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「出向起業制度による大企業スタートアップとイノベーション」

出向起業スピンアウトキャピタル 代表パートナー 奥山 恵太 氏
 × 弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 鮫島 正洋 氏


鮫島:大企業に眠る膨大な技術資産を、カーブアウトを通じてイノベーションに活用できないかという議論が経済産業省内で行われています。

奥山:日本では、ヒト・モノ・カネのリソースは、大企業に集中する傾向にあります。しかし「本業とのシナジーが薄い」「推定売上高規模が3~5年で数百億円までに届かない」「不確実性が高い」等々、大企業の場合は新規事業開発の重要性は認識していても、経営リソースの配分は既存事業が優先され、新規事業を断念するケースが見受けられます。そこで、私は前職の経済産業省時代に、新規事業開発に高い熱量を持つ大企業等社員による資本独立性のあるスタートアップの起業を後押しするために、費用の一部を補助する「出向起業」補助制度を企画しました。これにより大企業の社員が、辞職せずに自ら起業したスタートアップに出向して新規事業開発に専念できます。

鮫島:イノベーションを追求する組織には、意思決定のスピードと経営の自由度が必要になります。従って、大企業に従属する子会社や関係会社ではなく、新規事業を切り出す「カーブアウト」や「スピンアウト」方式が適切だと考えます。大企業が保有する知財等を提供する事で経営リソースの有効活用も進みます。

奥山:「出向起業」補助金では、要件として、出向元である大企業の保有率は20%未満と定められています。一方で不足する資金を出資する役割は、外部VCが担うことを想定しており、例えば当方が運営する出向起業スピンアウトキャピタルでは、プレシード・シード期に1社3,000万円前後の投資を行っています。

鮫島:大企業側のメリットとしては、新規事業創出の開発だけでなく、経営者的視点を持つ社員の成長といった効果が期待されますね。

奥山:新規事業に前向きな社風が採用市場でも高く評価される例も増えています。ただ、出向起業を通じて、優秀な人材が既存事業を離れ、新規事業に関わるとなると、大企業内での事前調整が必要になりますところ、その調整もサポートしております。

鮫島:日本の大企業、特に製造業の量産技術は世界的に最高技術レベルにあると思います。しかし多額の研究開発投資を行っているにも関わらず、そのうち事業化されるのは100件に1~2件にも満たないと言われています。イノベーションの推進の鍵は、大企業の風土改革と経営者育成となると思います。

 

―「THE INDEPENDENTS」2024年4月号 P.10より

※冊子掲載時点での情報です
 
 

 
  <話し手>
出向起業スピンアウトキャピタル 代表パートナー 奥山 恵太 氏
(→ イベント登壇情報

1986年生まれ。出身高校:神奈川県立横浜翠嵐高校
東京大学工学部、東京大学大学院工学系研究科卒。カリフォルニア大学サンディエゴ校MBA。
2010年経済産業省入省後、2019年「出向起業」補助制度を自ら企画し、大企業等社員による資本独立性のあるスタートアップの起業を後押し。大企業内での出向等の意思決定に係る調整も、幅広に支援。2022年7月に経済産業省退職。2022年9月、出向起業スピンアウトキャピタル設立・運用開始。ファンド創設後に既に約150件の出向起業相談を受け4社に投資実行し、他の相談案件についても水面下で出向起業スタートアップ化調整をサポート中。



出向起業スピンアウトキャピタル 1号投資事業有限責任組合
設 立 :2022年9月2日
所在地 :東京都中央区日本橋茅場町1-8-1
事業内容:スタートアップへのシード投資・経営支援・起業準備支援等

 



   <聞き手>
弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 鮫島 正洋 氏
1963年1月8日生。神奈川県立横浜翠嵐高校卒業。
1985年3月東京工業大学金属工学科卒業。
1985年4月藤倉電線(株)(現・フジクラ)入社〜電線材料の開発等に従事。
1991年11月弁理士試験合格。1992年3月日本アイ・ビー・エム(株)〜知的財産マネジメントに従事。
1996年11月司法試験合格。1999年4月弁護士登録(51期)。
2004年7月内田・鮫島法律事務所開設〜現在に至る。

 

出向起業スピンアウトキャピタル

住所
東京都中央区日本橋茅場町1-8-1
代表者
代表 奥山 恵太
設立
2022年9月2日
資本金
従業員数
事業内容
スタートアップへのシード投資・経営支援・起業準備支援等
URL
https://spinout.vc/