⾹りのデジタルストリーミングサービス
Horizon株式会社 代表取締役 ニェンツァオ・ツァイ 氏
■ パーソナライズされた嗅覚体験を世界に届ける
当社は、「嗅覚」に着目し、香りをデジタル配信するプラットフォーム「Scent Store」を運営しています。例えば、「カレーの匂いがしたらカレーにしようと思う」「ホテルのいい香りに安心感を覚える」など、香りは人間の感情や判断に大きな影響を与えます。さらに個々人によって好嫌を違う嗅覚を、誰もが⾃由に⾹りを選び、作れるサービスを世界の人々に提供するサービスを開発しています。
■ 100万種類の香りを合成
「スマートディフューザー」という専用デバイスに香りのインクカートリッジが内蔵されており、アプリからダウンロードした香りのデータを受信すると、その場で香りを合成して放出します。日本香堂が監修した11種類の基本香を組み合わせることで、理論上100万種類以上の香りを表現することが可能です。また、アース製薬と提携した消臭剤も内蔵されており、香りのクオリティ向上に努めています。
ハードウェア販売とコンテンツ販売の2段階構造です。スマートディフューザー本体と香りのインクカートリッジの販売に加え、香りのサブスクリプションや単品販売による収益を見込んでいます。
市場戦略としては、まずBtoBでホテルやエステサロンを中心に展開し、ブランドイメージを確立した後、BtoCへと拡大する計画です。すでにヒルトンホテルやホテルロイヤルクラシックへの導入が決定しています。ホテル業界では、客室ごとの香りの差別化や、ゲストが再生した香りのデータを記録して次回宿泊時に提供するなど、ホスピタリティの向上に活用されています。
■ NASDAQ上場を目指す
2023年のテスト販売では、avexとの音楽と香りのコラボをはじめ、ラジオ、ゲーム、メタバース関連などの様々な企業とのパートナーシップを構築しました。また、デジタル大臣賞の受賞や、J-StarX Silicon Valley Extended Programへの選出など、多くの実績を重ねています。2025年には日本とインドネシアでの本格販売を開始し、2027年に米国展開、2028年にNASDAQ上場というロードマップを描いています。香りのデジタル配信市場の可能性は大きく、中期的には高級ホテルやサロン、高級車向けに展開し、長期的にはエンターテインメントや広告分野との連携も視野に入れています。
コメンテーターより![]() |
Horizon様は、世界的な香りのデジタル配信プラットフォームを目指しておられます。既に特許権もお持ちとのことですが、この種のデータの流通に特徴があるビジネスモデルにおいては、どのような側面を切り出して権利化するかという点が「使える特許」となるか否かの分水嶺となる可能性があります。例えば、UIの要素や使い勝手の良い機能などを構成要件に取り込むことで、他者が迂回しにくい特許とすることができないか検討することも一案です。 |
※「The INDEPENDENTS」2025年4月号 - P.10 掲載