です。地球にコミットする循環商社として、自然環境の中で事業を行うことに意味があると考えました。また、地域にすでに挑戦しているプレイヤーがいることが大きな要因でした。
■ 「街まるごとオフィス」という働き方
小平:「街まるごとオフィス」とは、建物の中だけで完結しない働き方です。
宿泊施設は滞在拠点となり、飲食店は会議や交流の場になります。温泉や医療はコンディションを整える機能を担います。こうした地域の既存機能を組み合わせることで、街全体を仕事場として活用します。
企業単位で閉じた空間ではなく、地域の中で人と人が交わることで、新しい動きや連携が生まれる環境をつくっています。
■ 自然環境と生活環境
永山:日置市は海と山の両方に近く、生活環境としてのバランスが取れています。自然環境だけで人が来るわけではありません。生活のしやすさや子育て環境、仕事の機会がそろっていることが重要です。
川野:社員にとっても、生活と仕事が近い環境は大きな価値があります。
■ 街づくりが先行するモデル
永山:地方からユニコーン企業を生み出すことを直接の目的にはしていません。まず街をつくることが重要です。その結果として企業が集まり、スタートアップが育つと考えています。
小平:企業誘致を先に考えるのではなく、地域の魅力をどう設計するかが重要です。その結果として企業が入ってくる状態をつくります。
永山:地域の文化と外から来る企業が交わることで、新しい価値が生まれます。
■ 「地方こそスタートアップの現場」
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インデペンデンツクラブ |
松本:今日の話を聞いていると、地方は不利どころか、むしろスタートアップの現場になっていると感じます。インデペンデンツクラブの活動を通じて多くの企業を見てきましたが、地域には課題があり、プレイヤー同士の距離が近い。それが新しい事業を生む土壌になっています。重要なのは、人と挑戦が集まる「場」をどうつくるかです。その連鎖が起きれば、地域からでも大きな企業は生まれると考えています。

※「THE INDEPENDENTS」2026年5月号 P.6-7 より
※ イベント開催時点での情報です



