医療現場の苦痛を解決する、鹿児島大学発ベンチャー
iCUREX株式会社
代表取締役CEO 武井 孝行 氏
■ 医療機器分野で様々な資格を持つベンチャー
iCUREX株式会社は、鹿児島大学認定ベンチャーとして2023年に創業され、医療現場における深刻な課題に挑む研究開発型企業です。代表の武井孝行は、鹿児島大学大学院理工学研究科の教授でもあり、15年以上にわたる研究成果を事業の核としています。同社のミッションは「すべてのステークホルダーに、癒しと幸せを届ける」こと。その理念のもと、医療・薬事・研究開発・品質管理の専門家が結集し、第一種医療機器製造販売業(ヒト・動物)、医療機器製造業登録(登録番号:46BZ200021)、高度管理医療機器等販売業・貸与業・業許可(許可番号:指令 生衛薬 第753号) などの許認可を取得済みです。
■「医療用キトサンゲル」で蓄膿症の術後治療の痛みを解消
iCUREXが開発した「医療用キトサンゲル」は、慢性副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)の術後治療に関する課題解決に注力しています。従来、鼻腔内の創傷はガーゼ等の被覆材で保護されていましたが、形状が複雑な鼻腔に均一に適用するのは困難で、治癒ムラや激しい痛みを伴う抜去時のストレスなど、多くの問題が残されていました。この課題に対しカニやエビの甲殻から得られる天然物質であり止血、抗菌、創傷治癒促進といった性質を併せ持つ「キトサン」を活用し、世界で初めて医療用途として安全性の高いキトサンゲルの製造法を確立し、特許も取得。さらに、鼻腔内に注入しやすいよう微粒子化することで、創傷部に隙間なく充填でき、治癒ムラの解消と抜去時の痛み軽減を実現しました。動物実験やヒト臨床でもその有効性が確認されており、既存の創傷被覆材を大きく上回る性能を持っています。
まず耳鼻咽喉科領域(国内市場規模:約10億円)で実績を築いた後、床ずれ(褥瘡)や美容整形、口腔外科などの分野にも展開予定です。最終的には、2030年に3兆円規模とされる世界の創傷被覆材市場でのシェア獲得を視野に入れています。
■「コアシェルカプセル」を次の柱に
さらに、もう一つの中核技術である「コアシェルカプセル」も注目されています。これは、有効成分を100%の効率で封入し、壁厚の精密な制御が可能な独自技術で、化粧品、農薬、工業分野などでの応用が期待されています。iCUREXはこの技術をBtoBの受託製造モデルとして展開し、付加価値創出やコスト削減に貢献します。
現在、製品の上市に向けた量産体制と薬事申請準備を進めており、シリーズAラウンドで1.5億円の資金調達を計画中です。
コメンテーターより![]() |
iCUREX社では「傷を早くきれいに治すキトサンヒドロゲル」を開発しています。止血・抗菌・創傷治癒に優れるものの、水に溶けにくく扱いにくかったキトサンという物質のゲル化に成功し、適用範囲を大きく広げました。多様な医療現場での応用を可能とした画期的な製品です。鹿児島大学の教授でもある武井先生が代表取締役として立ち上げたベンチャーで、高い専門性と技術力を有しており、今後のさらなる発展が期待されます。 弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 高玉 峻介 氏 |