■  改ざん検知と高齢者見守りシステムでの実績

 当社は、創業以来、社会インフラを支える二つの事業「Web改ざん検知」と「高齢者見守りシステム」を軸に成長してきました。改ざん検知事業では、150社・1,500サイトを常時監視し、日立製作所や東京都案件(3年連続落札)など、大規模顧客からの厚い信頼を獲得しております。また、高齢者見守りシステムは、高齢化が進む地域で行政を補完する民間インフラとして機能し、安定した収益基盤を形成しています。

 両事業はともに社会的必要性が高く、景気変動の影響を受けにくい特徴があります。既存事業が黒字化し、確かな実績が積み上がったことにより、同社は次のステージとして、国内で培った技術を世界市場へ展開する挑戦に踏み出す環境を整えています。

 

■ GitHub Communityを通じた世界戦略

 現在取り組んでいる新規事業は、次世代の「スコアリング方式」による改ざん検知システムです。従来主流であった“原本ファイルとの比較”方式では拾いきれない、挙動ベースの異常検知を可能にする技術であり、国内15億円、海外147億円と拡大を続ける市場において、まだ十分にカバーされていない領域に対応します。

 特筆すべきは、この新方式が世界1.2億人の開発者が利用する「GitHub」と連携し、既存のデプロイフローに後付けで導入できる設計となっている点です。開発の中心を担う内山CTOは、GitHub周辺技術に深い知見を持ち、使い勝手とセキュリティを両立したアーキテクチャを構築しています。まずはGitHub Communityを活用してβ版の試用ユーザーを獲得し、フィードバックを段階的に取り込みながらグローバル展開へ進む戦略です。

既存ソースコード管理システム(GitHub)を活用した改ざん検知システム

 

■ 経営革新法と資金調達戦略

 2025年10月には、当社の新規事業計画が和歌山県から「経営革新計画」として承認され、事業の社会的意義と成長性が公的に評価されました。

 現在は、本新規事業の本格立ち上げに向け、エクイティによる4,000万円の資金調達 を計画、まずは2026年3月まで:開発費・運転資金として2,000万円、2026年4月以降:運転資金として2,000万円をエンジェル投資家も含めエクイティ調達を行います。

 PoC(実証)を経て、2026年度にβ版公開、2027年度に正式リリースを予定しており、2033年度には10億円規模の事業へと成長させる構想です。社会的に必要性の高い領域で、国内の運用実績を基盤に世界市場へ挑む本プロジェクトは、投資家の皆さまとともに育てていく価値あるテーマであると考えています。

 


 
コメンテーターより
弁護士法人内田・鮫島弁護士事務所 弁護士 稲垣 紀穂 氏
 

 不正アクセスによるウェブサイトの改ざん被害が増加する昨今において、こうした改ざんの検知事業を新規に展開するアットシグナルは、非常に社会性の高い企業と考えます。
 改ざん検知の技術は、自ら開示しない限り、模倣できる程度に外部に明らかになることは基本的にないと考えられます。そのため、公開を必然的に伴う特許出願を行うというよりは、強みとなる技術を外に出さないことでその保護を図る方によく馴染みます。コアになる情報はそもそも開示しない等、徹底した情報管理を行うことが望まれます。

弁護士法人内田・鮫島弁護士事務所 弁護士 稲垣 紀穂 氏

 
 
※「The INDEPENDENTS」2025年12月号 - P.10 掲載
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