【コラム】ベンチャーコミュニティを巡って
第4回 株式公開見直しの時期
株式公開企業数=IPO社数が減少している。2006年の188社が直近のピークで、翌2007年が121社、昨2008年は49社に留まった。今年2009年は更に減少すると見られている。
減少の理由は様々挙げられるが、昨秋のリーマン破綻に続く株式市場の低迷と同時に、市場からの内部統制強化など上場会社の公正・妥当な経営への要求が強まり、上場した場合のコスト増が大きな要因と見られる。この点はエンロン事件などを契機に2002年にSOX法を制定した米国が先行したといってよい。
確かにここのところの上場会社に対する投資家保護の下での市場などからの規制強化には行き過ぎた感も無きにしも非ずだが、不特定多数の投資家の支援を得て経営する上場会社にとっては当然のことだと言えなくもない。ましてや、コンプライアンス違反や予算管理も満足に出来ていない上場会社など何をかいわんやである。
1999年のマザーズ創設以降新興市場が相次いで登場、株式公開基準が大幅に緩和された。形式基準・数値基準が緩和されたことには意味があったと思う。しかし、それに伴い実質基準も緩和しすぎたのではないか。細かい点はともかく、そもそも投資家とって魅力ある、成長余力のある企業の公開がなされてきたのであろうか。株式公開時が成長のピークでその後は急速に成長力を失った新規公開企業も数多い。あるいは公開時公募増資で調達した資金を上手く使えず、無意味にキャッシュリッチになっている会社も多いように思う。
今後投資家の上場会社を見る眼は益々厳しくなっていこう。成長余力のある企業が数多く株式公開するのは大いに結構なことだが、将来の成長に自信のない企業は安易な株式公開を避けるべきであろう。下手に公開すればコスト増に加えて市場の厳しい評価にさらされ、株価低迷から買収されるリスクを高めてしまうことにもなりかねない。確かに株式公開による資金調達力の強化は魅力だが、ここは再度株式公開の意味や株式市場のあり方などに関して企業家自らが再検討してみる必要があるように思う。
日本のベンチャーキャピタルは過去一貫して投資先企業のIPOを資金回収の手段と考えてきた。しかし、今後IPOが厳しくなると予想される中では、M&Aによる投資先企業株式の第三者への売却という資金回収手段を強化していくことが求められよう。そのためには、投資時点で今までのIPOではなくM&Aによる資金回収を意識した投資対象を選ぶ必要があろうし、株主としてM&Aを企業家に迫り得るだけの持株シェアを保有する必要性も出てこよう。また、ベンチャーのM&A市場の整備、売却先企業の情報収集も必要となろう。
いずれにしても、ここに来ての株式公開市場の変容は、ベンチャー企業とそれを支援するベンチャーキャピタル、双方に戦略の見直しを迫るものとなることは間違いない。

