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「存在感増すTPM市場」

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【國本 行彦】
1960年8月21日生。
東京都立志村高校卒業。
1984年早稲田大学法学部卒業後、日本合同ファイナンス(現・JAFCO)入社。
2006年1月5日(株)インディペンデンツ(現(株)Kips)設立、代表取締役就任。
2015年11月9日 特定非営利活動法人インデペンデンツクラブ 代表理事就任(現理事)
2020年6月 (株)ラクス社外取締役就任

今年のIPOは11月21日承認ベースで126 社、最終的には126社になると予想されています。一方でTPM(東京プロ市場)新規上場数も10月末時点で46社と昨年41社を既に上回っています。そのうち35社(76%)は地方企業であり、本則市場に比べ上場を身近に感じる経営者が増えています。

注目すべき点は、TPM上場に伴う資金調達事例が2社という点です。10月8日TPM上場の㈱五健堂は特定取得勧誘による増資で940百万円調達しています。12月22日にTPM上場予定のエヴィクサー(株)も上場時に480百万円の資金調達を計画しています。これでTPM上場時のFS事例5社目となります。そしてTPM市場から他市場へのステップアップ上場では、9月13日に㈱Geolocation Technology、11月11日㈱フロンティアが福証Qボード市場にIPOし、累計5社となりました。

TPMに対して前向きなJーAdviser証券会社も増え、株式取扱機能を持たないJ-Adviserとの証券業務での協力関係も進みつつあります。ただTPM市場には一般投資家は参加できず、売買は特定投資家に限られており、市場の厚みが広がらない点に課題があります。さらにTPM新規上場までのコストは20から40百万円と本則上場に比べて低く抑えられますが、年間維持コストは15から25百万円かかります。未上場株式市場である株主コミュニティは株式投資型クラウドファンディング大手の日本クラウドキャピタルの参入が決まり、一般投資家の参加増加に伴う発行及び流通市場の活性化が予想されます。

TPM上場のメリットは上場企業としてのステイタス取得にありますが、資金調達機能の充実等によって、地方企業の成長支援に繋がる市場になる事を期待しています。


※「THE INDEPENDENTS」2021年12月号 - p23より