未来を変える超微細金属技術

3D Architech合同会社
R&D Fellow 工藤 朗 氏

 

■ カリフォルニア発、仙台で進化中

 3D Architechは、カリフォルニア工科大学発の技術系スタートアップ。日本(仙台)と米国(ボストン)を拠点に、革新的な金属3Dプリンティング技術でエネルギー分野に新たな価値を提供しています。

■ 世界初、10ミクロン級の金属構造を実現

 同社の技術「Gel-enabled metal manufacturing(GEMM)」は、ゲルを使った光造形と化学処理を組み合わせることで、超微細な金属構造体の製造を可能にしました。この革新は、科学誌『Nature』にも掲載され、国際的に注目を集めています。
Gel-enabled metal manufacturing(GEMM)による金属構造体の製造Nature誌へ掲載

■ 冷却と水素、2つの課題に挑む

 現在注力している分野は、データセンター向けの高性能冷却プレートと、水素製造装置のガス拡散層(GDL)。前者は冷却に必要な電力を最大50%削減、後者は水素生産効率を約30%向上させ、いずれも持続可能な社会への貢献が期待されます。

グローバル精鋭チームが支える技術力

 CEOの成田 海 博士(Caltech PhD)は、MITでも研究経験を持ち、MITテクノロジーレビュー「Under 35 Japan」にも選出された技術者。社内にはMITや東北大などの博士号取得者が多数在籍。さらに、NVIDIA元冷却専門家やZ-corp(3D Systemsにより買収)共同創業者など、世界的な専門家がアドバイザーとして参画しています。

■ 巨大市場へ、仙台から世界へ

 現在、15件以上の共同研究やPoCプロジェクトを実施中。仙台を生産拠点とし、冷却・水素市場(総額1.6兆ドル)への参入を進めています。将来的には、設計・製造技術を他社に提供するライセンスビジネスも見据えています。

 

 
コメンテーターより
東北大学ベンチャーパートナーズ株式会社 投資部長 長浜 勉 氏
 

 3D Architech社はゲルを用いた独自の金属微細加工技術で、10μm精度の複雑な造形物
を作れるだけではなく、用途に合わせて最適なデザインサービスを提供出来る点が強みで
す。この技術をマーケットニーズとマッチ出来るかが重要なポイントであり、データセンター
を効率的に冷却するデバイスや水素製造の効率を上げるためのガス拡散層への展開を目
指されています。
 その実現性を上げるために、社内メンバーだけではなく、多様な専門性を有するAdvisor
Bordが支えている事から、今後の発展を期待します。

東北大学ベンチャーパートナーズ株式会社 投資部長 長浜 勉 氏



※「The INDEPENDENTS」2025年8月号 - P.10 掲載
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