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知的財産判例に学ぶ企業活動(46)

2022-05-26 公開
弁護士法人 内田・鮫島法律事務所
弁護士/弁理士 高橋 正憲

弁護士法人 内田・鮫島法律事務所
弁護士/弁理士 高橋 正憲 氏

2004年北海道大学大学院工学研究科量子物理工学専攻修了後、(株)日立製作所入社、知的財産権本部配属。2007年弁理士試験合格。2012年北海道大学法科大学院修了。2013年司法試験合格。2015年1月より現職。

【弁護士法人 内田・鮫島法律事務所】
所在地:東京都港区虎ノ門2-10-1 虎ノ門ツインビルディング東館16階
TEL:03-5561-8550(代表)
構成人員:弁護士25名・スタッフ13名
取扱法律分野:知財・技術を中心とする法律事務(契約・訴訟)/破産申立、企業再生などの企業法務/瑕疵担保責任、製造物責任、会社法、労務など、製造業に生起する一般法律業務
http://www.uslf.jp/






知的財産判例に学ぶ企業活動(46)

特許権侵害訴訟の提起自体が違法と判断された事例

大阪地裁令和3年9月6日判決

〔水道配置管における漏水位置検知装置事件〕


1 事案

 本訴は、原告が被告に対し、発明の名称を「水道配管における漏水位置検知装置」とする特許権に基づいて、特許権侵害訴訟を提起して、損害の賠償を求めた事案です。
 反訴は、被告が原告に対し、本訴は事実的及び法律的根拠を欠くものであるにもかかわらず、原告が本訴を提起したことは不法行為を構成すると主張して、原告に対し、不法行為に基づく損害の賠償を求めた事案です。

2 大阪地裁の判断

 大阪地裁は、特許侵害について、文言侵害と、均等侵害について、以下のとおり判断しました。その後、本訴提起自体が不法行為に該当するかを判断しました。

(1)文言侵害
 本件発明1は、構成要件A~Eにより構成されており、本件発明2は、構成要件F~Hにより構成されているところ、「被告装置は、本件発明1の構成要件A~Eをいずれも充足しない。」「被告装置は、本件発明2の構成要件G及びHをいずれも充足しない。」「したがって、被告装置につき、本件各発明に係る文言侵害はいずれも成立しない。」

(2)均等侵害
 「被告装置は、本件発明1の構成要件A~Eのいずれも充足せず、また、本件発明2の構成要件G及びHを充足しない。しかるに、原告は、前記第3の2の(原告の主張)のとおり、被告装置の特定、被告装置と本件各発明との対比や相違部分(以下「相違部分」という。)の主張を具体的に行っておらず、原告が主張立証責任を負う均等の第1~第3要件に関する主張は、被告装置が水素混合ガスを使用しないという点に関するものにとどまっている。また、別紙「クレームの分説と構成要件充足性」の「本訴被告が漏水調査に用いる物に関する本訴原告の主張」欄記載の原告の主張をもって上記各要件に関する主張と理解するとしても、その内容は上記各要件に即したものではない概括的なものにとどまり、上記各要件に関する主張として十分な主張がなされているとはいいがたい。その意味で、均等侵害の成立に関する原告の主張は、主張自体失当である。」「この点を措くとしても、・・・少なくとも均等の第1要件を欠くことから、被告装置につき、本件各発明に係る均等侵害は成立しない。」

(3)本訴提起が不法行為に該当するかについて
 「法的紛争の当事者が紛争の解決を求めて訴えを提起することは、原則として正当な行為であり、訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは、当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものである上、提訴者が、そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当である(最高裁昭和60年(オ)第122号同63年1月26日第三小法廷判決・民集42巻1号1頁参照)」
 「・・・、原告は、被告が原告を退職して独立開業した後、本訴の提起に至るまでの間、被告が門川町の業務を落札したことを契機に、被告の事業活動を問題視するようになり、・・・本訴の提起も、被告がその事業上実施する工法を原告が問題視して行った一連の行動の一環として行われたものと理解される。」
 「他方、原告と被告との一連のやり取りにおいて、原告は、被告から『特許侵害等の法を犯す工法ではありません』などと反論されたこともあるにもかかわらず、被告の使用する工法等が原告の特許権を侵害するものと考える理由に言及したことはなく、・・・原告は、本訴の提起に先立ち、被告の使用する漏水探査方法やこれに使用する装置に関する調査等を自ら積極的には必ずしも行っていなかったことがうかがわれる。」
 「このような本訴の提起に至る経緯や訴訟の経過等に加え、前記のとおり、被告装置につき本件各発明の技術的範囲に属さないことに照らすと、原告は、本訴で主張する権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものであることにつき、少なくとも通常人であれば容易にそのことを知り得たのに、被告による事業展開を妨げることすなわち営業を妨害することを目的として、敢えて本訴を提起したものと見るのが相当である。そうすると、原告による本訴の提起は、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものと認められるから、被告に対する不法行為を構成する。」と判断して、原告の訴訟提起自体が不法行為に該当するとして、損害金として50万円(弁護士費用20万円、慰謝料30万円)を認容しました。

3 本裁判例から学ぶこと

 訴訟提起行為は、裁判を受ける権利という憲法上の権利に基づくものであるから、原則、訴訟提起自体が違法となることはありません。しかしながら、あらゆる場合に違法とならないものではなく、本判決も一般論を述べているとおり、「当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものである上、提訴者が、そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるとき」には違法となる。
 本件のように、特許権侵害訴訟前に、十分な調査を行わず、訴訟提起後も主張自体失当となるような主張しか行わず、結果、非侵害となるケースでは、訴訟自体が不法行為と判断されることに注意が必要です。
訴訟に至るケースでは、感情的に訴訟提起がされることもありますが、原告側としては、本件のように、訴訟提起自体が違法とされることもありますので、十分な調査に基づいて判断するよう、留意すべきといえます。
                                             以上
※「THE INDEPENDENTS」2022年5月号 P20より
※掲載時点での情報です

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