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知的財産判例に学ぶ企業活動(48)

2022-07-28 公開
弁護士法人 内田・鮫島法律事務所
弁護士/弁理士 高橋 正憲

弁護士法人 内田・鮫島法律事務所
弁護士/弁理士 高橋 正憲 氏

2004年北海道大学大学院工学研究科量子物理工学専攻修了後、(株)日立製作所入社、知的財産権本部配属。2007年弁理士試験合格。2012年北海道大学法科大学院修了。2013年司法試験合格。2015年1月より現職。

【弁護士法人 内田・鮫島法律事務所】
所在地:東京都港区虎ノ門2-10-1 虎ノ門ツインビルディング東館16階
TEL:03-5561-8550(代表)
構成人員:弁護士25名・スタッフ13名
取扱法律分野:知財・技術を中心とする法律事務(契約・訴訟)/破産申立、企業再生などの企業法務/瑕疵担保責任、製造物責任、会社法、労務など、製造業に生起する一般法律業務
http://www.uslf.jp/






知的財産判例に学ぶ企業活動(48)

意匠権侵害訴訟において、先使用に基づく通常実施権を理由として、請求が棄却された事例

東京地裁令和3年7月9日判決

〔排水口用ゴミ受け事件〕

1 事案

 本件は、意匠に係る物品を「排水口用ゴミ受け」とする原告意匠権を有する原告が、被告に対し、被告製品の製造販売等の行為が、原告意匠権を侵害するとして、製造販売行為等の差止め、損害賠償等を求める事案です。


裁判所ウェブサイトから引用

2 東京地裁の判断
 東京地裁は、先使用に基づく通常実施権について、以下のとおり判示しました。

「ア 原告意匠の出願日は令和元年8月20日であるところ,上記(2)において判示した被告製品の開発経緯によれば、被告製品を開発・製造して被告に販売したダイセンは、Wuxi社及びCNTA社との間で洗面台用排水口フィルターの新製品の開発を進め,平成31年4月にWuxi社から抜き型図面(乙20)を受け取り,これに基づき試作品を作成した上で,被告に対して新製品販売の提案を行い、被告製品の意匠は令和元年7月に被告に採用されて、被告製品の製造・販売に至ったものと認められる。

イ ダイセンがWuxi社から受領した上記抜き型図面の構成は、上記(1)イの被告製品の意匠の基本的構成態様及び具体的構成態様をいずれも備えたものであり、被告製品の意匠と同一又は類似するということができる。そして、同図面に基づいて作成されたと推認される被告製品の試作品(乙23の2の1の下段、乙23の2の2、乙23の4)も同様に被告製品の意匠の基本的構成態様及び具体的構成態様をいずれも備え、被告製品の意匠が被告に採用された後に、ダイセンの担当課長がCNTA社の担当者に送信した電子メール(乙27)の本文に挿入された試作品の画像も同各態様を備えていたものと認められる。そうすると、原告意匠と同一又は類似する意匠は、平成31年4月にダイセンがWuxi社から知得し、仮にそうではないとしても、ダイセンが被告と打合せを重ねる中で原告意匠の出願日までの間に創作したもので あり、その意匠は平成31年4月から被告製品の意匠の採用時まで、一貫して、上記(1)イの基本的構成態様及び具体的構成態様を備えていたものというべきである。

ウ  意匠法29条は「現に日本国内においてその意匠又はこれに類似する意匠の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている意匠及び事業の目的の範囲内において、その意匠登録出願に係る意匠権について通常実施権を有する」と規定するところ、上記(2)のとおり、ダイセンは、令和元年8月2日には被告から2万個の被告製品の製造を受注していたことに照らすと、原告意匠の出願日(同月20日)には原告意匠又はこれに類する意匠の実施である事業を開始していたというべきである。 加えて、ダイセンが、原告意匠の出願日当時,原告意匠について知っていたことを示す証拠はない。

エ 以上によれば,原告意匠と被告製品の意匠が類似しているとしても、ダイセンは、原告意匠を知らないで自ら原告意匠又はこれに類似する意匠を創作し、又は同意匠の創作をした者から知得して、原告意匠登録出願の際,現に日本国内において原告意匠又はこれに類似する意匠の実施である事業をしていたということができるので、意匠法29条に基づき、原告意匠権について通常実施権を有するものというべきである。
 そうすると、被告が、原告意匠権について通常実施権を有するダイセンから被告製品を仕入れて販売等する行為が原告意匠権を侵害するということはできない。」

3 本裁判例から学ぶこと
 意匠法も、特許法と同様に、先使用権を定めています。すなわち、出願前から、登録意匠と同一又は類似の意匠の実施である事業、またはその準備をしていれば 、先使用権により、侵害の責めを免れることができます。
 要するに、問題となる出願より前から、事業の実施ないし準備をしていることが立証できれば、侵害の責めを免れることができるのです。この点について、言葉で説明するのは簡単ですが、現実のビジネスでは、過去の時点における「実施」や「準備」を立証するのが容易ではありません。過去の時点における製品態様の立証は、会社に資料が残っていないことが多いからです。
 本件では、出願日が、令和元年8月20日であるので、これ以前の「実施」や「準備」を立証する必要であったところ、被告製品の納入元のダイセン社等において、抜き型図面(乙20)、試作品(乙23の2の1の下段,乙23の2の2、乙23の4)、電子メール(乙27)の証拠を準備することができ、無事に、先使用権の成立の立証に成功しています。本件は、幸いにも、裁判から数年前の時点の製品態様を立証することで足りたので、資料が残存していたようですが、他の事例では10年前以上の製品態様が問題となるケースもあります。製品態様を示す資料の保管 は、先使用権の発生に重要な意味を持つので、留意が必要です。
                                            以上
※「THE INDEPENDENTS」2022年7月号 P11より
※掲載時点での情報です

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