THE INDEPENDENTS

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【コラム】ベンチャーコミュニティを巡って

國學院大学 秦 信行氏國學院大学 秦 信行





第12回 科学技術とイノベーション

先般、内閣府の総合科学技術会議の基本政策専門調査会に専門委員として参加した。今年度平成21年度から始まる第4期の基本計画検討のための最初の調査会であったため、顔合わせ的な意味も含めて、第4期の論点整理などの後各委員全員から簡単なコメントを求められた。

配布された資料や説明を聞いて筆者は、科学技術の研究・発展とイノベーションは同じことではない、この2つは別々にきちんと分けて議論すべきだということを申し上げた。

日本語でイノベーションは通常「技術革新」と訳される。このことが誤解を生んでいる一つの原因ともいえようが、イノベーションと言った場合、科学的な発見や基礎的な技術の発明・開発を指すだけではない。それよりむしろ基礎的な科学技術やアイデアに基づいた新しい製品・サービスの開発や新事業の開発、及びそれによって社会に対した新しい価値を創造する活動を指すといったほうがよい。

経済学の分野でイノベーションの経済発展における重要性を説いたのはシュンペーターであるが、彼が生産要素の新結合、すなわちイノベーションと呼んでいるものの中には、新しい製品やサービスだけなく新しい生産方法や販路開拓なども含まれている。

日本は、現状でも研究開発費は世界的に見て遜色ないし、特許の出願件数も多い。2000年以降の自然科学分野のノーベル賞受賞者もかなりの数にのぼる。そうであるにもかかわらず、残念ながら日本の新事業、新産業創出が上手くいっているとは言いがたい。大学は科学技術の基礎研究の宝庫であろうから、そこから生まれてきた日本の大学発ベンチャーは新しい事業を創出し、社会に多くの価値を生み出してくれると期待されたが実際は違っているように思われる。

ノーベル賞に繋がるような新しい科学的原理や方法の発見、基礎的技術の発明・開発が重要であることは論を待たない。従って日本において、今後更なる科学技術の振興に向けた環境整備が必要であることも確かだが、その事が直ちに新事業、新産業の創生、すなわちイノベーションに結びつくかとなると必ずしもそうとは言えない。筆者が科学技術発展のための政策とイノベーション政策とは別物だと言った意味はそこにある。

新しい科学技術の知見や技術を新しいイノベーションに繋げていくためには、科学や技術を理解すると同時に、産業動向や市場、人々のニーズも分かった上で、技術を活用出来る事業や産業分野を的確に決定し、市場にマッチする形に技術の修正や他の技術との組合せを考えることが出来る人材が必要といえよう。米国のイノベーションのあり様をみると、実はその役割の一端をベンチャーキャピタリストが担っている。

日本でもそうした役割を担える人材がベンチャーキャピタル業界に他産業から多数流入してくれることを望みたい。

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