【コラム】ベンチャーコミュニティを巡って
第7回 ベンチャー死活を握るリスクマネー
どの企業においても経営上資金が重要であることは確かだが、ベンチャーにとっての資金の重要性は殊更大きい。
米国で1980年頃に行われたベンチャーといえる企業100数十社を対象にした調査によると、平均的にいって期間損益の黒字化には創業から30ヶ月、累積損失一掃されるまでに75ヶ月かかるという。いわゆる「Jカーブ」(ベンチャーの累積損益の曲線を横軸に時間を取って描くと「J」の字になること)である。
何故そうなるのか。それはベンチャーが革新的な事業を行うとする企業であるため、先行的に研究開発や設備に向けた投資を行う必要があるからだ。通常ベンチャー企業の収益は、その投資負担が重いために創業から暫く水面下に沈む。
同時に、ベンチャーが「Jカーブ」を描くのは(ないしは描くことが出来るのは、と言った方がいいかもしれない)、先行的に、投資する時期にベンチャーに資金が供給されているからである。資金が供給がされないならば、そのベンチャーは即倒産となり事業の継続は不可能になる。
ベンチャーが「Jカーブ」を描く時期に資金供給する投資家は少ない。理由は簡単で、その時期ベンチャーは資金があっても損益は赤字を続けており、何らかの事情で計画が狂い投資額が拡大し赤字幅が膨らむと資金ショートし倒産する危険性が高いからだ。従って、その時期にベンチャーに供給される資金は、高いリスクを覚悟しなければならず(反対にリターンは高くなる可能性がある)、それが故にそうした資金をリスクマネーと呼ぶ。
ベンチャーに提供される資金であるリスクマネーには、エンジェルという個人投資家が提供する資金とベンチャーキャピタルの2種類がある。ベンチャーキャピタルは、一般的には事業会社や金融機関といった出資者から集められた資金であり、ファンドの形態を取りベンチャーキャピタル会社が運用する。ベンチャー1社当りに提供される資金規模はエンジェル資金より大きく、ベンチャーにとってはより重要なリスクマネーといえる。
日本におけるリスクマネーの1つであるベンチャーキャピタルの投資残高は約1兆円、米国の1/30程度に過ぎない。それでなくても少ない日本のベンチャーキャピタルが、昨年秋以降の世界的な金融危機の影響を受けて、さらに縮小しつつある。ベンチャーキャピタル・ファンドに出資する出資者・投資家のマインドが冷え込み、新規ファンドの資金募集が困難になっているからである。このままいくとイノベーションの担い手であるベンチャーは、極端に言えば日本において全て死んでしまいかねない。それは日本経済の今後にとって由々しき問題といえる。
短期的な効果を期待する景気対策も良いが、将来に禍根を残すような問題への対策も緊急経済対策の中に盛込んでいかなければ、日本の明日はない。

