THE INDEPENDENTS

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【コラム】ベンチャー最前線 第1回

テラ株式会社 矢崎雄一郎社長

上場会見するテラの矢崎雄一郎社長

2009年3月26日ジャスダック証券取引所

 

 

がん治療技術のテラが新規上場
東京大学エッジキャピタルの支援とは

がん治療技術を提供するテラ(東京都新宿区、矢崎雄一郎社長)が3月26日、ジャスダック証券取引所NEO市場に上場した。東京大学のベンチャーキャピタル、東京大学エッジキャピタル(UTEC、東京都文京区、郷治友孝社長)が本格的に支援した大学発ベンチャーとしては実質的に第1号の新規上場。大学発ベンチャーは一時期、過剰な期待感からもてはやされたが、なかなか結果を出せないままのところも少なくない。テラの成長ストーリーから、大学発ベンチャーの成功方程式を読み取る。

 

 「東京大学エッジキャピタルには、会社設立の前からお世話になりました」。上場当日の記者会見で、テラの矢崎社長はこう感謝の意を表明した。
 テラは、「樹状細胞療法」と呼ばれる、患者の免疫を使ったがんの治療法の技術ノウハウを医療機関に提供するのが主力事業だ。薬ではなく、提携する医療機関の医師が通常の医療行為として患者に施している。
 収入を得る仕組みはいくつかある。それぞれの医療機関に細胞培養施設などを賃貸し、利用料収入を得たり、治療費の一部を受け取ったりする。臨床試験による安全性や有効性の確認をしていないため、健康保険の対象ではない。そのため、150万円から200万円程度かかるという治療費は全額患者の自己負担となる。ただ、一部のがん保険は利用できるので、そうした場合には負担は軽減される。
 臨床試験は実施していないとはいえ、現実に治療効果は出ている。このため、提携医療機関は拡大し、療法を希望する患者も増えている。結果として、創業4期目の2007年12月期には営業黒字に転換。2009年12月期は2期連続で増収増益を見込む。
 これまでのいわゆる創薬系のバイオベンチャーが赤字のままIPO(新規株式上場)し、経常的な収入をもたらす新薬の承認も「先」というケースが少なくなかった。そのため、上場後の株価動向も振るわず、市場から放置されている企業もある。テラの収益状況はこうしたこれまでのバイオベンチャーとは対照的。アナリストの中には「市場からの評価も得やすいと」の見方もある。
 こうした“成功事例”に、東京大学エッジキャピタルは創業時点で出資している。どのようにして出資の機会を得たのか。
 同社の技術は2000年から2002年にかけて、東京大学医科学研究所で山下直秀教授と高橋恒夫教授によって開発されたもの。矢崎テラ社長は2003年から、外科医として東大医科研の研究員になっており、この治療法の将来性を高く評価。両教授の了承を得て、研究成果をもとに2004年同社を起業した。
 郷治氏もほぼ同時期から、学内を動き回り、有望な技術を探索し、「樹状細胞療法」にたどり着いていた。創業前から事業計画などを話し合っていたことで、早期の出資に至ったわけだ。
 UTECは本社を東京大学構内に構える。まさに「地の利」を生かして新しい技術や企業、起業家を発掘している。とりわけ、2006年2月に郷治氏が社長に就任してから、こうした流れは加速した。
 2007年には東京大学の技術移転機関である「東京大学TLO」とは特許に関する情報を優先的に開示してもらうルートを確立。優秀な学生を活用し、学内の技術シーズ情報の探索を効率的にかつ深化させる試みも始めた。2008年には、有望な起業家について創業前から支援するEIR(アントレプレナー・イン・レジデンス)という仕組みも導入した。テラの誕生には幸運も作用したであろうが、継続的に第2、第3のテラを生み出すためにシステムを構築した。
 技術のシーズ段階で投資判断を迫られることの多い大学発ベンチャーへの投資はリスクが高いとみられがち。郷治氏の考え方は逆。創業前後という早い段階から積極的に経営に関与することで、リスクはコントロールできる。
 4月16日に開かれたUTEC設立5周年記念式典。東京大学の浜田純一総長は「こういう経済情勢の時だからこそ、大学発ベンチャーを通じて、大学の技術で日本経済を元気づける必要がある」との趣旨であいさつし、大学発ベンチャーの意義を強調した。
 大学発ベンチャーのシーズとなる技術をいち早く見出し、ベンチャーとして育成するには、大学の十分な理解に基づいた起業支援の生態系を作れるかどうかにかかっている。

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