THE INDEPENDENTS

/

【コラム】ベンチャー最前線 第6回


上場会見する河邊拓己キャンバス社長(中央)

バイオベンチャー、上場相次ぐ
キャンバスやデ・ウエスタン・セラピテクス研究所

新しい薬品や治療技術を研究開発するバイオベンチャーが、剣が峰に立っている。「大学発ベンチャー1000社構想」などという政府の政策誘導もあり、多数の会社が設立されたが、研究開発が思うように進展していなかったり、調達した資金が底をついたりしているところもある。新規上場が激減する中、9月17日に、抗がん剤開発のキャンバスが東京証券取引所マザーズ市場に上場したが、バイオベンチャーを取り巻く全体状況が必ずしも改善しているわけではない。

上場初日、キャンバス株は人気化し、売買が成立しなかった。買い気配は公開価格の2倍以上となる4530円まで切り上がった。上場会見でキャンバスの河邊拓己社長は、「市場でどのように考えておられるかは、弊社には計り知れないことですが、責任をさらに痛感し、身の引き締まる思いです」と話した。業容に関する投資家の理解を深めるため、同日配布した決算短信には、薬品の開発状況を説明する4ページの資料を添付した。

先立つ15日には、プロテインキナーゼ阻害剤の技術で、抗血小板剤や緑内障治療剤、抗がん剤などを開発しているデ・ウエスタン・セラピテクス研究所がジャスダック証券取引所NEO市場に上場承認された。

現在、両社以外にも数社のバイオベンチャーが上場をうかがっているという。今年のIPO社数が20社を超える程度にとどまりそうとの見方もあるなか、ここに来てバイオ関連ベンチャーの上場承認が続くのはなぜか。

ある証券会社の公開引受担当者は、「やはり『テラ効果』でしょう」と話す。3月に上場した、樹状細胞ワクチンによるがん治療を手がけるテラの株価は17日終値で1600円と公開価格の5倍以上で推移している。

2007年以降に新規上場した主なバイオベンチャーの公開価格と現在の株価を比較すると、そのほとんどは公開価格を下回っている。(注:上回っているナノキャリアも、同社が参加する研究プロジェクトが9月4日に国の支援対象として発表されるまでは下回っていた)それだけに、テラの堅調な株価推移のインパクトは大きく、投資家のバイオ銘柄への期待を再び高めたのである。

テラは増収増益の勢いの中で上場したが、これから上場を目指すベンチャーにはむしろ、追い込まれた末という事情も見え隠れする。

あるベンチャーキャピタリストは、「うちの投資先のバイオベンチャーも現在、上場審査中だが、公募・売り出し価格は最後の増資の株価を大幅に下回る。一方で、ベンチャーキャピタル(VC)で追加出資できるところはない。上場が認められるか、会社をたたむか。瀬戸際ですよ」と打ち明ける。

テラは増収増益の勢いの中で上場したが、これから上場を目指すベンチャーにはむしろ、追い込まれた末という事情も見え隠れする。

キャンバスの河邊社長は会見で、上場の目的について、「臨床試験に必要な莫大な資金を得ること。上場以外の手段で調達するのが事実上難しい」と説明した。可能ならば、VCから資金調達すべき段階なのに、公開市場で資金調達せざるを得ないとも受け取れる。

現在、金融危機の影響もあり、VC資金は滞り、未上場のバイオベンチャーに対する適切なリスクマネーの流れはほとんど途絶えている。今一度、バイオベンチャー各社の実態を見直し、価値ある会社に必要な資金が届く仕組みを整える必要がある。

TOPに戻る