【コラム】ベンチャーコミュニティを巡って
第3回 進んだベンチャーを取り巻くインフラ環境
筆者は1980年代の前半以降約25年位日本のベンチャー・コミュニティを見てきているが、1990年以降のベンチャー経営やベンチャー投資に関連する法制度を中心としたインフラの整備には目を見張るものがあった。インフラ整備はそれまでとは全くスピード感の異なる速度で急速に進んだ。
背景の1つは、米国で主として1970年代後半以降マイクロソフトやアップル、シスコシステムズ、サンマイクロ、ジェネンティックといった世界的に急成長したベンチャーが登場し、実際にベンチャーが世の中を変える事例が目の当たりに見えたことであろう。
加えてもう1つは、日本では1990年代に入ってバブルの崩壊ともに、それまで戦後の日本経済を支えてきた日本の大企業に大きなほころびが目立ち始めたことであろう。特に日本の半導体産業に代表されるように大企業の国際競争力が低下し、大企業の創造的な活動に期待がもてなくなってきたことである。
インフラ整備の一端として、まず1994年には「中小企業の創造的事業活動の促進に関する臨時措置法(通称中小創造法)が制定され、創業期の成長志向型の中小企業(所謂ベンチャー)に対する資金供給の円滑化が図られた。そしてその5年後の1999年には「中小企業基本法」が制定された1963年以来始めて大幅に改正され、基本理念である中小企業の位置づけが、それまでの二重構造論を背景に大企業に比較して劣位におかれ格差是正を政策的に行っていくべき存在から、その柔軟性や創造性及び機動性が重視され、日本経済の発展と活力の源泉になるべき存在へと大きく変わった。
それまで10年に1回程度であった商法改正が頻繁に行われるようになり、その中でベンチャー経営にとって意味のあるストックオプション制度の採用や種類株式の利用促進のための制度改正などが図られた。商法改正は2006年に新会社法の制定となって集大成され、最低資本金制度の廃止や会社の機関設計を柔軟に行うことが出来る、欧米のLLC(Limited Liability Company)をモデルにした合同会社の新設などが盛込まれ、会社設立が容易に出来る環境が整った。
ベンチャー投資の世界でも、1994年に公正取引委員会の独占禁止法に関するガイドラインが緩和され、ベンチャーキャピタルの投資先会社への役員派遣が認められるなど、自由化は相当進んだ。
現状日本でのベンチャー経営やベンチャー投資の制度的な問題に関して欧米との差はほとんどなくなったと言って良い。とはいえ、残念ながらベンチャーの輩出にかんしては依然欧米と差があると言わざるを得ない。その原因が何なのか、改めて、かつ早急に考えてみなければならない問題といえよう。

