【連載】始めはひとりから
5.芯(コア)
「芯が強い」という言葉があります。人や構造に対して、非常にいい意味で使われています。企業ビジネスにおいても、本当に肝に銘ずる必要のある言葉だと思います。格好よく言えば、企業の「生存領域(企業ドメイン)」を明確にし、「その領域における強み(コアコンピタンス)」を徹底的に追求し続けること、ですね。
つまり、なによりも「ぶれない」こと。
「経営者」という芯がしっかりしていて、ぶれない、という会社はやはり強いと思います。
エルゴブレインズを上場まで持っていくとき「顧客データベースに基づく電子メール広告配信」というコアドメインに徹底的にこだわり、その領域にすべての資源、ノウハウを集中してぶれずに戦い抜くことができました。これが上場に至った勝因の中で最も大きな比重を占める要素だと思います。
上場後、程なくして村上ファンドからM&Aされかかりました。幸いにしてDAC(JQ:4281)をホワイトナイトに敵対的買収からは逃れることができました。しかし、大株主として残っていた村上ファンド側からは「短期的利益の向上」を強く求められました。コアである電子メール広告はすでに安定成長期に入っていて、急激な伸びは期待できず、人材の採用やコンサルの活用等でいくつかの新規事業を展開しました。が、やはり付け焼刃的では短期的利益は上がらず、株価も低迷しました。
その過程でいくつか骨身に沁みる、貴重な教訓を学ぶことができました。教訓その1は、他人の声を聞き活かすことと、惑わされることの差は紙一重である、ということです。少しでも焦って脇が甘くなると、そこにつけこんでくる人間の多さ、その嗅覚の鋭さは本当に驚くほどです。後日談的なことを言えば、そういった人達はエルゴの経営から身を引いた途端、一瞬にしていなくなってしまいました(ありがたいことに!)。
その時に導入展開した新規事業の中には生き残り、利益を産んでいるものがあります。それらは基本的にコア事業から「派生」した事業であることが特徴です。これが教訓その2。そして教訓その3は、新規事業が利益化するには3年はかかる、ということです(石の上にも3年!)。やはり企業経営にはコアへのこだわりと、ぶれない想いが必要、ということですね。
最後に。その後の村上ファンドの失墜も、村上さんが自らの寄って立つドメインを見失ったからだと、個人的に思っている次第です。
THE INDEPENDENTS 2010年11月号より


