FAQ | サイトマップ
初めての方マイページ

知的財産判例に学ぶ企業活動(55)

2023-02-21 公開
弁護士法人 内田・鮫島法律事務所
弁護士/弁理士 高橋 正憲

弁護士法人 内田・鮫島法律事務所
弁護士/弁理士 高橋 正憲 氏

2004年北海道大学大学院工学研究科量子物理工学専攻修了後、(株)日立製作所入社、知的財産権本部配属。2007年弁理士試験合格。2012年北海道大学法科大学院修了。2013年司法試験合格。2015年1月より現職。

【弁護士法人 内田・鮫島法律事務所】
所在地:東京都港区虎ノ門2-10-1 虎ノ門ツインビルディング東館16階
TEL:03-5561-8550(代表)
構成人員:弁護士25名・スタッフ13名
取扱法律分野:知財・技術を中心とする法律事務(契約・訴訟)/破産申立、企業再生などの企業法務/瑕疵担保責任、製造物責任、会社法、労務など、製造業に生起する一般法律業務
http://www.uslf.jp/

知的財産判例に学ぶ企業活動(55)

契約終了後の競業避止義務を規定する条項が、 職業選択の自由ないし営業の自由を制約するもので 公序良俗に反して無効であると判断された事例

知財高裁令和4年12月26日判決

1 事案

 バンド活動に従事していたX1~4(Xら)は、本件グループ名を用いたバントとして、音楽事務所であるY社と専属的マネージメント契約(本件専属契約)を締結して活動をしていた。しかし、本件専属契約終了後、Xらが本件グループ名を用いてバンド活動を継続しようとしたところ、Y社及び同社代表者のY2が、関係者らに対し、同バンドは本件専属契約によって契約終了後6か月間、Y社の承諾なしに実演を目的とする契約を締結することが禁止されており、Y社は承諾していない、本件グループ名に係る商標権はY社に帰属しておりXらが本件グループ名を使用することを許諾していないなどを内容とする通知(本件各通知)をしたこと等が、Xらの営業権、パブリシティ権、営業の自由、名誉権、実演家人格権(氏名表示権)を侵害する不法行為に当たるとして、Xらが、Yらに対し、損害賠償金等を求めた事案です。
 本件は、本件専属契約の競業避止義務規定の有効性が問題とされました。

【本件専属】(競業避止義務規定)
契約期間終了後6か月の間、実演家は、甲(Y)への事前の承諾なく、甲(Y)以外の第三者との間で、マネージメント契約等実演を目的とするいかなる契約も締結することはできない。

2 知財高裁の判断

 知財高裁は、競業避止義務規定の有効性について、以下のとおり、判示しました。
「・・・長期間にわたり本件グループとしてバンド活動をすることにより実演家としての活動を行ってきたところ、本件条項は、本件専属契約の終了後において、上記のようなXらの実演家としての活動を広範に制約し、Yらが自ら習得した技能や経験を活用して活動することを禁止するものであって、Xらの職業選択の自由ないし営業の自由を制約するものである。そうすると、本件条項による制約に合理性がない場合には本件条項は公序良俗に反し無効と解すべきであり、合理性の有無については、本件条項を設けた目的、本件条項による保護されるYの利益、Yらの受ける不利益その他の状況を総合考慮して判断するのが相当である。」
 「そこで検討するに、Yは、本件条項について、先行投資回収のために設けたものであると主張しているところ、Xらの需要者(Xらのファン)に訴求するのはXらの実演等であって、Yに所属する他の実演家の実演等ではないのであるから、本件条項によりXらの実演活動を制約したとしても、それによってYに利益が生じて先行投資回収という目的が達成されるなどということはなく、本件条項によるXらの活動の制約とYの先行投資回収には何ら関係がないというほかない。また、仮に、Yに先行投資回収の必要性があり、それに関してXらが何らかの責任を負うような場合であったとしても、これについてはXらの実演活動等により生じる利益を分配するなどの方法による金銭的な解決が可能であるから、上記必要性は、本件専属契約終了後のXらの活動を制約する理由となるものではない」として、本件条項は公序良俗に違反し無効であると判断しました。

3 本裁判例から学ぶこと

 また、裁判所は、長期間の活動により、Yによる先行投資の回収は当然に終了しているとも判断しています。  本判決は、本件専属契約における競業避止義務条項は無効であると判断し、Y社にはXらによる本件グループ名の使用を制限する権原はないとして、Yらによる本件各通知等は、Xらによる本件グループ名を用いたバンド活動等を不当に妨害するものであって不法行為に当たると判断し、Xらの請求を全部認容する判断をしました。
 各種契約において、契約終了後の競業避止義務規定が定められますが、本件のように、競業避止義務の範囲が広範で、本件条項を設けた目的、本件条項による保護される利益、及び被る不利益を比較考量して、同条項が無効となりうる場合ある点に注意が必要です。

以上

※「THE INDEPENDENTS」2023年2月号 P9より
※掲載時点での情報です

--------------------------------------------------------

THE INDEPENDENTS 最新号


【2022年9月号】

(株)ジェクスヴァル
「リパーパシング手法で、難治・希少疾患向け創薬をめざす」


<事業計画発表会プレゼン企業>
 Co-Growth(株)(代表取締役 佐々木 文平 氏)
(株)KOKYU(代表取締役 堀 敦友 氏)
(株)エイ・オー・テクノロジーズ(代表取締役 井上 克己 氏)
(株)E3Mobility(代表取締役 高橋 良彰 氏)
(株)NEXT STAGE(代表取締役社長 小村 直克 氏)
L&Kメディカルアートクリエイターズ(株)(代表取締役 佐久間 研人 氏)
(株)WDC(代表取締役 上石 泰義 氏)
(株)Anamorphosis Networks(代表取締役 炭谷 翔悟 氏)
(株)DIIIG(代表取締役 秋國 寛 氏)
ジカンテクノ(株)(代表取締役 木下 貴博 氏)
(株)満寿屋商店(代表取締役 杉山 雅則 氏)
(株)土谷特殊農機具製作所(代表取締役 土谷 賢一 氏)

<知財インタビュー>
クモノスコーポレーション(株)
「3D空間計測技術で社会のインフラの維持・管理に貢献する」

<コラム>
ペンチャーコミュニティをめぐって
知的財産判例に学ぶ企業活動

事業相談・プレゼン希望



ビジネスプランや資本政策等のご相談、またインデペンデンツクラブ主催の「事業計画発表会(毎週金曜)」等でのプレゼン希望はこちらからお問合せください

事業相談・プレゼン希望はこちら

事業計画発表会の開催情報や新着記事など、毎週金曜日に配信するメルマガ「THE INDEPENDENTS NEWS」の購読を希望される方は以下よりご登録ください

メルマガ登録はこちら

イベントスケジュール

3月
東 京
3日(金)
月例会
6日(月)
東 京
10日(金)
東 京
17日(金)
名古屋
24日(金)
鹿児島
30日(木)
4月
月例会
3日(月)
東 京
7日(金)
東 京
14日(金)
大 阪
21日(金)
東 京
28日(金)
5月
月例会
8日(月)
東 京
12日(金)
京 都
19日(金)
北海道
26日(金)
▼展開する

インデペンデンツクラブからのお知らせ