【コラム】ベンチャー最前線 第8回
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社会起業家が大ブーム、バブルの気配?
市民がチェック、健全な発展を促せ
事業を通じて、貧困や福祉、環境など社会の抱える課題を解決する「社会起業家」がいまやすっかりブームの様相を呈している。体感としてはIT・ネットベンチャーがもてはやされた2000年前後に近い感じだ。日本ではIT・ネットバブルが崩壊した後から徐々に活動が目立ち始めたが、現在では、「社会起業家バブル」は破裂しそうなまでに膨らんでいる。当時から取材してきた目にはどうしてもそう見えて仕方がない。
自他ともに認める30代半ばの社会起業家が嘆いている。「大学生が『社会起業家になりたい』と相談に来るんですよ」。どうしてそれで嘆くのかと尋ねると、こう答えが返ってきた。「本来、社会起業家は本人が自称するものではありません。何をしたいか、何を変革したいかがポイントです。事業内容が評価され、私利私欲におぼれていないことが確認された起業家なり経営者について、周囲が社会起業家だと認めるんです」と説明してくれた。「しかも、得てして社会起業家になりたいという学生は、ほかの道がなかったから社会起業家でも目指すか、という人が多いように思える」とどこまでも手厳しい。
にもかかわらず、「今年は社会起業家元年だ」そうである。昨年のリーマン・ショック以降の金融危機、経済の低迷で、従来の資本主義へのアンチテーゼとして、非営利を掲げる社会起業家への期待が高まっている。
また、自由民主党から民主党へ政権交代し、これまで行政が手掛けてきた事業が見直され、社会起業家がそれを補う新たな担い手として注目されてもいるという説明もたびたび聞かれる。
象徴的なイベントもあった。今年9月、世界経済フォーラム(WEF、いわゆるダボス会議)は東京事務所を開いた。それに合わせて、開かれたのは、社会起業家を表彰する第1回SEOY(ソーシャル・アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー)日本プログラム。日本代表に選ばれたのは、マイクロファイナンス・インターナショナル・コーポレーション(MFIC)の枋迫篤昌氏だった。2003年からワシントンで、世界中から出稼ぎに来ている人たちに、低料金での送金サービスを提供している。
SEOY日本プログラムは、「日本における社会起業家や、社会システムの変革に挑戦するリーダーによる先駆的活動に光をあてることで、これら先駆者の活動を後押しするとともに、 次世代に対してロール・モデルを提示せんとする」もの。栃迫氏は来年1月のダボス会議に招待され、世界各国の社会起業家とともに表彰される。
社会起業家先進国とされる米国からは多くの先人がさまざまな財団などにより、招待されている。中でも、今年最も注目を集めた大物は、KiVa(キバ)の創立者であるマット・フラネリー氏。
KiVaは、発展途上国で起業を志したり、小規模事業を営んだりしている貧困層の人たちに、世界中の個人が融資できるインターネットのシステムを運営している非営利組織だ。来日中多数開かれた講演会は常に満席だった。
実は最近、そのKiVaにちょっとした“混乱”があった。資金の届け方について、標榜していた仕組みと実態が異なるのではないかという指摘だ。一部マスコミでも取り上げられた。KiVaでは指摘を受け、ホームページなどの表現を見直した
ネット株バブルは、市場の各種規制がありながら、一部の悪質なベンチャー企業の暴走を許したことが崩壊のきっかけの一つになった。社会起業家はその目的自体は正しく、共感を呼ぶ場合が多い。一方で、活動が多岐にわたるため、何らかの規則で網をかけることは難しい。だからこそ、市民が厳しい目で見つめ、チェックすることが、社会起業家自身の健全な成長を促すためにも必要だろう。
