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知的財産判例に学ぶ企業活動(53)

2022-12-13 公開
弁護士法人 内田・鮫島法律事務所
弁護士/弁理士 高橋 正憲

弁護士法人 内田・鮫島法律事務所
弁護士/弁理士 高橋 正憲 氏

2004年北海道大学大学院工学研究科量子物理工学専攻修了後、(株)日立製作所入社、知的財産権本部配属。2007年弁理士試験合格。2012年北海道大学法科大学院修了。2013年司法試験合格。2015年1月より現職。

【弁護士法人 内田・鮫島法律事務所】
所在地:東京都港区虎ノ門2-10-1 虎ノ門ツインビルディング東館16階
TEL:03-5561-8550(代表)
構成人員:弁護士25名・スタッフ13名
取扱法律分野:知財・技術を中心とする法律事務(契約・訴訟)/破産申立、企業再生などの企業法務/瑕疵担保責任、製造物責任、会社法、労務など、製造業に生起する一般法律業務
http://www.uslf.jp/

知的財産判例に学ぶ企業活動(53)

特許侵害訴訟の訴訟提起自体が違法とされた事例

大阪地裁令和3年9月6日判決

1 事案

 本訴請求は、「水道配管における漏水位置検知装置」に係る特許権を有する原告が、被告がその業務として行う漏水探査に際して使用する器具を使用する行為が原告の特許権を侵害すると主張して、被告に対し、損害賠償金及び遅延損害金の支払を求める事案です。
 反訴請求は、被告が、本訴は事実的及び法律的根拠を欠くものであるにもかかわらず、原告が本訴を提起したことは不法行為を構成すると主張して、原告に対し、損害賠償金及び遅延損害金の支払を求める事案です。

2 大阪地裁の判断

 大阪地裁は、本訴請求は、文言侵害及び均等侵害のいずれも成立しないとして、被告の行為について、特許権侵害は成立しないと判示しました。
 反訴請求について、以下の判断規範を判示しました。
「法的紛争の当事者が紛争の解決を求めて訴えを提起することは、原則として正当な行為であり、訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは、当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものである上、提訴者が、そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当である」
そして、本件の判断としては、「原告は、被告が原告を退職して独立開業した後、本訴の提起に至るまでの間、被告が門川町の業務を落札したことを契機に、被告の事業活動を問題視するようになり、被告の使用する工法が原告の『エア加圧工法』を無断で使用するものであるなどとして、刑事告訴の可能性にも言及するなどしつつ、被告に対して直接非難する趣旨を含む書面を送付した。」等の事情があり、「こうした経過を経て本件の本訴が提起されたことを踏まえると、本訴の提起も、被告がその事業上実施する工法を原告が問題視して行った一連の行動の一環として行われたものと理解される。」とし、また、事前の書面のやりとりで、「原告は、被告から『特許侵害等の法を犯す工法ではありません』などと反論されたこともあるにもかかわらず」、原告は特許権侵害の理由に言及したことがないなどの事情から、「原告は、本訴の提起に先立ち、被告の使用する漏水探査方法やこれに使用する装置に関する調査等を自ら積極的には必ずしも行っていなかったことがうかがわれる。」と認定され、結論として、「このような本訴の提起に至る経緯や訴訟の経過等に加え、前記のとおり、被告装置につき本件各発明の技術的範囲に属さないことに照らすと、原告は、本訴で主張する権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものであることにつき、少なくとも通常人であれば容易にそのことを知り得たのに、被告による事業展開を妨げることすなわち営業を妨害することを目的として、敢えて本訴を提起したものと見るのが相当である。」と判示されました。

3 本裁判例から学ぶこと

 訴訟提起行為は、司法による法的判断を仰ぐ行為であり、正当な行為として、原則違法とされません。しかし、裁判所も判示しているとおり、提訴者が法的根拠を欠く等を知りながら提起する(又は通常人であれば容易にそのことを知りえたと言えるのに提起する)場合には、例外的に、違法とされます。 本件は、会社が退職者に対し、刑事告訴を仄めかす書面を通知した等の事情があり、加えて、特許侵害の該当性の調査もせずに訴訟提起し、結果、非侵害との結論となったことで、「営業を妨害する」目的の訴訟と認定され、訴訟提起自体が違法と判断されています。
企業活動の中では、訴訟提起をせざるを得ない場面も生じますが、十分調査・検討を行った上で、訴訟提起に進むことが必要でしょう。

※「THE INDEPENDENTS」2022年12月号 P13より
※掲載時点での情報です

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