THE INDEPENDENTS

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【コラム】ベンチャー最前線 第5回

産業革新機構

産業革新機構の発足式後、写真撮影に応じる能見公一社長(左から2人目)と朝倉陽保COO(左端)ら

 

 

産業革新機構が発足
ベンチャー企業やVCへの影響は?
積極的な働きかけで資金と支援を引き出せ

 日本の新産業を育成することを目的に、産業革新機構(東京・千代田)が7月27日、政府主導で発足した。「大学や大企業などが保有する優れた技術や人材を再編し、次世代の国富を生み出す産業を作り出す」という壮大な構想の司令塔である。金融危機の荒波で資金的に苦境に立つベンチャー企業やベンチャーキャピタル(VC)は、機構とどのような関係を取り結べるのだろうか。

 機構には政府が820億円出資したほか、パナソニックや日立製作所、GEジャパン、三菱東京UFJ銀行、日本政策投資銀行など16法人が5~10億円ずつ出資に応じた。出資額は合計で905億円になる。政府保証を使って金融機関から8000億円の資金を引き出せるため、9000億円規模の投資が可能だ。  

 社長に就任したのは能見公一氏。農林中央金庫専務理事や農林中金全共連アセットマネジメント社長、あおぞら銀行会長兼会長兼最高経営責任者(CEO)を歴任した。日本のプライベートエクイティファンドへの出資の先駆け的存在だ。  

 実際の投資や事業育成を担う専務取締役最高執行責任者(COO)には、情報技術(IT)分野のベンチャー・グロース投資での経験が豊富な元カーライル・グループマネージングディレクターの朝倉陽保氏を据えた。三菱商事からVCのエイパックス・グロービース・パートナーズ(現グロービス・キャピタル・パートナーズ)を経てカーライルに加わり、イー・アクセスやウィルコムなどの成長を支援した。  

 7月27日の記者会見で朝倉氏は、支援対象分野として、環境・エネルギー、ライフサイエンス、エレクトロニクス、機械・部品、高機能素材の5分野を挙げた。ベンチャーについては、「保有する技術の有効活用を促進する」「大企業との協働を念頭に新たな枠組みを構築する」などと言及した。  

 まだ採用途中だが、テクノロジー分野に強いベンチャーキャピタリストが複数加わっている。投資判断を最終決定する産業革新委員会のメンバーには、ベンチャー企業やVCの事情に詳しい森・濱田松本法律事務所の棚橋元・弁護士も参加している。ベンチャー支援への関心はあるように思われる。

 ただ、具体的にはどういう形になるのか、特にVCファンドへの出資があるのかどうかは不透明。より正確に言うと、機構の内部でもまだ流動的なようだ。「自分たちだけではハンズオンできないから、VCのファンドに出資して連携する」「中小企業基盤整備機構とは役割が違う。ファンドへの出資はない」「シリーズBなどの追加出資が難しい時にVCに代わって出資する形になる」など、さまざまな声がある。

 そもそもベンチャーへの意識は低いとの指摘もある。「日産自動車の電気自動車をカーブアウトするとか、そういうでかいことがやりたいようだ」と耳打ちする官僚もいる。  

 産業革新機構は組織や制度の設計で、産業再生機構をお手本にした。ただ負債を切り離すなどバランスシートの立て直しが主だった「再生」に比べて、成長産業の育成の方がより難しい。また、9000億円の資金に対して実際の投資にかかわるメンバーは30人程度とみられ、人員不足は否めない。機構側にとっても、経験とノウハウを持つVCとの連携の重要性は高いはずだ。

 ベンチャーやVCの方から積極的にアイデアを提案し、さまざまな形で連携や資金を引き出す工夫が必要だろう。

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