株式会社AnchorZ 代表取締役 徳山 真旭 氏
 × 弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 鮫島 正洋 氏

「自分自身を鍵にする」バックグラウンド認証®

鮫島:御社は「認証の概念を変える」というミッションを掲げ、2009年から技術開発を進めてきたそうですね。

徳山:はい。私たちが提唱しているのが、無意識の継続認証AIによってスマートフォンを通じて自分自身も電子鍵にすることができる認証。それが「バックグラウンド認証®」です。顔などの生体情報に加え、GPSやWi-Fi、端末の傾きや動作など、個人のクセや行動、生活環境等の情報をリアルタイムに解析して認証に利用します。

鮫島:従来の認証技術とどんな違いがあるのでしょうか。

徳山:従来はユーザー自身が操作を行って認証するものでしたが、当社の技術はスマホに内在するセンサーをフル活用し、継続的に本人確認を行います。ユーザーが意識することなく、常に安全な状態を維持できるのが大きな違いです。

 

ステーブルコインへの応用

鮫島:暗号資産、特にステーブルコインは、不正送金や認証の煩雑さが普及の妨げになっていると聞きます。

徳山:まさにそこで「自分自身を鍵にする」バックグラウンド認証®が役立ちます。盗まれた認証情報では突破できないため、不正利用を防ぎ、ユーザーは特別な操作なしに安全にステーブルコインを利用できます。

 

普及を阻む壁と知財戦略

鮫島:これほど有用な技術が、なぜまだ広く普及していないのでしょうか。

徳山:一番の壁は、既得権益の問題です。大企業はセキュリティや認証のシステムに莫大な費用をかけています。これを弊社の技術に乗り換える場合は、数十億や場合によってはもっと大きな収益を失う可能性がありますのでそう簡単には乗り換えていただけないです。もちろん、弊社の会社として信用度などにも問題があると思いますが、そもそもの参入障壁は非常に高いのです。

鮫島:さらに、大手企業に模倣されるリスクもありますよね。

徳山:そこは知財で守っています。既に42件の特許を取得済みで、68件目を出願中です。中小企業は数で勝負できませんから、1件1件の特許の質を高める、つまり「特許を10倍強くする」戦略で臨んでいます。

 

将来展望:「認証行為と鍵のいらないフルデジタル社会」へ

鮫島:現在、具体的に導入が進みつつある領域はありますか。

徳山:はい。PoC案件が進んでおり、その一つがATMでの「手ぶら認証」です。将来的にはコンビニの無人化や無人改札への応用も想定しています。英Arm社とのAIパートナー契約も提携が完了しており、スマートフォン内部のチップへ組込む計画も進めています。

鮫島:それが実現すれば、「スマホさえあれば鍵も身分証も不要」な社会になるわけですね。

徳山:そうです。2030年までに「認証行為不要で自分自身を鍵にする」アルゴリズムをスマホに標準搭載し、身分証明の概念そのものを変えたいと考えています。

 

収益モデルと成長戦略

鮫島:ビジネス面ではどのような戦略を描いていますか。

徳山:現在は年間ライセンス徴収型のビジネスで広げておりますが、次の段階では、認証機能を無料で標準化し、その上で電子決済プラットフォーム「DZ IAP®」の展開を行います。収益は徐々に決済手数料を軸としてものにシフトしていきます。3年以内に年間売上200億円を目指し、IPOも視野に入れています。

鮫島:技術も知財戦略も含め、社会インフラとしての可能性を強く感じました。まさに「自分自身を鍵にする」世界を切り開く挑戦ですね。

徳山:ありがとうございます。その実現に向け、引き続き挑戦を続けます。

 

―「THE INDEPENDENTS」2025年10月号 P.16より

※冊子掲載時点での情報です
 
 

 
株式会社AnchorZ 代表取締役 徳山 真旭 氏   <話し手>
株式会社AnchorZ 代表取締役 徳山 真旭 氏
(→ イベント登壇情報
 
生年月日:1965年3月29日
出身高校:大阪府立勝山高校

(株)ユナイテッド航空、(株)シャープシステムプロダクトを経て、1995年4月に(株)アーク情報システム企画販売部に入社。企画販売部事業部長に就任。
2007年1月 (株)トリニティーセキュリティーシステムズ取締役副社長に就任。
2009年4月 (株)AnchorZ設立、代表取締役就任。
 
株式会社AnchorZ
設 立:東京都台東区浅草橋3-22-9
資本金:15,845千円(株主:徳山真旭ほか)
事業内容:ソフトウェア製品の研究・開発・販売、「DZ認証」「DZCloud」「PMEngine」等の要素技術を活用したアプリや「CalPush」の販売、受託開発やITコンサル
従業員:9名


弁護士法人内田・鮫島法律事務所 代表弁護士 鮫島 正洋 氏    <聞き手>
弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 鮫島 正洋 氏
1963年1月8日生。神奈川県立横浜翠嵐高校卒業。
1985年3月東京工業大学金属工学科卒業。
1985年4月藤倉電線(株)(現・フジクラ)入社〜電線材料の開発等に従事。
1991年11月弁理士試験合格。1992年3月日本アイ・ビー・エム(株)〜知的財産マネジメントに従事。
1996年11月司法試験合格。1999年4月弁護士登録(51期)。
2004年7月内田・鮫島法律事務所開設〜現在に至る。