株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングス 代表取締役社長 吉村 元久氏
食品業界の統合戦略
-この環境が良くない時期に、あえて株式上場を目指すのはなぜでしょうか?オーナー経営に比べて、自由な意思決定に制約が多くなりスピードが遅くなります。
吉村:自分は起業家というより事業プロデューサーです。我々の事業目的は中小企業の支援、活性化です。創業当初はコンサル業務でしたが、昨年8月に持株会社に移行してからは食品業界に事業特化、グループ各社で製造から開発、営業まで行っています。中小の食品会社は良い商品を持っていても一社単独では営業マンも雇えず大手業者に卸すだけです。我々は、中小食品企業に資本を注入し、工場を再稼動させ、事業所を統廃合し、全国津々浦々まで営業し商品を販売します。私自身は金融業界出身であり、その役割は食品業界のプロであるグループ各社が働きやすい環境を作る事です。株式上場は、グループ全員が同じ目標に向かい、お互いにハッピーになるために必要な事だから目指すのです。
-世界中から金融エリートが集まるペンシルバニア大学ウォートン校を卒業されています。海外留学して、金融業界を見る眼が変わりましたか?
吉村:同級生は帰国後すぐに、外資系証券会社やマッキンゼーなどの第一線でバリバリ働いていました。日本はまだ年功序列の時代でしたが、1997年に山一證券が倒産して金融業界は人材流動化が始まりました。私は大和証券で債権流動化スキームなどを開発していましたが、もっと自分の知識を活かしたいと思いモルガン・スタンレーに転職しました。そこは商品開発と顧客開拓が自分の責任でできる世界でした。当時はABS(資産担保証券)やREIT(不動産証券化)、投資法人(SPC)上場などの商品企画開発で金融業界は急速に成長しました。ただ自分は利益追求だけの世界には満足できなくなりました。
-その後、投資会社から派遣される社長としてマネジメントに関わるようになりました。外資系証券会社を見切り、いきなり中小企業の現場に入られ戸惑った点が多かったと思いますが。
吉村:とにかく中小企業の経営はとても難しいという事を身に沁みて学びました。競争相手はオーナー系中小企業でしたが、その圧倒的な踏ん張り力には驚かされました。商売を取りに行く時の根性は、私など雇われ社長とは半端なく違います。(人材面でも)社員とのコミュニケーションを取るのに苦労しました。外から来た社長に対して、古株から若手まで敵対的で雰囲気は最悪でした。もちろん苦労は覚悟していたのですが、正直、夜中に目覚めることがしょっちゅうありました(笑)。当時、その会社はIPOを目指していましたが、私から見ると前任の社長は「お金で人は動く」というやり方でした。会社は簡単に変わりません。上場して儲けたいだけの株主のために社員は頑張りませんでした。
-その経験を踏まえ、当社を設立されました。事業スタイルやコンセプトを教えてください。
吉村:我々は中小企業と一緒に同じ船に乗り、途中で逃げないと関係者にコミットします。株式売却益が目的ではないので、社員も安心して一緒に船を漕いでくれます。株主が腰を据えて経営に取り組む姿勢を見せないと会社全体は変わりませんし売上も増えません。再生の受け皿であるファンド会社や、経営サポートに徹するベンチャーキャピタルとは役割分担は違いますが、金融的発想だけで中小企業支援はうまくいきません。
何十年も事業を行ってきた中小企業には実にいろいろな強みがあります。例えば食品メーカーは一般的に製造は強いのですが、営業、ファイナンス、管理面、企画面にはまだまだ改善の余地があります。そこでお互いが良い点を補完し合って大きくなるために統合していくのです。中小の食品会社が統合すれば、単独では難しい海外進出もできるようになると思います。
-グループ売上91億円ですが事業の中核は何ですか?
吉村:販売会社であるミズホは給食業者や弁当工場へのディストリビューション機能を持っています。製造会社である楽陽食品、白石興産、サッポロ巻本舗、サンキフーズはシューマイなどチルド食品、乾麺、おにぎり・惣菜、冷凍やレトルト食品も製造し販売しています。今後は国内販売部門の強化が大事ですが、良い商品を作れる力が一番重要です。ブランドを持っていれば規模は小さくとも海外で売れます。


