■ 富山スタートアップ支援プログラム「T-Startup」選定企業
中村氏は、富山大学で建設系の学部に進学し、在学中から複数の建設現場で業務に携わってきました。現場では、紙・電話・FAX・Excelなどアナログな管理が依然として多く、情報伝達や勤怠管理に多くの時間が割かれている状況を目の当たりにしました。こうした環境を改善したいという思いから、2025年4月に株式会社GENLYを25歳で設立しました。開発リソースが限られる中、必要最小限の機能に絞ってプロトタイプを構築し、現場でのヒアリングと改善を繰り返しながらサービスの形を固めていきました。現在も企画・開発・運用を中村氏一人で担当しつつ、ユーザー企業との対話を重ねながらプロダクトを成長させています。
■ LINEで完結する現場管理アプリ「GENLY」
建設・工事業向けに特化し、職人手配、勤怠、日報提出など現場の主要業務をすべてLINEで完結できるアプリを4社に試験導入しています。職人は新たなアプリのインストールやログインが不要で、届いたLINEメッセージのボタンを押すだけで日々の報告ができます。導入企業では、日報作成や出勤簿集計の時間削減により、試算ベースで約46%のコスト削減効果が確認されています。また、「いつ・誰が・どこで・どれだけ働いたか」という稼働データを自動で蓄積し、経営判断に役立てることができます。
■ 横のつながりを生かした独自の営業戦略
当社は、建設業界に特徴的な「応援要請(職人の貸し借り)」にも対応しており、取引先はGENLY未導入でもLINE上で応援内容の確認、承諾・辞退、請求書送付まで行えます。これにより、未導入企業もGENLYの機能を自然に体験でき、導入のきっかけにつながります。すでに富山県内で4社への導入が決定しており、展示会では中堅規模の元請け企業からも高い関心をいただきました。

■ 今後の事業展開
今後は、応援要請の導入モデルを軸に、北陸地域で100社規模のネットワークを構築することを目指します。その後、同モデルを横展開し、全国展開へとつなげていく計画です。また、労務管理だけでなく、会計、評価、人材管理など建設業界の周辺領域へとサービスを拡張し、現場と経営をつなぐプラットフォームとしての機能強化も進めていきます。
事業拡大に伴い、プロダクト開発体制の強化、営業組織の構築、セキュリティ・運用基盤の整備を目的とした資金調達を検討しています。外部パートナーとも連携し、建設業界のデジタル化を持続的に推進できる事業基盤の確立を目指します。

コメンテーターより![]() |
近時、AIをはじめとするIT製品・ITサービスによる業務効率化の必要性が強く認識され、そのためのIT製品・ITサービスが数多く提供されています。 弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 高瀬 亜富 氏 |
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