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知的財産判例に学ぶ企業活動(50)

2022-09-13 公開
弁護士法人 内田・鮫島法律事務所
弁護士/弁理士 高橋 正憲

弁護士法人 内田・鮫島法律事務所
弁護士/弁理士 高橋 正憲 氏

2004年北海道大学大学院工学研究科量子物理工学専攻修了後、(株)日立製作所入社、知的財産権本部配属。2007年弁理士試験合格。2012年北海道大学法科大学院修了。2013年司法試験合格。2015年1月より現職。

【弁護士法人 内田・鮫島法律事務所】
所在地:東京都港区虎ノ門2-10-1 虎ノ門ツインビルディング東館16階
TEL:03-5561-8550(代表)
構成人員:弁護士25名・スタッフ13名
取扱法律分野:知財・技術を中心とする法律事務(契約・訴訟)/破産申立、企業再生などの企業法務/瑕疵担保責任、製造物責任、会社法、労務など、製造業に生起する一般法律業務
http://www.uslf.jp/






知的財産判例に学ぶ企業活動(50)

漫画の海賊版を掲載するウェブサイトに広告を提供していた行為が、公衆送信権の侵害行為を共同して幇助する行為にあたると判断された事例

知財高裁令和3年6月29日判決〔漫画村事件〕

1 事案

 被控訴人(原審原告)は漫画家であり、控訴人(原審被告ら)は、いずれもインターネットの広告を取り扱う広告代理業をその目的に含む株式会社である。本件は、被控訴人が、「漫画村」という名称のウェブサイト(本件ウェブサイト)上に被控訴人が著作権を有する漫画(原告漫画)がアップロードされ被控訴人の公衆送信権が侵害されたことについて、控訴人らに対し、本件ウェブサイトに広告を提供して本件ウェブサイトの管理運営者に広告料を支払ったという控訴人らの一連の行為(本件行為)は上記侵害についての幇助行為に当たると主張して、不法行為に基づき、損害賠償金、及び遅延損害金の連帯支払を求めた事案です。

2 知財高裁の判断

 知財高裁は、以下のとおり判断しました 。

「(ア)控訴人らの本件行為が、本件ウェブサイトにおける原告漫画の無断掲載行為という著作権(公衆送信権)侵害行為を共同して幇助する行為に当たるかについて検討する。

(イ)本件ウェブサイトの運営実態を見ると、本件ウェブサイトの運営者は、5万冊以上もの漫画作品をインターネット上に掲載していたが、原告漫画を含め、本件ウェブサイトに掲載されている漫画の多くを、著作権者の許諾を得ずに無断で掲載する一方、利用者において無料でそれらの漫画を閲覧することができるようにし、発行翌日に新作閲覧ができるようにするなどのこともして利用者の誘引や閲覧数の増大を図り、費用は広告収入で賄う仕組みを作り上げ、本件ウェブサイトの開設から2年後には、月間の閲覧数が延べ1億7000万人を突破するなど、本件ウェブサイトの利用者は相当の規模に上っていたことが認められる。

(ウ)そうすると、本件ウェブサイトは、その利用者からの支払によりこれを運営するための経費(本件ウェブサイトが使用するサーバ等、その維持管理に必要となる費用や本件ウェブサイトの運営者等の得る報酬等)を賄うことが構造上予定されず、その規模を増大させることにより、本件ウェブサイト上での広告掲載効果を期待する事業主を増加させ、その運営資金源のほとんどを、広告事業主から支払われる広告料によって賄う仕組みであったことがうかがわれるのであって、当該広告料収入がほとんど唯一のその資金源であったというべきである。  このような本件ウェブサイトの運営実態からすると、本件ウェブサイトに広告を出稿しその運営者側に支払うという行為は、一般的に、その構造上、本件ウェブサイトを運営するための上記経費となるほとんど唯一の資金源を提供することによって、原告漫画を含め、本件ウェブサイトに掲載されている漫画の多くを、著作権者の許諾を得ずに無断で掲載するという本件ウェブサイトの運営者の行為、すなわち、公衆送信権の侵害行為を補助しあるいは容易ならしめる行為(幇助行為)といえるものである。

(エ)控訴人らの本件行為についてみるに、そもそも控訴人らは、いずれもインターネット広告を取り扱う広告代理業を目的とする株式会社であるところ、控訴人エムエムラボの代表者であるDは控訴人グローバルネットの取締役を務めており、控訴人グローバルネットの登記簿上の本店所在地は、控訴人エムエムラボの登記簿上の支店所在地と同一であり、控訴人らも株主を共通にするという限度では控訴人らが一定の関連性を有することを認め、控訴人グローバルネットが作成した書面(乙1)にも控訴人エムエムラボが控訴人グローバルネットのグループ法人である旨の記載があったものである。また、控訴人グローバルネットに広告掲載が依頼された場合でも、広告の出稿は控訴人エムエムラボが運用していた「MEDIADⅡ」を利用して行われ、「MEDIADⅡ」に関する取引先からの問合せに対して控訴人エムエムラボの従業員が対応する際にメールのCCとして控訴人グローバルネットの関係者が含められたり、同一人が控訴人エムエムラボの従業員としてのメールアドレスと控訴人グローバルネットの従業員としてのメールアドレスを使い分けたりしていたところである。これらの事情からすると、控訴人らは、客観的にも、主観的にも、共同して本件行為を遂行していたというべきである。

 そして、本件行為について、前記(ウ)で指摘したように一般的に公衆送信権の侵害行為の幇助行為とみるべき行為と異なって解すべき事情は見当たらない。
 したがって、控訴人らが共同して遂行していた本件行為は、原告漫画についての公衆送信権の侵害行為を幇助する行為に当たるというべきである。
 また、控訴人らが共同して遂行した本件行為という幇助行為の結果、本件ウェブサイトを利用して原告漫画が閲覧されることとなり、その結果、原告漫画の売上げ減少による損害等が発生したと認められ、控訴人らの本件行為と被控訴人の損害との間に相当因果関係が存在するというべきである。」

3 本裁判例から学ぶこと

 著作物の複製行為を行うなど、直接、法定の利用行為(著作権法21条~28条)を行う場合、著作権侵害なります(直接侵害)。他方、直接侵害に該当しなくても、侵害行為を助長・誘発する行為も間接侵害として規制されます。
 例えば、カラオケスナック店の事例で、店は演奏行為をしませんが、カラオケ設備を提供して客に歌唱行為を行わせる点で、管理主体性があり、利益帰属の主体にもなるとして、店の間接侵害が肯定されています(最判昭和63年3月15日民集42巻3号199頁)。
 また、ジャスラックからライセンスを受けていないカラオケ店に、カラオケ装置をリースする行為が著作権侵害の幇助に該当するされています(大阪地判平成15年2月13日平成14年(ワ)第9435号) 他方、適法にも違法にも用いることができるP2Pのファイル交換サービスの開発者が、著作権侵害罪のほう助罪で逮捕起訴されましたが(平成18年12月23日京都地裁判決判タ1229号105頁)、この事案では、控訴審及び最高裁では無罪判決となりました。
 このように直接侵害に該当しなくて、所定の行為は間接侵害となると認定されてきたところ、本件は、広告料を支出して広告を掲載した行為自体が著作権侵害の幇助に該当すると判断されました。当該行為は、金銭を支出して広告を出稿するものゆえ、漫画の著作権侵害とは程遠いとも評価できますが、漫画村の唯一の資金源であったことなどが重視されて、著作権侵害の幇助に該当すると判断されています。 企業活動を運営するには、自社の活動が知財侵害とならないことのみならず、関係先の活動まで注意を払う必要があるでしょう。
                                           以上
※「THE INDEPENDENTS」2022年9月号 P11より
※掲載時点での情報です

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