THE INDEPENDENTS

/

【コラム】ベンチャーコミュニティを巡って

國學院大学 秦 信行氏國學院大学 秦 信行





第11回 企業家、VC、出資者の共同事業としてのベンチャー

ある米国でのインタビューで、スタートアップ・アーリーステージのベンチャーへの投資を専門に行っているベンチャーキャピタリストが、「ベンチャー投資とは何か」という問いに対して、「ベンチャー投資とは有望なベンチャーを探し出すことではなく、価値のあるベンチャーを作ることなのだ」と答えていた。つまり、ベンチャー投資というのは、資金運用のための他の投資と異なり、リターンの大きそうな投資対象を探し出すことが重要なのではなく、企業家と一緒になって事業を成功裡に導き価値あるベンチャーを作り出すことが重要なのだと言うわけである。従って、ベンチャーキャピタリストの役割は、例えば投資信託のファンドマネジャーなどとは本質的に異なるのだと。

最近日本のベンチャーキャピタル(以下VC)の歴史を調べるべく、日本で最初のVC会社である京都エンタープライズ・ディベロップメント(以下KED)創設に関係された方にお会いしお話を伺った。KEDは京都の経済同友会で企画された会社で数多くの京都の会社が共同出資をしたが、残念ならが数年で会社は解散となった。設立に当っては、当時米国のベンチャー輩出の中心であったボストンに視察団を送り込み、米国最初のVCといわれるAmerican Research Developmentも訪問しているが、KEDの経営は上手く行かなかった。

お話を伺ったその方は、当初から組織の資金ではなく、意思の明確な個人の資金を基に投資活動することを主張し、意思決定のスピードを速め責任の所在を明確にする上で合議制に反対されていたようだが、実際のKEDはほぼその逆の体制になった。加えて、審査が財務面に偏ると同時に慎重になり、またベンチャー側も技術を盗まれることを恐れてKEDからの資金受入れに積極的でなかったといったお話もお聞きした。

KEDが上手くいかなかったことの原因は幾つか挙げられようが、先の話にもあるように、KEDのVC投資体制、仕組みに問題があったことも確かであろう。そしてそれは、依然として現在でも、日本のベンチャー投資、なかでも創業後間もないステージのベンチャーへの投資のあり方の問題でもあるように思う。

最初に書いた米国のキャピタリストが言っているように、キャピタリストはベンチャーの企業家と一緒になって共同で新しい事業を作っていこうという意識と意欲を強く持つ必要がある。また、そのためには資金の出し手、ファンドの出資者もキャピタリストを信頼し、彼の活動と使命を理解しなければならない。逆に言えば、キャピタリストは自分を信頼し、ベンチャー支援活動を理解し積極的に応援してくれる出資者を探す必要がある。

一方ベンチャー企業家は、事業拡大のための資金の供給を受けると同時に、自分の不足する部分を補ってくれて信頼できるVC、キャピタリストを選び、彼らを内部者として受け入れ一緒になって事業を作っていく意識をもってもらう必要があろう。

ベンチャーは、企業家、VC、出資者三者の共同事業であるといっていいように思う。

TOPに戻る