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ベンチャーコミュニティを巡って第169回

2023-01-31 公開
國學院大学
名誉教授 秦 信行

インデペンデンツクラブ代表理事
秦 信行 氏

早稲田大学政経学部卒業。同大学院修士課程修了(経済学修士)。野村総合研究所にて17年間証券アナリスト、インベストメントバンキング業務等に従事。1991年JAFCO に出向、審査部長、海外審査部長を歴任。1994年國學院大学に移り、現在同大学名誉教授。1999年から約2年間スタンフォード大学客員研究員。日本ベンチャー学会理事であり、日本ベンチャーキャピタル協会設立にも中心的に尽力。2019年7月よりインデペンデンツクラブ代表理事に就任。

ベンチャーコミュニティを巡って第169回


ベンチャー・エコシステムとシリコンバレー


ハビタット(=habitat)という言葉をご存知だろうか。生物学上の用語で、生息地、あるいは生息場所という意味だそうだ。かつてハイテクベンチャーのハビタットはシリコンバレーだという言い方がなされた。つまりそれは、ハイテクベンチャーを生き物になぞらえて、それらベンチャーが生まれ育つ場所がシリコンバレーだと言われていたわけだ。そのハビタットはいつの間にか同様の意味を持つエコシステムという言葉に置き換えられた。何故そうなったかについて筆者は知らない。

言葉の変容についてはともかく、何故米国の西部、サンフランシスコ湾を囲むベイエリアと言われる元々は果樹園が広がる農村地帯であった場所がハイテクベンチャーのハビタットと呼ばれ、エコシステムが整備された場所になったのか、それについて考えてみたい。

一般的にベンチャーの生息地=ハビタット、スタートアップのエコシステムといった場合、必要な要素は何か、まずは今まで世の中になかったような革新的な事業のシーズやアイデアが要る、二つ目はそれらのビジネスシーズやアイデアを生み出すために必要な基礎研究を幅広く行い、加えて技術特許の取得などをサポートする大学や各種研究機関、三つ目は失敗のリスクを恐れず果敢に革新的事業に挑戦する数多くの起業家、四つ目に資金の乏しい起業家個人に代わって、所謂ベンチャーのJカーブ期を乗り越えるための資金を提供するエンジェル投資家やVC、五つ目は事業を拡大・成長させていく上で発生する様々なトラブルなどを解決する弁護士事務所や経営全般及び経理会計面を専門的に支援するコンサルタントや会計事務所、人材調達を手伝う人材紹介会社などの各種専門的な事業所、六つ目に成長したベンチャーがIPOやM&Aなどで資金回収する際に支援する投資銀行など、七つ目がベンチャーやスタートアップを応援する地域コミュニティ、といったところか。最後にエコシステムといった場合特に強調しておきたいことは、以上のそれぞれの要素が地域においてお互いに上手く連携していることである。要素それぞれの連携が出来ていないとエコシステムは上手く機能しない。

では上記の要素をシリコンバレーに当て嵌めてみるとどうか。まず一つ目と二つ目の要素については、スタンフォード大学の役割は確かに大きい。ただ、スタンフード大学の貢献は本格的には第二次大戦後と考えられる。1891年に創設されたスタンフォード大学は戦前は裕福な家庭の子弟が行く大学だったが、工学部長になりヒュレット・パッカードを支援したターマン教授の貢献などによって主として戦後に大きく変わった。三つ目の起業家については確かにスタンフォード大学の卒業生も多いが、加えてアジアを中心に起業家を目指して世界からやってくる人々にシリコンバレーは支えられているようにも思う。四つ目の資金については、シリコンバレーでは元起業家達がエンジェル投資家として機能する循環が出来ている。加えてVCは1970年頃から集積し始めている。五つ目の専門事業所の中心である弁護士事務所については、シリコンバレー最大の弁護士事務所と思われるウィルソン・ソンシーニ は1960年代前半に数名の弁護士によって作られたが、今では1000名近い弁護士を抱える事務所に拡大している。六つ目の投資銀行などの多くは近くのサンフランシスコに居を構えている。7つ目については前回のこのコラム「産業クラスターとしてのシリコンバレー」で書かせて頂いた。

シリコンバレーは上記の各要素が1970年頃にはほぼ整ったといえよう。加えてシリコンバレーでは各要素が相互に関係し合うことによって現在のようなエコシステムを形成していると考えられる。

※「THE INDEPENDENTS」2023年1月号 掲載
※冊子掲載時点での情報です

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