【コラム】ベンチャーコミュニティを巡って
第13回 歴史浅い日本のVC投資
既に書いたように日本で最初のベンチャーキャピタル(VC)会社が誕生したのは1972年、それから数えると日本のVC投資の歴史は約40年となる。しかし、そのうちの大半の期間において、本来のVC投資は実は行われていないといってよい。
本来的なベンチャーキャピタル(VC)とは、ベンチャーと呼ばれる特殊な中小企業の創業後間もない時期、すなわち、このコラムでも説明したように、先行投資によって累積損益の赤字が続き、ハイリスク故に資金供給者が見当たらない「死の谷」と呼ばれる、Jカーブが水面下にある時期に供給される(投資される)リスクマネーを指す。ところが日本では、VC会社といわれる会社は1972年に設立されたにもかかわらず、それらのVC会社は長らく創業後間もない、ハイリスクな時期への資金供給(投資)をほとんど行ってはこなかった。1990年代末近くまで、日本のVC会社の主たる投資対象は、もっぱらレーターステージのベンチャー、というよりニッチな市場で高いシェアを獲得し高収益を誇るような中堅企業であった。
当時日本のVC投資の対象がレーターステージのベンチャー、ないしは中堅企業であった最大の理由は、日本の株式公開の基準が厳しく、平均すると創業から株式公開まで30年掛かっていたことにある。現状もそうだが、日本のVC投資の多くは、投資先企業を株式公開させ、その後流通市場で売却することによって資金回収している。そのため、通常10年という期限のあるVCファンド資金を使って投資をする場合、株式公開までの期間が30年掛かるとなると創業後間もない時期の投資では資金回収が難しくなる。勿論、投資資金がVC会社自身が会社として調達した資金(日本のVC業界ではそれを本体資金と呼ぶ)であれば期限を気にすることはないが、既に1982年には日本でもVCファンドが組成されており、VC投資の中心はファンド資金になっていた。
日本のVC投資の対象が、創業後間もないスタートアップやアーリーステージにシフトし始めたのは、元の店頭市場であるジャスダックの公開基準の緩和や東証マザーズなど新興市場創設の準備が始まった1990年代後半以降ことであった。そうした株式市場の変革によって、創業から株式公開までの大幅な時間短縮が想定されたからだといってよい。
考えてみると、日本での本格的なベンチャー企業の輩出、ベンチャー企業家の輩出も、IT関連を中心にその頃からだったと言えないことはない。極端に言えば、VC投資にせよ、ベンチャー企業にせよ、要は真の日本のベンチャーコミュニティの歴史は高々10年ちょっといえるのではなかろうか。
問題はこれからである。昨年来の環境悪化を契機として、改めて日本のベンチャーコミュニティのあり方について関係者がこぞって議論し、日本でのベンチャーコミュニティの本格的な確立に向けて適切な方策を打ち出していく必要があろう。

