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知的財産判例に学ぶ企業活動(41)

2021-12-24 公開
弁護士法人 内田・鮫島法律事務所
弁護士/弁理士 高橋 正憲

弁護士法人 内田・鮫島法律事務所
弁護士/弁理士 高橋 正憲 氏

2004年北海道大学大学院工学研究科量子物理工学専攻修了後、(株)日立製作所入社、知的財産権本部配属。2007年弁理士試験合格。2012年北海道大学法科大学院修了。2013年司法試験合格。2015年1月より現職。

【弁護士法人 内田・鮫島法律事務所】
所在地:東京都港区虎ノ門2-10-1 虎ノ門ツインビルディング東館16階
TEL:03-5561-8550(代表)
構成人員:弁護士25名・スタッフ13名
取扱法律分野:知財・技術を中心とする法律事務(契約・訴訟)/破産申立、企業再生などの企業法務/瑕疵担保責任、製造物責任、会社法、労務など、製造業に生起する一般法律業務
http://www.uslf.jp/






知的財産判例に学ぶ企業活動(41)

ネットビジネスにおける広告表示の違法性について(3)

―品質誤認表示の損害賠償―

東京地裁令和3年2月9日判決

平成30年(ワ)第3789号(オリゴ糖事件)


1 事案の特徴

今回のコラムでも、引き続き、ネットビジネスを営む企業の広告表示が違法か否かが争われた事案を紹介します。 この事案は、原告「株式会社北の達人コーポレーション」が、被告「株式会社はぐくみプラス」が行う広告表示について、不正競争防止法2条1項20号及び同項21号を根拠として、表示の差止、損害賠償等の請求を求めた事案です。 この事案では、被告の販売する「はぐくみオリゴ」(被告商品)に含まれるオリゴ糖の成分が53.29%であるのにもかかわらず、被告が「オリゴ糖100%」等と表示した点が、需要者に対し、被告商品の品質について誤認させるような表示(品質誤認表示)であると認定されました。

そして、東京地裁は、この品質誤認表示により認めれる損害賠償について、以下のように判示しました。

2 東京地裁の判断

不正競争防止法5条2項により、被告が上記の期間において本件品質誤認表示により受けた利益の額が原告が受けた損害の額と推定される。」

「以上から、被告が前記期間に被告商品の販売により受けた利益の額は、別紙損害額の限界利益欄記載のとおり、合計6億1192万6912円となる。」

「不正競争防止法5条2項による推定は、侵害者による侵害行為がなかったとしても侵害者が受けた利益を被侵害者が受けたとはいえない事情が認められる場合には、覆滅されると解される。」

「・・・これらを考慮すると、被告の本件品質誤認表示による被告商品の販売数量の増加と、他のオリゴ糖類食品の販売数量の低下、さらには、原告商品の販売数量の低下との間には、それほど強い相関関係が成り立つとはいえず、上記の各事情を総合考慮すれば、被告の本件品質誤認表示がなかったとしても被告が受けた利益を原告が受けたとはいえない事情が相当程度認められ、被告が受けた利益の額の97%について、原告が受けた損害の額であるとの推定が覆滅されるとするのが相当である。以上から、上記推定覆滅後の額は、別紙損害額の推定覆滅後の金額欄記載のとおり、1835万7803円となる。」

3 本判決から学ぶこと

(1)損害額の推定規定
知的財産権侵害があった場合、原告が行うべき損害額の立証は、きわめて困難なものとなります。なぜならば、知的財産権侵害のケースも、不法行為の一般原則に照らして考えると、逸失利益(知的財産侵害行為が無かったら権利者が得られたであろう利益)を損害額とすることになり、これを客観的に立証することになるからです。たとえば、売上が1億円減少した例において、なぜ1億円の減少が生じたかを推測することはできても、立証まで行うことは極めて困難と言えます。

このような立証困難を軽減するために、知的財産法は、損害額の推定規定を準備しています。 たとえば、特許法では、特許侵害者が侵害品を売ったことで得られた利益があった場合、当該利益を損害額と推定する規定を置いています(特許法102条2項、不正競争防止法5条2項も同旨)。ただし、その利益の全てを損害とできない事情がある場合、覆滅事由として、損害賠償額から控除することになります。

(2)本件での適用
本件では、品質誤認表示(不正競争防止法2条1項20号)という不正競争行為が認められる場合に、不正競争防止法5条2項の推定規定の適用があるか、適用される場合どのように適用されるのかが注目されました。
東京地裁は、「不正競争防止法5条2項により、被告が上記の期間において本件品質誤認表示により受けた利益の額が原告が受けた損害の額と推定される。」として、推定規定を適用し、覆滅事由の認定も行い、結果、1835万7803円の損害賠償額を認容しました。

本件のような品質誤認表示の場合にも、損害額の推定規定が適用されることで、原告の行うべき立証活動としては、被告の売上等の資料に基づいて、被告の利益を立証すれば足り、裁判での立証負担は軽減されたものになります。 このような条項を利用することで、知的財産権侵害訴訟を十分に活用できるでしょう。
以上


※「THE INDEPENDENTS」2021年12月号 - P18より
※掲載時点での情報です


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