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知的財産判例に学ぶ企業活動(28)

2020-11-19 公開
弁護士法人 内田・鮫島法律事務所
弁護士/弁理士 高橋 正憲

弁護士法人 内田・鮫島法律事務所
弁護士/弁理士 高橋 正憲 氏

2004年北海道大学大学院工学研究科量子物理工学専攻修了後、(株)日立製作所入社、知的財産権本部配属。2007年弁理士試験合格。2012年北海道大学法科大学院修了。2013年司法試験合格。2015年1月より現職。

【弁護士法人 内田・鮫島法律事務所】
所在地:東京都港区虎ノ門2-10-1 虎ノ門ツインビルディング東館16階
TEL:03-5561-8550(代表)
構成人員:弁護士25名・スタッフ13名
取扱法律分野:知財・技術を中心とする法律事務(契約・訴訟)/破産申立、企業再生などの企業法務/瑕疵担保責任、製造物責任、会社法、労務など、製造業に生起する一般法律業務
http://www.uslf.jp/

知的財産判例に学ぶ企業活動(28)

雇用関係がないままゲーム開発した者の開発成果が職務著作に当たり会社に権利帰属すると判断した事例

東京地裁平成28年2月25日判決(平成25年(ワ)21900号)


1 事案 *1

 本件は、「神獄のヴァルハラゲート」との名称のソーシャルアプリケーションゲーム(以下「本件ゲーム」という。)の開発に関与した原告が、本件ゲームをインターネット上で配信する被告に対し、〈1〉主位的に、原告は本件ゲームの共同著作者の一人であって、同ゲームの著作権を共有するから、同ゲームから発生した収益の少なくとも六割に相当する金員の支払を受ける権利がある旨主張して、(〈2〉予備的請求は省略)、著作権に基づく収益金配分請求権(主位的請求)に基づき、本件ゲームの配信開始から平成二五年七月末日までに被告が本件ゲームにより得た利益の六割相当額とされる一億一二九四万一二六一円等の支払を求める事案です。
 本紙面では、職務著作該当性の争点について紹介します(*1)。

(*1)本件は、他にも争点がありますが、紙面の都合で職務著作該当性の論点に絞って紹介しています。

2 東京地裁の判断

 東京地裁は、職務著作該当性について、「職務著作の成立要件は、〈1〉法人等の発意に基づくこと、〈2〉法人等の業務に従事する者が職務上作成したこと、〈3〉法人等が自己の著作名義の下に公表すること、〈4〉作成時における契約、勤務規則その他に別段の定めがないこととされている。」
「上記〈1〉の要件については、Aは、原告がB社に在籍中から、本件ゲームを新会社等において製作予定であることを告げて、原告に対して本件ゲーム開発への参加を勧誘したこと、原告もAの勧誘があったためにB社を退社して本件ゲーム開発に関与したことを認めていること、その後も被告において本件ゲーム開発が行われ、被告名義で本件ゲームが配信されたこと等からすれば、本件において、実質的には、Aが代表取締役を務める被告の発意に基づいて本件ゲーム開発が行われたものと認められる。」
「〈2〉…の要件については、…原告は、本件ゲーム開発期間中は被告に雇用されておらず、被告の取締役の地位にもなかったが、被告においてタイムカードで勤怠管理をされ、被告のオフィス内で被告の備品を用い、Aの指示に基本的に従って本件ゲーム開発を行い、労務を提供するという実態にあったものである。
 …原被告間において、本件ゲーム開発に関しては当然に報酬の合意があったとみるべきであることに加え、本件ゲーム開発の当初から、原告が被告の取締役等に就任することが予定されており、その取締役としての報酬も本件ゲーム開発に係る報酬の後払い的な性質を含む…と認められることをも併せ考慮すれば、原告は被告の指揮監督下において労務を提供したという実態にあり、被告が原告に対して既に支払った金銭及び今後支払うべき金銭が労務提供の対価であると評価できるので、上記〈2〉の要件を充たすものといえる。」
「さらに、本件ゲームは、被告名義で、インターネット上で配信されたものであるから、上記〈3〉の要件も充たす。」
「このほか、原被告間で、本件ゲームの著作権の帰属に関して特段の合意があったとは認められないから、上記〈4〉の要件も充たす。」
「以上からすれば、本件においては著作権法一五条一項の適用があり、本件ゲームの著作権は被告に帰属するというべきであり、原告が本件ゲームの著作権者であることを前提とする原告の主位的請求は理由がない。」として、本件は「職務著作」に該当するとして、原告の主位的請求を棄却しました。

3 本裁判例から学ぶこと

 本件は雇用関係にない者が作成したゲームの著作権の帰属が争われました。裁判所は、法人と著作物を作成した者との関係を実質的にみたときに、法人の指揮監督下において労務を提供するという実態がどうかを判断しており、従前の裁判例の判断枠組みを踏襲した判断となりました。
 ベンチャー企業では、人材も流動的であり、雇用契約を締結しない者に業務を任せる場面も多く見受けられます。そのような場合の成果物の取扱いについて、本判決は示唆を与えてくれます。いずれにせよ、両者が納得できる形での事前の合意が重要であることは言うまでもありません。


※「THE INDEPENDENTS」2020年11月号 - P16より
※掲載時点での情報です

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