【コラム】ベンチャーコミュニティを巡って
第8回 クリーンテックベンチャー
去る6月9日、私が部会長を務める日本ベンチャー学会ベンチャーキャピタル部会とインディペンデンツクラブ協賛の勉強会を開かせて戴いた。テーマは「クリーンテックベンチャーと政策」、講師は現内閣府参事官の安藤晴彦氏にお願いした。
安藤さんとは1990年代後半中小企業庁におられた時からの付き合いになる。中小企業庁時代、安藤さんは現中小企業基盤整備事業団のVCファンド出資事業や日本版SBIR(Small Business Innovation Research)改革など様々なベンチャー支援策に係られた。その後の経済産業研究所時代には、「モジュール化」をテーマに研究を深められ、大著Design Rulesを翻訳された(『デザイン・ルール』(東洋経済新報社))。その他スタンフォード大学の青木昌彦氏との編著『モジュール化-新しい産業アーキテクチャの本質』(東洋経済新報社)も出されている。この欄でも既に書いたように、「モジュール化」は産業構造を大きく変え、ベンチャーが主役となる世界を生み出す推進力になっている。
安藤さんはその後資源エネルギー庁に移られ、燃料電池関連分野の知見を蓄積されてきた。今回勉強会を開催するに当たって、冷え込んでいる日本のベンチャーコミュニティに喝を入れてもらおうという意図もあり、米国のクリーンエネルギー政策やクリーンテックベンチャーへの投資にも詳しい安藤さんに白羽の矢を立てたわけである。
安藤さんの話の内容を詳しく書くことは紙幅の関係で難しいが、ポイントを整理しておくと、(1)21世紀をクリーンエネルギー経済にすべく前例のない取り組みを行うと大統領オバマが約束しているように、米国では政府がクリーンテック分野を成長領域であると明確に規定していること、(2)米国のみならず多くの国でクリーンテック分野が成長分野と考えられていること、(3)世界でのクリーンテック分野へのVC投資は、欧米を中心に2007年までの5年間で約20倍に拡大していること、(4)世界的に土砂降りの昨年末以降においてもクリーンテックベンチャーへの投資は引き続き活発に行われていること、など。
勉強会の次の日、6月10日の日経「経済教室」に村沢義久東大特任教授が来るべき電気自動車時代について書かれていた。読まれた方も多いと思うが、村沢氏曰く、電気自動車の時代はデトロイトに代わってシリコンバレーや中国が中心になる、メーカーは「ビックスリー」に代わって「スモールハンドレッド」(数多いベンチャー)になる、家電など異業種からの参入が増加する、のではと。その理由は、極端に言えば電気自動車はモーターとバッテリーという2つの部品があれば動くわけで、従来のガソリンエンジン車のような複雑な構造と最終的なすり合わせ技術が不要になるからだという。正に、モジュール化により自動車業界は大きく構造変化を遂げるのではないかと言うのだ。その兆候は既にシリコンバレーで始まっており、2000年以降創業した電気自動車関連のベンチャーにかなりのVC投資が行われている。
日本のベンチャーコミュニティの奮起を期待したい。

