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2020-08-20 公開
特定非営利活動法人インデペンデンツクラブ
代表理事 秦 信行

國學院大學 名誉教授
インデペンデンツクラブ代表理事
秦 信行 氏

早稲田大学政経学部卒業。同大学院修士課程修了(経済学修士)。野村総合研究所にて17年間証券アナリスト、インベストメントバンキング業務等に従事。1991年JAFCOに出向、審査部長、海外審査部長を歴任。1994年國學院大学に移り、現在同大学名誉教授。1999年から約2年間スタンフォード大学客員研究員。日本ベンチャー学会理事であり、日本ベンチャーキャピタル協会設立にも中心的に尽力。2019年7月よりインデペンデンツクラブ代表理事に就任。

SBIR(Small Business Innovation Research=中小企業技術革新制度)について


7月6日(月)のインデペンデンツクラブ月例会において、内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付参事官(イノベーション創出環境担当)付主査の田邉彩乃氏と弁護士法人内田・鮫島法律事務所の代表弁護士である鮫島正洋氏、お二人をパネリストにお招きして、インデペンデンツクラブ代表理事の秦信行がモデレーター役を務める形でパネルディスカッションを行った。

パネルディスカッションのテーマは大きく二つあり、一つは「日本版SBIR(Small-Business-Innovation Research)制度、すなわち中小企業技術革新制度の見直し」についてと、もう一つが「オープンイノベーションに伴うベンチャーと大企業との連携の際のモデル契約書」についてであった。

ここでは、二つのテーマの内の「SBIRについて」を取り上げ、今回のパネルでお話し頂いた田邉氏のプレゼンテーションの要約と、改めて米国のSBIR制度並びに日本版SBIR制度について簡単な概要を書かせて頂いた。

■田邉内閣府主査のプレゼンテーション要約


田邉主査からは「日本版SBIR制度の見直しについて」と題してお話し頂いた。限られた時間であったにもかかわらずパワーポイントの資料を使って簡潔にご説明頂いた。

まず、何故今イノベーション創出においてスタートアップやベンチャーが重要なのかという点について以下のような説明がなされた。

それは、イノベーション創出のプロセスが、従来の大企業を中心とした大規模ナショナルプロジェクトや特定分野への大企業の研究開発投資が誘導する形が中心だったものから、社会課題の多様化や科学技術の細分化・複雑化、更には破壊的イノベーションによるそれまで主流だった技術の駆逐といった現象を通じて、幅広い分野への分散的な研究開発投資の必要性が高まっていること、その結果、スタートアップやベンチャーが、その多様性と機動性の故にイノベ―ション創出の一翼を担う時代になったとされた。

次に、米国ではそうしたイノベーション創出プロセスの変容を認識した上で、1982年にSBIR制度が作られ、それによって創薬開発のGilead Sciencesや通信技術開発及び半導体開発のQualcommなど多数のハイテクベンチャーが輩出していることが紹介された。

続いて「米国SBIR制度の概要」として6つの特徴が説明された。それらは、①11省庁が参加していること、②各省庁の研究開発予算の決められた割合(現在は3.2%)をベンチャーに割り当てることが義務化されていること、③11省庁が統一的なルールによって実施していること、④革新的なアイデア段階から研究開発段階、更には事業化段階まで、支援対象企業が絞られるステージゲート方式の多段階支援であること、⑤支援対象ベンチャーの公募にあたって各省庁で、政策課題や調達ニーズに基づく非常に具体的な「開発目標」が科学行政官(プログラムマネジャー)によって提示されていること、⑥フェーズ3の事業化段階のベンチャーには有力VCやプライムコントラクターなどへの繋ぎや、各省庁が「ファーストカスタマー」となり開発成果の調達が行われること、以上6点にあると説明された。

次に、米国SBIR制度に倣って1999年に作られた日本の中小企業技術革新制度(日本版SBIR制度)に言及され、現行の日本版SBIR制度について簡単に説明された。

内容を要約すると、日本版は1999年から実施されており、今までの約20年間で11.6万社に対して1.5兆円の支援が行われたこと、「中小企業等経営強化法」に基づいてスタートアップ・中小企業等の研究開発を支援する補助金・委託費等を拡大し、研究開発成果の事業化を支援することを目的とした制度であること、より具体的には国等の研究開発を支援する補助金・委託費等のうちスタートアップ・中小企業等が応募できる事業を「特定補助金等」として指定し、閣議決定された「交付の方針」に沿って実施されていること、現在、総務、文科、厚労、農水、経産、国交、環境の7省庁が参画していること、といった点である。

続いての日本版SBIR制度の課題については、日本版はイノベーション創出のためのスタートアップ等の支援となっていないとした上で、①イノベーションの多様性への対応が重要であるにも関わらず、支援金額の内、参加7省の中で経産省予算が90%近くを占めておりバランスに偏りがあること、②支援フェーズにおいても指定事業の支援対象が開発段階(フェーズ2)に偏っており、フェーズ1(F/S、POC段階)からの多段階選抜が行われていないケースが多いほか、支援対象を公募する段階で政策課題などに基づく具体的な課題設定がなされていないケースも多く、フェーズ1から事業化までの連続的な支援が不足していること、③多段階選抜や外部評価といった制度効果向上のための統一ルールが欠如し、課題設定や実用化支援を行うプログラムマネジャー(米国での科学行政官)も不在であること、が指摘された。

最後に「新たな日本版SBIR制度の概要(案)」として今回の見直しの内容が示された。

見直しのポイントは、まず、①イノベーション創出を目的としたSBIR制度の実効性向上のために内閣府を司令塔とし省庁連携を強化すること、②このために根拠法を「中小企業等経営強化法」から「科学技術・イノベーションの創出の活性化法に関する法律(科技イノベ活性化法)」に移管すること、③政策課題の解決に資する革新的な研究開発等の促進のために、国等が課題を設定してスタートアップ等に交付する補助金・委託費等を新たに「指定補助金等」として指定し、その統一的な運用ルールを今後閣議決定する「指定補助金等の交付等に関する指針」によって定めること、など。

こうした見直しによって、従来の「中小企業等経営強化法」の下での日本版SBIR制度における支援策は、従来の「特定補助金等」だけだったものから、新たな「科技イノベ活性化法」の下での日本版SBIR制度においては、内閣府を司令塔とし、今までの「特定補助金等」は、より多様化されバランスの取れた支援を目標とする「特定新技術補助金等」に変更すると同時に、新たに各省を横断して統一的な運用を目指す「指定補助金等」が加えられることになる。そうすることで日本版SBIR制度による支援の拡大とスタートアップを中心としたイノベーション創出に向けた各省統一的な運用が可能となると考えていると話された。

中でも「指定補助金等」の運用については、問題であった各省の政策課題などに基づく具体的な課題提示や段階的選抜をしながらの連続的な支援の実現、更には研究開発成果の政府調達を促進するための随意契約制度の活用などをこれから検討していくとされた。

最後に「新たな日本版SBIR制度の概要(案)」として今回の見直しの内容が示された。

見直しのポイントは、まず、①イノベーション創出を目的としたSBIR制度の実効性向上のために内閣府を司令塔とし省庁連携を強化すること、②このために根拠法を「中小企業等経営強化法」から「科学技術・イノベーションの創出の活性化法に関する法律(科技イノベ活性化法)」に移管すること、③政策課題の解決に資する革新的な研究開発等の促進のために、国等が課題を設定してスタートアップ等に交付する補助金・委託費等を新たに「指定補助金等」として指定し、その統一的な運用ルールを今後閣議決定する「指定補助金等の交付等に関する指針」によって定めること、など。

こうした見直しによって、従来の「中小企業等経営強化法」の下での日本版SBIR制度における支援策は、従来の「特定補助金等」だけだったものから、新たな「科技イノベ活性化法」の下での日本版SBIR制度においては、内閣府を司令塔とし、今までの「特定補助金等」は、より多様化されバランスの取れた支援を目標とする「特定新技術補助金等」に変更すると同時に、新たに各省を横断して統一的な運用を目指す「指定補助金等」が加えられることになる。そうすることで日本版SBIR制度による支援の拡大とスタートアップを中心としたイノベーション創出に向けた各省統一的な運用が可能となると考えていると話された。

中でも「指定補助金等」の運用については、問題であった各省の政策課題などに基づく具体的な課題提示や段階的選抜をしながらの連続的な支援の実現、更には研究開発成果の政府調達を促進するための随意契約制度の活用などをこれから検討していくとされた。

■改めてSBIR制度について


1982年に作られた米国のSBIR制度は、この制度に造詣の深い京都大学の山口栄一教授に言わせると「大学などにいる無名の科学者を起業家に転じさせるために国が設けた『スター誕生』システムである」という。確かに、制度創設から約40年、この制度を梃子にスケールした米国のハイテクベンチャーは上の田邊氏の資料にもある通り数多く、同時にそうしたベンチャーを率いた多くの科学者出身の起業家も大きな名声を得ていることも事実と言える。最近の運用状況については筆者も詳しくはないが、状況が大きく変わってはいないようだ。

1990年代後半、筆者も日本版SBIR制度の設置を目指して設けられた経済産業省の研究会に参加して、米国のSBIR制度が米国のハイテクベンチャー育成にかなりの貢献をしていることを認識し、日本でも是非同様の制度を導入することを検討して頂きたいと思った記憶はある。しかし、その後に出来た日本版SBIR制度が上手く機能していないことについては知ってはいたものの、申し訳ないがその原因ついて詳しい検証は筆者自身しなかった。

今回、日本版SBIR制度の現状と見直しについて田邉氏からのプレゼンテーションをお聞きして、改めて現状の問題点、課題について認識を深めることが出来た。

課題については田邉氏から指摘されていることに加えて、先にご紹介した京都大学の山口氏からは、米国のように各省の外部委託研究予算の一定割合をベンチャーに拠出する形になっていないこと、多段階制度になっていないこと、支援対象者の実績が問われるため既存の中小企業が対象となり若手研究者が外されること、政府調達による市場創出がないこと、米国のような科学行政官がおらず解決すべき課題が具体的に示されていないこと、などが指摘されている(https://www.data-max.co.jp/article/15116参照)。

また、VECが発信しておられる「シリコンバレー通信Vol.12」の「イノベーションの起爆剤としてのSBIR ~米国の国家的シードファンド~」では、日本版SBIRの問題点として、各省が独自の枠組みを適用しており統一性がなく使い勝手が悪いこと、フェーズ毎のマイルストーンが明確でないこと、政府が「最初の買い手」になっていないこと、大学の先端研究が対象となることが少なく一般的な中小企業の補助金的な位置づけになっていること、「補助金」としてのイメージが強く米国のように「シードファンド」というイメージがないこと、が述べられている。

田邉氏がまとめて頂いた課題に含めて以上のような問題点が日本版SBIRにはあるようだ。先に述べたように、筆者は1990年代後半に日本版SBIRの実現に向けて開かれた経産省の研究会に参加させて頂いていた。その時の状況からすると、米国で考えられたSBIRの仕組みについて研究会ではかなり正確な理解がなされていたように思う。それが何故米国のSBIRから見るとかなり変容した形の日本版SBIRになってしまったのか。勿論、それぞれの国情があり、そのまま模倣することは出来ないであろうし、完全な模倣が良いとは言えないとは思う。とはいえ、上記のような日本版SBIRの課題を見ると、SBIR自体の核になるポイントが残念ながら抜けているように見える。何故そうなったのか、そのあたりはかなり政治的な問題になるのかも知れないが知りたいところではある。

いずれにしても今回の見直しによって日本版SBIRが、イノベーション創出、ハイテクベンチャー創出により大きな意味を持つ制度になることを期待したい。

※「THE INDEPENDENTS」2020年8月号 掲載
※冊子掲載時点での情報です

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