THE INDEPENDENTS

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【コラム】ベンチャーコミュニティを巡って

國學院大学 秦 信行氏國學院大學 秦 信行




第2回 イノベーションの担い手としてのベンチャー

経済学的にGDP(国内総生産)の成長は、資本と労働という生産要素の増加率と生産性の向上とで説明できる。つまり投資することによって設備などの資本が増加するか、付加価値を生出す労働力が増加するか、ないしは生産性が向上し、設備一単位あたりの生産量や労働者一人当たりの生産量が増加すればGDPは拡大することになる。

翻って将来の日本経済を考えてみると、少子化で労働力は増えそうにない。資本の増加は投資に左右されるが、その投資は貯蓄に規定される。高齢化に伴い日本の貯蓄率は低下すると考えると投資の拡大=資本の増加も難しい。そうなると今後日本経済が成長していくためには、生産性の向上が最も大きな要因と考えられる。

IPO件数の減少は、日本版SOX法による内部統制強化のための煩雑さやコスト増によるところもあるが、株価低迷に伴ってIPO時の公募増資で調達可能な資金が減少していることも影響している。最近公開したある会社など、公開は果たせたものの公開時公募で調達できた資金規模は計画を大きく下回り、その後の市場低迷もあって引き続きの株式市場での資金調達はままならず、資金繰りに窮している有様である。

生産性の向上を図る上で、低生産性部門の資源を高い生産部門に再配分することも1つの手段ではあるが、イノベーションが最も有効な手段といってよい。従って、今後日本経済を持続的に成長させていくためには、イノベーションの実現が最も重要と考えられる。

米国でのイノベーションのあり方を見ると、1970年代頃までは大企業によるリニア・モデルといわれるイノベーションのあり方が主流であった。つまり大企業が基礎的な研究開発から商業化・事業化・産業化まで、自前で一貫した体制を取ることで主としてイノベーションが実現された。しかし、80年代以降になると、研究開発費の膨張、製品アーキテクチャーのモジュラー化、株主主権主義が強まる中での経営の短期志向などにより、大企業によるイノベーションのリニア・モデルは大きく崩れ、企業の枠を超えたオープン・イノベーションといわれるあり方に変容したと考えられる。

そこでは、基礎的な研究開発を大学と公的機関が主として担い、そこで開発された技術シードを事業化するにあたっては、プロジェクトと言っていいような形でトライするベンチャーが中心的な存在になる。その際多くのプロジェクト、ベンチャーは失敗するが、上手く行ったものについては、ベンチャー自らが株式公開=IPOを行い市場から資金を調達して事業規模を拡大していくか、既存の大企業が買収することで大企業の新規事業として成長していくことになる。

日本では戦後1970年頃まで、基礎技術に関して海外先進国に主として依存していたとはいえ、その事業化に関しては米国同様大企業が中心的になっていた。70年以降日本の大企業の自前での基礎研究開発力は拡充されてきたが、それが必ずしも事業化に上手く結びついていない。そこには米国同様リニア・モデルの限界があるのではなかろうか。

日本でもイノベーションのオープン化を図る必要があろう。そのためには、様々な新しい技術を事業化しようとする数多くのベンチャーを輩出させなければならない。大企業を中心に基礎的技術は豊富にあると考えられる。その技術を活用したベンチャーによる新製品、新事業の創出が今こそ求められている。

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